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やっとわかった真相

裸の写真 2

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妻「全部は見せられないけど、これ全裸だよ」

ラブホテルの一室だろうか、背後には立派な大型テレビ、そしてその隣には大人のおもちゃの自販機が見える。

私「はぁ?」

妻「大事な部分も丸見えだよ、こんなポーズとらされたんだね。可愛そうに」

私「とらされた?誰に?」

妻「そっちの工場の担当だってさ」

私「!!!」

Mが話し始めた。
「最初は、私がリーダー就任直後に色々悩んでて凄く親身に尽力してくれたんです」

私「いい事じゃない」

M「私も凄く頼りにしてました。でもある日、話があると言って飲み屋さんに呼び出されたんです、そこで酔わされて...気が付いたらホテルで裸になってて.....」

私「それでこの写真撮られた訳だ」

M「写真だけじゃなく、デジカメで動画も撮影したと見せられて.....」

私「.....」

M「それをネタに脅される様になりました。俺の命令に逆らったらネットにばらまく。そうなったらお前の人生終わりだなって」

私「俺に対しての異常な干渉も担当の指示か?」

M「はい、あの人は現場の人材で都合のいい人材がいたらどんな手を使ってでも自分の兵隊に取り込み、そしてコキ使う、そんな人でした。だから今回もKさんに目を付けて.....」

私「俺に近づいた訳だ」

M「はい」

私「話を聞いた上でひとつ聞いていい?」

M「はい」

私「その話、どこまでが本当でどこからが嘘だ?」

妻「ちょっと!いくら何でも言い過ぎでしょ!」

M「わかりました。じゃあ、これで全て本当だと信じてもらえますか?」
と、言うと妻から携帯を引ったくり、問題の写真を隠さず全て私の眼前にさらけ出した。
妻が言ってたように、如何わしい雑誌のモデルがとる様なポーズをとらされているMさん。
文字どおり何も身に付けておらず、恥ずかしい部分も丸見えだった。

M「これでも信用して頂けませんか?」
充血した真っ赤な両目から涙を流しながら彼女は私の目を見て訴えてきた。

私「事の内容はわかったし、私への干渉の理由もわかりました」

妻「まだ話は終わってないよ」

私「いや、どういう形であれ、俺が聞きたい話の内容は聞けたからもう終わりにしてもいいんだけど」

M「続きを聞いてくれませんか」

私「ま、聞くだけなら。まだ頼んだアイスコーヒー来てないし」

M「ありがとうございます」

このタイミングでアイスコーヒーが運ばれてきた。
「ごゆっくり」
なぜかバイトの女学生に睨まれた気がした。


M「私は担当の命令でKさんに近づきました。もちろん担当の従順な兵隊としてです。言うこと聞かなかったら、肉体的な誘惑をしてでもKをものにしろと言われてたんです」

妻「肉体的な....」

M「過去に数人そのやり方で誘惑してきました。でもKさんの頑なな態度を見て、これは無理だと判断しました。そしてそれを担当に報告したらどんな手を使ってでもものにしろ!写真ばらまかれたいのか!と言われ、仕方なくKさんに接触できるタイミングを窺ってました」

私「正直に答えろ、昨日の朝も俺に接触する算段をしてたよな?」

M「はい、土日休みだからチャンスだと言われて」

私「じゃあ昨日の朝に担当から事務所に来いと言われてた連絡も知ってた訳だ」

M「はい、Kさんには別に急ぎでない用件で事務所に呼び出すから偶然を装える様に近くのコンビニにでもいろ、と言われました」

私「.......」

少しの間、考えを巡らす。

私「でも、もう俺は派遣を移籍するから」

M「え?辞めるんですか?」

私「えぇ」

妻「それじゃMさんずっとこのままじゃん」

私「あ?自業自得じゃないの?」

妻「なんでそういう言い方しかできないの?」

私「じゃあ何か?彼女を救ってやれとでも?」

妻「こんな写真まで撮られて脅されて...可哀想とは思わないの?」

私「別に」

妻「いつからそんなに冷たい人になっちゃったの!」
立ち上がり、激昂して私を責める妻。

私「だってそんな義理ないだろ?」


バシッ!

余程我慢できなかったのだろう、私の頬を平手打ちした妻。

私「ひっぱたこうが何をしようが俺の気持ちは変わらない」


妻が泣き出した。


私「Mさんに義理はないけど、昨日の居酒屋で絡まれた件があるし、移籍する前に担当に一発食らわさなきゃ俺の気が収まらないな」

妻「何か考えがあるの?」

私「なかったらこんな事言わないよ。ついでに裸の写真と動画を回収できればいいんだろ?」

M「ありがとうございます!」

私「勘違いするな、あくまでついでだ」

妻「どうすればいいの?」

私「その前にMさん」

M「はい?」

私「今すぐここで全裸になれ、できるか!」

妻「何言ってるの!こんな店の中で!」

私「じゃあ店の外にするか?」

M「いや、こんなところじゃ....」

私「じゃあ、ホテルならいいのか?」

妻「いい加減にして!」


バァン!
私は我慢できずに思い切りテーブルを叩いた。

空のグラスが跳ね上がる。


私「いい加減にして、じゃねぇよ!おい!お前ら二人!揃いも揃って考え甘くねぇか?」

妻「何が甘いのよ」

私「考えてみろ!Mさん!あんたの将来とか今後得られるであろう幸せがここに懸かってるんじゃねえのか!それを頭ひとつ下げただけで[はい、後はよろしく]か!御大層な身分だな!おい!」

妻「......」

私「世の中そんなに簡単に事が運んだら楽で仕方ねぇな!でもよぉ、そんなに簡単じゃねぇから今現在トラブって困ってんじゃねえのか?」

M「それはそうですけど....」

私「全裸になれ!ってのはそれくらいの根性見せてみろ!って事!そんな根性すらなくて今抱えてる問題がクリアできるのかよ?できるならお前らだけでやってみろよ!ほら!」


....考えてもみろよ。

今困ってるのは誰だ?
毎日をビクビクしながら過ごしてるのは誰だ?
そのせいで明日に希望を持てない日々を過ごしてるのは誰だ?

誰だ?

誰なんだよ?

....そうだろ?

ほんとはわかってるんだろ?

ただどうしたらいいかわかんないんだろ?

それだけなんだろ?


M「わかりました、私も明日を勝ち取る為に根性決めました」

妻「別に裸にならなくてもいいんだよ?」

私「本当に根性決めたんだな?」

M「はい!」

私「わかった。それならこれからは俺の指示に従ってもらうよ」

妻「指示って....」

私「お前もだ、気は進まないが助けてやると言ってるんだ。文句はねぇよな?」

妻「それなら」

私「じゃあ決まりだ。Mさん、携帯番号交換してくれ、後は電話で指示する」

M「わかりました」

私「それじゃ」

喫茶店を後にする。
まっすぐ同期が住んでいるアパートへ向かう。

妻「ちょっと待って!早いよ!」

私「あ、悪いけど帰ってていいよ」

妻「え?嘘でしょ?どこ行くの?」

私「さっそく準備だよ」

妻「準備?」

私「そ!準備、ちょっと帰りは遅くなるよ」

妻「まさかMさんの裸を....」

私「アホか、そんな時間ねぇよ」

携帯を取りだし、Jに連絡する。

私「あ、J?今から飯食いに行かない?ちょっと話があるんだ。うん、じゃあ定食屋で」

妻「付いていっていい?」

私「まだ疑ってるのか?じゃあいいよ、来ればいいじゃん」


定食屋の前でJと合流した。

J「どうしたの?」

私「は?」

J「いや、左のほっぺた...腫れてない?」

...さっきの平手打ちだ。

私「いや、気のせいでしょ」

J「だったらいいけど」

私「腹も減ったし、入ろうよ」

J「Kの奢りだろ」

私「え?まぁいいか。いいよ」


年季ものの暖簾をくぐり、店内に入った。
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