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第一章 悪役令嬢は動き出す
19.悪役令嬢は悪役令嬢とお茶をする
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「本日はご招待頂きまして誠にありがとう存じます」
以前のお茶会の時、同様にとても所作が美しいアンネマリー嬢は本日も艶のあるツインテールを揺らす。ゲームの時は当然だけどもっと髪も長くツーサイドアップの立派なドリル装備だったわ。
「いえ、こちらこそアンネマリー様に色々とお尋ねしたいこともあったので、お手紙頂いて嬉しく思っておりますわ」
「エステリア様にそう言って頂けると私とても嬉しいですわ」
そんな貴族的なやり取りをしつつ、彼女を用意したテーブルまで誘いお互いに席に着く。って、いうかお互いまだ7歳のハズだけど、これは……やっぱりアレなのかしら。
そう思っているとアンネマリー嬢はことりとテーブルに魔道具らしき物を置く。
「こういった場でとても失礼かと思うのですが、防音の魔道具の使用を許可頂きたく……」
私は手を出して彼女を制止する。
「許可は出すけれど、少し待って貰えるかしら?」
私はそう言って、エルーサに視線を送ると既に準備していたワゴンをこちらに持ってくる。
「え、あ……」
「お茶とお菓子くらいは必要でしょ?」
エルーサは手早くテーブルにお茶とお茶菓子の準備を終えて一礼する。
「エルーサ、ありがとう」
「ごゆっくりと、控えておりますので」
「ええ」
そう言って部屋の隅、扉の近くへ彼女は移動する。当然、アンネマリー嬢の側仕えもいる。
「まずはアンネマリー様の防音の魔道具を起動して頂ける?」
「は、はい……」
何か腑に落ちない雰囲気でアンネマリー嬢は魔道具を起動する。見たところ周囲2、3メートルくらいの範囲に防音の魔法膜を張る。
「まだ、アンネマリー様は喋らないで頂けます?」
「え? どういうことですか?」
再び私は手を前に出して彼女を制止する。そして、用意した魔道具を取り出して起動する。
「これでいいわ。どうぞ喋って貰っても大丈夫よ」
「……えっと、まず、何をしたかの説明を頂いてもよろしいでしょうかエステリア様」
目を白黒させるアンネマリー嬢はとても可愛らしい。と、私は思いつつ微笑んでからお茶を一口飲んでから口を開く。
「私の侍女エルーサから面白い話を聞いたので試してみたかったのよね。あ、何の話かというと、防音の魔道具だけではあまり意味が無いということを知ったから」
「え? そうなんですか?」
「ええ、防音の魔道具は音を外に漏らさない魔法防壁を張る魔術というのはご理解してらっしゃる?」
アンネマリー嬢は一瞬首を傾げてからコクリと頷いた。
「魔法防壁に音が触れると少しの揺れが発生するのだけど、その揺れを逆算して音に変換する方法があるのだけど、魔法に長けた使用人や騎士達はこの方法で主たちの秘密の会話を聴いている場合が多くあるそうよ。私の両親なんかはそれを分かって会話をしたりしているようだけど、高位貴族の中でも知る人ぞ知るって話らしいけど」
「だったら……いま、この時も?」
「貴女の使用人がそうだとは言わないけど、私の使用人は常に聴いてないフリをしながらも聴いているかもね?」
と、私がいうと彼女は周囲に視線を動かして俯く。
「冗談よ。さっき起動した魔道具で防音の魔道具の弱点をカバーしたから。ちなみに効果は防音と認識阻害よ」
「防音? 二重に掛けたってこと?」
「そう、実は防音を二重にすれば簡単に解決するのよ」
「でも、認識阻害って……」
「まぁ、それは口の動きから……読唇術の技能を持った人もいるから、視覚認識をずらす仕組みをいれておいたのよ。まぁ、今回は急ごしらえだから、魔道具としての耐久度が低いせいで1時間くらいで多分壊れるから」
「そ、そうなの……」
と、なんだか呆れた風に彼女はそう言って、お茶を口に含んだ。
以前のお茶会の時、同様にとても所作が美しいアンネマリー嬢は本日も艶のあるツインテールを揺らす。ゲームの時は当然だけどもっと髪も長くツーサイドアップの立派なドリル装備だったわ。
「いえ、こちらこそアンネマリー様に色々とお尋ねしたいこともあったので、お手紙頂いて嬉しく思っておりますわ」
「エステリア様にそう言って頂けると私とても嬉しいですわ」
そんな貴族的なやり取りをしつつ、彼女を用意したテーブルまで誘いお互いに席に着く。って、いうかお互いまだ7歳のハズだけど、これは……やっぱりアレなのかしら。
そう思っているとアンネマリー嬢はことりとテーブルに魔道具らしき物を置く。
「こういった場でとても失礼かと思うのですが、防音の魔道具の使用を許可頂きたく……」
私は手を出して彼女を制止する。
「許可は出すけれど、少し待って貰えるかしら?」
私はそう言って、エルーサに視線を送ると既に準備していたワゴンをこちらに持ってくる。
「え、あ……」
「お茶とお菓子くらいは必要でしょ?」
エルーサは手早くテーブルにお茶とお茶菓子の準備を終えて一礼する。
「エルーサ、ありがとう」
「ごゆっくりと、控えておりますので」
「ええ」
そう言って部屋の隅、扉の近くへ彼女は移動する。当然、アンネマリー嬢の側仕えもいる。
「まずはアンネマリー様の防音の魔道具を起動して頂ける?」
「は、はい……」
何か腑に落ちない雰囲気でアンネマリー嬢は魔道具を起動する。見たところ周囲2、3メートルくらいの範囲に防音の魔法膜を張る。
「まだ、アンネマリー様は喋らないで頂けます?」
「え? どういうことですか?」
再び私は手を前に出して彼女を制止する。そして、用意した魔道具を取り出して起動する。
「これでいいわ。どうぞ喋って貰っても大丈夫よ」
「……えっと、まず、何をしたかの説明を頂いてもよろしいでしょうかエステリア様」
目を白黒させるアンネマリー嬢はとても可愛らしい。と、私は思いつつ微笑んでからお茶を一口飲んでから口を開く。
「私の侍女エルーサから面白い話を聞いたので試してみたかったのよね。あ、何の話かというと、防音の魔道具だけではあまり意味が無いということを知ったから」
「え? そうなんですか?」
「ええ、防音の魔道具は音を外に漏らさない魔法防壁を張る魔術というのはご理解してらっしゃる?」
アンネマリー嬢は一瞬首を傾げてからコクリと頷いた。
「魔法防壁に音が触れると少しの揺れが発生するのだけど、その揺れを逆算して音に変換する方法があるのだけど、魔法に長けた使用人や騎士達はこの方法で主たちの秘密の会話を聴いている場合が多くあるそうよ。私の両親なんかはそれを分かって会話をしたりしているようだけど、高位貴族の中でも知る人ぞ知るって話らしいけど」
「だったら……いま、この時も?」
「貴女の使用人がそうだとは言わないけど、私の使用人は常に聴いてないフリをしながらも聴いているかもね?」
と、私がいうと彼女は周囲に視線を動かして俯く。
「冗談よ。さっき起動した魔道具で防音の魔道具の弱点をカバーしたから。ちなみに効果は防音と認識阻害よ」
「防音? 二重に掛けたってこと?」
「そう、実は防音を二重にすれば簡単に解決するのよ」
「でも、認識阻害って……」
「まぁ、それは口の動きから……読唇術の技能を持った人もいるから、視覚認識をずらす仕組みをいれておいたのよ。まぁ、今回は急ごしらえだから、魔道具としての耐久度が低いせいで1時間くらいで多分壊れるから」
「そ、そうなの……」
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