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第一章 悪役令嬢は動き出す
22.悪役令嬢は悪役令嬢と商売する
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私達は魔道具の効果を止めて落ち着いた雰囲気でお茶を飲み、お茶菓子を口に入れた。
待機していた使用人達のざわついた雰囲気を感じつつも、ソレは無視した。
「エルーサ、例の物を持ってきて」
私の言葉に彼女は静かに、そして、素早く反応し部屋の隅に置いてある箱から例の物が入った小瓶を持ってくる。
「…………」
思わず反応しないようにアンネマリーはソワソワした空気を出しつつ目の前に小瓶がやって来るのを待っている。
「アンネマリー様、こちらが例の物ですわ」
「これは……確かにアレですわね。お味の方はどうなのです?」
「私、コレが完成するまでに2年の歳月が掛かったのです。十分なデキだと断言出来ます」
私の視線を受けてエルーサは小瓶から小皿にスプーンで少量だけ取り、アンネマリー嬢の前にコトリと置く。
「い、いただくわっ」
素早い動きで彼女はマヨネーズを口に運び、スプーンを咥えたままその味を堪能していると言わんばかりの表情で固まる。
「……はぁ、まさにマヨ……」
「喜んで貰えたようでよかったわ」
「こちら、売っていただける。と、いうことで間違いないかしら?」
彼女はしばし目を閉じて冷静になったところで、そう言った。残念ながら、販売はまだしてないわけよ。何事も順序が大切である。
「そちらの小瓶に入れた分は差し上げますわ。でも、まだ販売はしていないので売ることは出来ませんわね」
「……それは残念です。では、商売の話……とは?」
「ふふっ、あせらずとも……です。そちらの小瓶は『冷蔵箱』の方で保管しておきますから、帰りに『冷蔵箱』ごと持ち帰るといいですわ」
「れ、冷蔵……ばこ?」
私はニヤリと笑う。エルーサは他の使用人に視線を送り、30センチ四方の箱をテーブルの上に置いた。
「アンネマリー様は魔術についてはどれくらいの理解がおありでしょう?」
「……マリーでいいわ。普通程度には……その、エステリア様ほどでは……」
「私もリアでよろしくってよ。普通程度ね……じゃぁ、冷蔵の意味はお判りかしら?」
彼女は『冷蔵箱』を開けて首を捻る。何か引っかかりを感じながら、それが何か分からないといった雰囲気だ。しかし、「あれ、もしかして……」と、小さく呟き、再び箱の中を検分して……再度首を捻る。
「リア、私、冷凍は見たことあるけど、冷蔵は初めて見るんだよね」
「ええ、そうね。企業秘密な部分は明かせないけど、私が開発した方法で冷蔵が出来る施設や箱、馬車なんかも作れるのよ。まぁ、かなりの値段にはなってしまうけど……」
「それなら、化粧水とかを冷やして保存するとかも……出来るってことよね?」
私の返事を待つ前に彼女は再度首を捻る。考える時のクセのようだ。普段は所作も気を付けている様子の彼女は普段は思っているよりガサツなのだろう。
「ねぇ、これってハフルスト伯爵令嬢に魔晶石を売ってほしいと言っていた件と関係してるよね?」
アンネマリーは色々な意味で逸材なのかもしれない。と、私は思いつつ「そうよ」と答えると、彼女は満足そうに微笑んだ。
「これって、すごい技術だよね。当然、教えて貰えたりするの?」
「フフフ、マリーは今の化粧品関連のレシピをよこせと言って、くれるのかしら?」
「……だよねー」
「でも、あなたがもし……服飾関連に手を出したい時にミシンとか、そっち系で欲しい魔道具があれば、こちらで開発を担ってもいいわよ。タダではやらないけど」
「ですよねー。電動ミシンならぬ、魔導ミシンか。うん、なんだかいいねぇ」
「細かい契約とかに関しては、またやり取りして決めて行きましょう」
そんなやり取りをしながら、楽しいお茶の時間を過ごしたのだった。
待機していた使用人達のざわついた雰囲気を感じつつも、ソレは無視した。
「エルーサ、例の物を持ってきて」
私の言葉に彼女は静かに、そして、素早く反応し部屋の隅に置いてある箱から例の物が入った小瓶を持ってくる。
「…………」
思わず反応しないようにアンネマリーはソワソワした空気を出しつつ目の前に小瓶がやって来るのを待っている。
「アンネマリー様、こちらが例の物ですわ」
「これは……確かにアレですわね。お味の方はどうなのです?」
「私、コレが完成するまでに2年の歳月が掛かったのです。十分なデキだと断言出来ます」
私の視線を受けてエルーサは小瓶から小皿にスプーンで少量だけ取り、アンネマリー嬢の前にコトリと置く。
「い、いただくわっ」
素早い動きで彼女はマヨネーズを口に運び、スプーンを咥えたままその味を堪能していると言わんばかりの表情で固まる。
「……はぁ、まさにマヨ……」
「喜んで貰えたようでよかったわ」
「こちら、売っていただける。と、いうことで間違いないかしら?」
彼女はしばし目を閉じて冷静になったところで、そう言った。残念ながら、販売はまだしてないわけよ。何事も順序が大切である。
「そちらの小瓶に入れた分は差し上げますわ。でも、まだ販売はしていないので売ることは出来ませんわね」
「……それは残念です。では、商売の話……とは?」
「ふふっ、あせらずとも……です。そちらの小瓶は『冷蔵箱』の方で保管しておきますから、帰りに『冷蔵箱』ごと持ち帰るといいですわ」
「れ、冷蔵……ばこ?」
私はニヤリと笑う。エルーサは他の使用人に視線を送り、30センチ四方の箱をテーブルの上に置いた。
「アンネマリー様は魔術についてはどれくらいの理解がおありでしょう?」
「……マリーでいいわ。普通程度には……その、エステリア様ほどでは……」
「私もリアでよろしくってよ。普通程度ね……じゃぁ、冷蔵の意味はお判りかしら?」
彼女は『冷蔵箱』を開けて首を捻る。何か引っかかりを感じながら、それが何か分からないといった雰囲気だ。しかし、「あれ、もしかして……」と、小さく呟き、再び箱の中を検分して……再度首を捻る。
「リア、私、冷凍は見たことあるけど、冷蔵は初めて見るんだよね」
「ええ、そうね。企業秘密な部分は明かせないけど、私が開発した方法で冷蔵が出来る施設や箱、馬車なんかも作れるのよ。まぁ、かなりの値段にはなってしまうけど……」
「それなら、化粧水とかを冷やして保存するとかも……出来るってことよね?」
私の返事を待つ前に彼女は再度首を捻る。考える時のクセのようだ。普段は所作も気を付けている様子の彼女は普段は思っているよりガサツなのだろう。
「ねぇ、これってハフルスト伯爵令嬢に魔晶石を売ってほしいと言っていた件と関係してるよね?」
アンネマリーは色々な意味で逸材なのかもしれない。と、私は思いつつ「そうよ」と答えると、彼女は満足そうに微笑んだ。
「これって、すごい技術だよね。当然、教えて貰えたりするの?」
「フフフ、マリーは今の化粧品関連のレシピをよこせと言って、くれるのかしら?」
「……だよねー」
「でも、あなたがもし……服飾関連に手を出したい時にミシンとか、そっち系で欲しい魔道具があれば、こちらで開発を担ってもいいわよ。タダではやらないけど」
「ですよねー。電動ミシンならぬ、魔導ミシンか。うん、なんだかいいねぇ」
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