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第一章 悪役令嬢は動き出す
26.悪役令嬢はお母様と約束をする
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お母様はフォークを静かに置いて私を真剣な瞳でしばらく見つめた後、ゆっくりと口を開いた。
「まず……」
そして、小さく息を吐いた。私は思わず息を飲む。
「貴女の気持ちはよく分かったわ。でも、婚約者候補から外れる事は無理だと思います」
「……そ、そう……ですか」
「それにクリフト殿下……王家次第にはなると思うけれど、婚約者に選ばれる可能性も当然あると思います」
まぁ、候補から外れないとなれば、可能性は絶対的にあるだろうし……そもそも、王家との婚姻において、近年の歴史傾向からいっても三公爵家か六侯爵家の年が合う子供が常に選ばれてきたのだから、当然といえば当然なのだ。
「でもね。何が起こってもいいように準備する事は無駄では無いと思うの」
お母様はいつものおっとりとした雰囲気とは違う悪戯っぽい雰囲気でそう言った。
何が起こってもいいように準備――例えば断罪されても問題無いようにしておけばいい? もしくは婚約者となっても、婚約解消出来るようにしておくってことかしら?
「考えれる方法は沢山あるわ。最も穏便に済ませる方法だと婚約解消出来るようにしておくかしら。問題は多いけど、簡単な方法は他にいい男を見つけて既成事実を作る――かしら?」
「それは大問題になると思うのですけど……」
「例えばの話よ。外聞は当然よくないでしょうし、旦那様にも迷惑掛けるわね」
「さすがに家に迷惑を掛けることはしたくありません……」
すると、お母様は席を立ち私の側へやって来てソッと頭を撫でる。
「エステリアが優しい子だということはよく分かっているわ。でもね、私には高貴な生まれだからといって政略結婚を強制することなど出来ません。旦那様と一緒になる為に、そういった煩わしいことを全てキャロラインに押し付けて逃げ出したのだもの。ただ、大事なことは周囲に認められるような状況を上手く作り出すことが最も大事なのよ」
お母様は女王キャロラインに後ろめたい思いがあったのか。今でも関係はとても良さそうなことを考えると、上手くやった――と、いうことなのだろう。
かといって、王家が強く望んだ場合、たとえ公爵家といって拒否する事は出来ないと思うのだけど。
「後、方法があるとすれば我が領が独立するか、他国に寝返るか――」
「って、それは問題が多すぎます!」
「ふふふっ、貴女が望めば家族団結で全力で事に当たります。これは母が保証しましょう」
お母様の言いように私は思わず首を傾げてしまう。『とにキラ』では断罪される時に公爵家から、助けられるような事も無かったように記憶している。詳細に関して、実際のところゲームでもノベライズでも語られていないので想像でしかないけど。
実際のエステリアは結構キツイ性格だったのはあるし、現状の私から考えると結構おバカな子の印象があるのよね。うーん、その所為で家族に見捨てられた……って、ことなのかな。
「何か思う事があるのかしら?」
「お母様たちが私の為にそこまでしてくれるのが少し、分からない……と、いうか」
「そんなの当然じゃない。旦那様やアイザック含め男性は少し違うでしょうけど、私はどんなことがあっても貴女の味方でいるわ。だって、私がお腹を痛めて生んだ大事な大事な娘なのだから」
お母様はそう言って優しく微笑んだ。ああっ、お母様! なんだか、優しくされると泣いちゃいそうだ。くっ、私も真剣に全力で断罪回避に邁進せねば!!!
「……で、エステリアはアリエル王女殿下と会いたいと言っていたわよね」
おっと、そうだ。そうだった。忘れてたや。
「はい」
「王家とは関係なくアリエル王女殿下とお友達になりたい。ってことよね?」
「その通りです!」
「……分かりました。絶対に他家の者に言わない約束が出来ますか?」
「はい?」
私は思わずグリンと首を傾げた。ちょっと捻ったかも、痛いかも!
「約束するのであれば、王女殿下と会える方法を教えてあげます」
「えー、あ、はい。約束します」
お母様は優しい微笑み崩さずになんだか、凄いじっとりした視線を私に送ってきます。あ、適当な返事してすいません。だって、だってなんだもん。
「はぁ……まぁ、貴女ならどうとでもしそうですし……では、教えますね」
「はい、お願いします!」
「まず……」
そして、小さく息を吐いた。私は思わず息を飲む。
「貴女の気持ちはよく分かったわ。でも、婚約者候補から外れる事は無理だと思います」
「……そ、そう……ですか」
「それにクリフト殿下……王家次第にはなると思うけれど、婚約者に選ばれる可能性も当然あると思います」
まぁ、候補から外れないとなれば、可能性は絶対的にあるだろうし……そもそも、王家との婚姻において、近年の歴史傾向からいっても三公爵家か六侯爵家の年が合う子供が常に選ばれてきたのだから、当然といえば当然なのだ。
「でもね。何が起こってもいいように準備する事は無駄では無いと思うの」
お母様はいつものおっとりとした雰囲気とは違う悪戯っぽい雰囲気でそう言った。
何が起こってもいいように準備――例えば断罪されても問題無いようにしておけばいい? もしくは婚約者となっても、婚約解消出来るようにしておくってことかしら?
「考えれる方法は沢山あるわ。最も穏便に済ませる方法だと婚約解消出来るようにしておくかしら。問題は多いけど、簡単な方法は他にいい男を見つけて既成事実を作る――かしら?」
「それは大問題になると思うのですけど……」
「例えばの話よ。外聞は当然よくないでしょうし、旦那様にも迷惑掛けるわね」
「さすがに家に迷惑を掛けることはしたくありません……」
すると、お母様は席を立ち私の側へやって来てソッと頭を撫でる。
「エステリアが優しい子だということはよく分かっているわ。でもね、私には高貴な生まれだからといって政略結婚を強制することなど出来ません。旦那様と一緒になる為に、そういった煩わしいことを全てキャロラインに押し付けて逃げ出したのだもの。ただ、大事なことは周囲に認められるような状況を上手く作り出すことが最も大事なのよ」
お母様は女王キャロラインに後ろめたい思いがあったのか。今でも関係はとても良さそうなことを考えると、上手くやった――と、いうことなのだろう。
かといって、王家が強く望んだ場合、たとえ公爵家といって拒否する事は出来ないと思うのだけど。
「後、方法があるとすれば我が領が独立するか、他国に寝返るか――」
「って、それは問題が多すぎます!」
「ふふふっ、貴女が望めば家族団結で全力で事に当たります。これは母が保証しましょう」
お母様の言いように私は思わず首を傾げてしまう。『とにキラ』では断罪される時に公爵家から、助けられるような事も無かったように記憶している。詳細に関して、実際のところゲームでもノベライズでも語られていないので想像でしかないけど。
実際のエステリアは結構キツイ性格だったのはあるし、現状の私から考えると結構おバカな子の印象があるのよね。うーん、その所為で家族に見捨てられた……って、ことなのかな。
「何か思う事があるのかしら?」
「お母様たちが私の為にそこまでしてくれるのが少し、分からない……と、いうか」
「そんなの当然じゃない。旦那様やアイザック含め男性は少し違うでしょうけど、私はどんなことがあっても貴女の味方でいるわ。だって、私がお腹を痛めて生んだ大事な大事な娘なのだから」
お母様はそう言って優しく微笑んだ。ああっ、お母様! なんだか、優しくされると泣いちゃいそうだ。くっ、私も真剣に全力で断罪回避に邁進せねば!!!
「……で、エステリアはアリエル王女殿下と会いたいと言っていたわよね」
おっと、そうだ。そうだった。忘れてたや。
「はい」
「王家とは関係なくアリエル王女殿下とお友達になりたい。ってことよね?」
「その通りです!」
「……分かりました。絶対に他家の者に言わない約束が出来ますか?」
「はい?」
私は思わずグリンと首を傾げた。ちょっと捻ったかも、痛いかも!
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「えー、あ、はい。約束します」
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「はぁ……まぁ、貴女ならどうとでもしそうですし……では、教えますね」
「はい、お願いします!」
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