楽園よ俺の腕に眠れ〜金の灼熱と終末の王〜

楢川えりか

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第2話 炎の子

3-4

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 だいぶ涼しくなっている。夕方になっているのだろうか。
 俺が横に目をやると、イラスも目を覚ましたところだった。
「イラス……」
 俺は思わず彼に声をかける。彼の瞳が少し潤んでいる気がして、俺は彼の手をとった。
「灰簾、ごめん」
 俺と目が合うと、彼は慌てて俺の手を振り払った。そのまま立ち上がって、その場を離れようとする。
 動揺しているようだ。
 それを見て、俺は確信した。イラスも俺と同じ夢を見ている。違う。俺が、イラスと同じ夢を見ていて、それは彼が体験した記憶だ。
「ごめん、ちょっとひとりにして」
 そう言って駆け出したイラスを、追っていいものか俺は迷う。彼はこの砂漠のことも俺より知っているだろうし、ひとりになりたいというなら静かに待った方がいいかもしれない。だって、自分がみんなから生贄にされてたなんて、そんなことを知ったら、つらい。
「おっと」
 聞き慣れた声がして、俺は思わずそちらを見た。駆け出したイラスが、誰かにぶつかったのだ。
 イラスがぶつかった相手。昨日から傷が増えた、琥珀だった。
「琥珀!」
「よ」
 軽く手を振った彼に、俺はほっとして泣きそうだった。よかった。俺の仲間が、俺のところに帰ってきた。
「無事でよかったです」
「すぐ追いつくって言っただろ?」
 俺は微笑んだ彼に抱きつこうとそばに駆け寄った。しかし、琥珀の腕の中にはイラスがいた。その上から飛びつくわけにもいかず、俺は琥珀を見つめる。
「イラス、どうした?」
 琥珀は腕の中のイラスに聞いた。イラスの目元が涙で濡れているのに気づいたらしい。
「エトナさま」
 イラスはすすりあげながら、思いつめた表情で琥珀を見ている。
「大丈夫か?」
「エトナさま。お疲れのところ申し訳ないのですが、少しだけ、お話していただいてもいいですか?」
 琥珀は驚いたように彼を見て、彼に微笑んだ。
「わかった。大丈夫だよ」
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