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第一章 悪役令嬢は動き出す
12.悪役令嬢はお茶会の事を知る
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先日のプレゼンも上手く事を運び、冷蔵庫の魔道具が完成し我が家の厨房や家族団欒で使う広間などに設置された。魔道具などの販売は国の宮廷魔術師協会が既得権を持っている為に関係者には一切口外しないようにお触れを出し、場合によれば契約術式を用い契約することで情報漏洩を防ぐこととなった。
残念ながら、マヨネーズの一般販売も足止め状態ではあるけど、回路を単純化し単一魔石で冷凍庫の魔道具作成の権利を宮廷魔術師協会に売る事で国内で冷凍庫の販売が始まった。ちなみに我が家ではいち早く流通に活かした荷台を冷凍庫にした馬車を開発し、冷凍した食肉や鮮魚の輸送に使い始めた。
これによって、国内だけでなく、周辺国にも輸送する事が出来るようになり、エステリス商会は大いに潤った。
そのことはお母様との定例お茶会にて報告した。
「稼ぎすぎも問題よね……」
「そうなのですか?」
「まぁ、領内が潤うのは非常に良いことではあるのですが、当然問題になります。我が家は元々王族とは親類の関係ですから、周囲からは言いにくいとは思いますが、人の妬みつらみというのは恐ろしいモノなのです。特にあなたが10歳となれば学園都市の寮住まいとなります。その時、私達はおりません……」
「わ、私……自身の事ですか? た、確かに……そうですね」
って、そうだ。私自身はどうとでもなるけれど、私の専属侍女であるエルーサも連れて行くことを考えれば彼女の安全も担保しなければいけない。
「先んじてですが、王都に居を移すと旦那様は仰っています」
「王都にですか?」
「ええ、旦那様は現在も王都と領内を行き来していますが、そろそろアイザックに領内の事を任せていこうと考えています」
「アイザックお兄様の為ですか?」
「それもありますが、貴女の為でもあります」
「私……の? ですか?」
お母様はお茶を口に含み、小さく息を吐いてカップを静かに置いた。
「ええ、エステリア。多くの貴族は7歳になれば王都にある小学へ通います」
「はい。エルーサから教えて貰いました。ただし、王族や公爵家……後、必要の無い家では小学へは入らずに家庭教師などに勉強を教わると聞きました」
「そうです。だから、エステリアの教育は昔、王宮でも教えておられた教師をつけました。しかし、本来は領地では無く、王都の屋敷でするべきことなのです」
「そう……なのですか?」
「なぜだか、わかりますか?」
お母様はにこやかな表情を浮かべて訊いてきます。えー、わかんないんだけど。
どういうことだろう? 確かに王都の方が地方都市と比べて発展しているみたいな話を聞いているけど、他領にあって王領に無い? うーん、わからん。
「どうやら分からないみたいね」
「申し訳ありません……」
「落ち込まなくてもいいのよ。逆に子供らしい姿が見れて私は嬉しいもの」
そう言ってお母様は私の頭を優しく撫でた。うーん、テクニシャン……お母様のなでなではホワホワするのがとても不思議なんだよね。
「では、答えあわせよ。王都には公爵3家、侯爵6家、伯爵10家、子爵22家、男爵41家、準男爵と騎士爵含め83家の計165の爵位を持った者達が住まいを持っているわ。当然、社交シーズンや国事などがあれば集まってくるわよね」
「それはそうですよね?」
「多くの貴族令息令嬢が王都にいるということは多くの家と繋がれるチャンスがあるということよね?」
それは確かに……とは思うけど、私の場合は出来るだけ攻略キャラとかと出会いたくないので避けたいというか。
「特に学園へ入るまでの期間に側近や仲間となる者を集めておくのも大事な機会だと貴族の間では一般的に考えられています」
「王族であったお母様もそうだったのですか?」
「いいえ、残念ながら王族にはそういった機会はありません……と、いいますか基本的に決定権のある者が決めてしまいますからね。だいたい決められたままに頷くしかありませんでしたよ。逆に学園に入ってからはしばらく自由ですから、楽しめる間は楽しまないといけませんからね。色々頑張ったおかげで、旦那様と結婚出来たのです」
「頑張る必要があったのですか? 王族だというのに?」
そう言うと、お母様は楽しそうに微笑む。
「王族が政略以外で婚姻を結ぶことなど、基本ありません。元々、私の場合は隣国の王族との婚約の話があったのを上手く躱してお父様を射止めたのよ。認めて頂くにも色々とありましたが、それはまた別の機会で話しましょう。ともかくです、王都に高位貴族が常駐している期間はそれほど多くありません。しかし、子弟が王都にいる場合は別で多くの貴族が夫婦揃って長期間に渡って滞在しています。となれば、多くの貴族が縁を作りたくて動いています。敵対する者同士の場合いざこざの原因ともなりますが、そこは上手く付き合わねばなりません。そういうのも含めて子供達は短い期間で覚えていくのですよ」
「そ、そうなのですね……」
「エステリアがあまり乗り気で無いのも雰囲気から分かっていますが、まずは王都で私の繋がりでお茶会を開きますので、そこでお友達を作りなさい」
お友達……うーん、お友達ねぇ。作れと言われて簡単に作れるモノじゃないと思うけど、確かにお母様の言う通り、友人がいれば色々と世界が広がる可能性もあるわけで……な、なんにしても攻略キャラだけは回避したいなぁ。
私はとりあえず、テンション低めでお母様に「はぁ~い」と返事を返すのであった。
残念ながら、マヨネーズの一般販売も足止め状態ではあるけど、回路を単純化し単一魔石で冷凍庫の魔道具作成の権利を宮廷魔術師協会に売る事で国内で冷凍庫の販売が始まった。ちなみに我が家ではいち早く流通に活かした荷台を冷凍庫にした馬車を開発し、冷凍した食肉や鮮魚の輸送に使い始めた。
これによって、国内だけでなく、周辺国にも輸送する事が出来るようになり、エステリス商会は大いに潤った。
そのことはお母様との定例お茶会にて報告した。
「稼ぎすぎも問題よね……」
「そうなのですか?」
「まぁ、領内が潤うのは非常に良いことではあるのですが、当然問題になります。我が家は元々王族とは親類の関係ですから、周囲からは言いにくいとは思いますが、人の妬みつらみというのは恐ろしいモノなのです。特にあなたが10歳となれば学園都市の寮住まいとなります。その時、私達はおりません……」
「わ、私……自身の事ですか? た、確かに……そうですね」
って、そうだ。私自身はどうとでもなるけれど、私の専属侍女であるエルーサも連れて行くことを考えれば彼女の安全も担保しなければいけない。
「先んじてですが、王都に居を移すと旦那様は仰っています」
「王都にですか?」
「ええ、旦那様は現在も王都と領内を行き来していますが、そろそろアイザックに領内の事を任せていこうと考えています」
「アイザックお兄様の為ですか?」
「それもありますが、貴女の為でもあります」
「私……の? ですか?」
お母様はお茶を口に含み、小さく息を吐いてカップを静かに置いた。
「ええ、エステリア。多くの貴族は7歳になれば王都にある小学へ通います」
「はい。エルーサから教えて貰いました。ただし、王族や公爵家……後、必要の無い家では小学へは入らずに家庭教師などに勉強を教わると聞きました」
「そうです。だから、エステリアの教育は昔、王宮でも教えておられた教師をつけました。しかし、本来は領地では無く、王都の屋敷でするべきことなのです」
「そう……なのですか?」
「なぜだか、わかりますか?」
お母様はにこやかな表情を浮かべて訊いてきます。えー、わかんないんだけど。
どういうことだろう? 確かに王都の方が地方都市と比べて発展しているみたいな話を聞いているけど、他領にあって王領に無い? うーん、わからん。
「どうやら分からないみたいね」
「申し訳ありません……」
「落ち込まなくてもいいのよ。逆に子供らしい姿が見れて私は嬉しいもの」
そう言ってお母様は私の頭を優しく撫でた。うーん、テクニシャン……お母様のなでなではホワホワするのがとても不思議なんだよね。
「では、答えあわせよ。王都には公爵3家、侯爵6家、伯爵10家、子爵22家、男爵41家、準男爵と騎士爵含め83家の計165の爵位を持った者達が住まいを持っているわ。当然、社交シーズンや国事などがあれば集まってくるわよね」
「それはそうですよね?」
「多くの貴族令息令嬢が王都にいるということは多くの家と繋がれるチャンスがあるということよね?」
それは確かに……とは思うけど、私の場合は出来るだけ攻略キャラとかと出会いたくないので避けたいというか。
「特に学園へ入るまでの期間に側近や仲間となる者を集めておくのも大事な機会だと貴族の間では一般的に考えられています」
「王族であったお母様もそうだったのですか?」
「いいえ、残念ながら王族にはそういった機会はありません……と、いいますか基本的に決定権のある者が決めてしまいますからね。だいたい決められたままに頷くしかありませんでしたよ。逆に学園に入ってからはしばらく自由ですから、楽しめる間は楽しまないといけませんからね。色々頑張ったおかげで、旦那様と結婚出来たのです」
「頑張る必要があったのですか? 王族だというのに?」
そう言うと、お母様は楽しそうに微笑む。
「王族が政略以外で婚姻を結ぶことなど、基本ありません。元々、私の場合は隣国の王族との婚約の話があったのを上手く躱してお父様を射止めたのよ。認めて頂くにも色々とありましたが、それはまた別の機会で話しましょう。ともかくです、王都に高位貴族が常駐している期間はそれほど多くありません。しかし、子弟が王都にいる場合は別で多くの貴族が夫婦揃って長期間に渡って滞在しています。となれば、多くの貴族が縁を作りたくて動いています。敵対する者同士の場合いざこざの原因ともなりますが、そこは上手く付き合わねばなりません。そういうのも含めて子供達は短い期間で覚えていくのですよ」
「そ、そうなのですね……」
「エステリアがあまり乗り気で無いのも雰囲気から分かっていますが、まずは王都で私の繋がりでお茶会を開きますので、そこでお友達を作りなさい」
お友達……うーん、お友達ねぇ。作れと言われて簡単に作れるモノじゃないと思うけど、確かにお母様の言う通り、友人がいれば色々と世界が広がる可能性もあるわけで……な、なんにしても攻略キャラだけは回避したいなぁ。
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