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第三部
第43話 地下3階 貪欲な者
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翌日も『我々の中に裏切り者ガイル』の五人は、『タルタロスの口』へ向かう前に、冒険者ギルドに立ち寄った。
「地下三階のクエって、盗賊とかの人型の魔物を討伐するみたい」
「人型か、あまり人に近いとやりにくいんだよな……」
「そうね、無駄に断末魔がリアルだったりするからね……」
「私は別に平気ですけど?」
「我らに敵意を向けてくれれば、斬るのに躊躇いは無いな」
そう話しながら歩いていると、クロウの足元に何か小さい物が落ちた。
「クロさん、何か落としましたよ」
リノはそれを拾い上げ、クロウに渡す。何かの金属片のようだ。
「あっ、ごめん、何だろうこれ?」
そう言って彼は身に着けている装備を調べた。
「これ、剣の柄の飾りだ……」
「大丈夫なのか? その剣」
「まだ使ってないけど、カッコいいからな~」
「名前が『定価三〇〇円』でしょ? すぐ折れるんじゃないかしら?」
「どうだろな? 一応予備に初期装備の剣も持ってきたけど」
「何でそんな名前なのよ……」
「俺に言われても困る。使い勝手が良かったら名前変えるか……」
そんな事を話しつつ、彼らはダンジョンに向かう。
――地下三階。
地下三階は洞窟になっていた。
自然にできた鍾乳洞のような物ではなく、誰かが掘った坑道のような雰囲気だ。
この階には盗賊などの人型の魔物が出るらしいが、どうだろうか。
一行は道なりに進んで行く。進む道はいつもの通り、クロウの直感頼みである。
道の折れた場所に差しかかると、向こうから盗賊型の魔物達が二匹現れた。
出会い頭であったが、一行はその盗賊達をすぐ斬り捨てた。
「…………」
クロウは昨日拾った剣、『定価三〇〇円』を見て考えていた。
「どうした、クロ? その剣どうだった?」
エリーが彼に声をかけた。
「この剣、普通すぎる……」
「普通ってなによ?」
「初期装備の剣とほとんど変わらん……」
「ハズレなんじゃないの?」
「いや、1ポイント位攻撃力が上がった気がする……」
「1ポイントの加減が分からんって」
「とりあえず、まだ使ってみるよ」
クロウはそう言って、その剣を鞘に収める。
すると、再び剣から何か落ちたようだ。
「……」
彼は無言でそれを拾い上げ、先へ進んだ。
そこの道の先を進んで行くと扉があった。
エリーがその扉を調べて聞き耳を立てる。
「中に何人かいるね、多分盗賊だろうけど」
と、皆に注意するように言い、扉を開ける。
中にいたのは盗賊三人と戦士二人だった。
その盗賊の中に弓を持つ者がいたが、その五人も一行はあっさり倒してしまう。
キャラクターが弱くなっても、プレイヤーの経験は健在のようだ。
「弓持ってるのもいるのか」
「そりゃいるだろうね」
「後衛が狙われたら面倒だわね」
「でも、私も銃を持ってますし」
「弓を持つ者を先に倒した方が良さそうだな」
そう言って彼らは、奥の扉を開けて、さらに先に進んで行く。
魔物達を倒しながら先へ進むと、そこは分岐路になっていた。
エリーがクロウに聞こうとすると、右手の通路から誰かがこちらに来ている。
冒険者、ドワーフ、女性の三人のようだ。魔物ではないらしい。
前の二人は知っている、ウィグラフとドルフだ。
奥の髪の長い女性は誰だろうか。
「よお、また会ったな」
「久しぶりじゃの」
ウィグラフ達は一行にそう挨拶する。
「おっさんと爺さん! それに後ろの方は?」
その魔法使い風の女性はこちらにお辞儀した。
「何だ、もう忘れたのか、ソフィアちゃんだよ」
「えっ? ソフィっち僧侶辞めたの?」
「いえ、今は『賢者』なのです……」
「賢者!?」
「それで服装が変わってたのね」
「ああ、ソフィアちゃんの爆発は結局バグだったらしくてさ、図書館で調べ物してたら、賢者の資格が手に入ったらしい」
「それは凄いですね……」
「なんでも賢者になる条件はかなり厳しいんだけど、その条件をソフィアちゃんは満たしたようなんだ」
「はい、そうなのです。皆さんにはお世話になりました……」
そう言ってソフィアは再度お辞儀する。
「良かったではないか、これでソフィア殿も思う存分に回復魔法が使えるのだし」
「おっさん、このダンジョンでも魔物食べてるの?」
「いや、それ目的なんだけどさ、まだ人型しか見てなくて食べられてないんだよな」
「ダンジョンで魔物を食べてたら、別の漫画になりそうだわ……」
「おお、それだよ、俺もその漫画のファンでさ。その漫画見てから魔物の肉食べたくなったんだよな」
「パクリですね……」
「そう言うなよ、ホントにおいしい物もたまにあるんだって」
「たまに、か……」
「話変わるけど、二階のボス、強くなかったか? 十二匹同時に倒さないとダメって。お前らはどうやってやったんだ?」
「そうだったの? あたしらの時はグレイス達が倒しちゃったからね……」
「そっか~、やっぱりここのボスを倒すにはそれなりに戦力が必要みたいだな」
「そうなの?」
「どうもこのダンジョンは難易度が高いらしい。一階で上級悪魔が出るって話も聞くしな」
「それはウチらも見たというか、手なずけたというか……」
「お前ら……、どこのバケモンだよ……」
「彼は激辛せんべいが好物だったみたいです。それに子供のようでした」
「へぇ~、観察力も凄いな。さすが二回も勝利者になっただけはある」
「いやただの偶然……」
「ともかくだ、この階でボスを見たら、要注意だな」
「でもまだあたし達もこの階のボス見つけてないんだよね」
「まあな、戦うなら準備しっかり整えた方がいいって事よ」
ウィグラフはそう言って別れの挨拶をした。
「おお、そうじゃ。前回お主らに世話になったからの、儂からの贈り物じゃ、これを持って行け」
ドルフはそう言って、剣と小さな包みをクロウに渡した。
「爺さん、これは?」
「試しに作ってみた水属性の剣と、武器に火属性を付与する道具じゃ。どちらも微妙な物じゃが、お主らなら使えるかもしれん」
「それは助かるけど、爺さん、また変な物じゃないでしょうね? あの短剣、酷い目にあったんだけど?」
「武器は使い手次第じゃよ」
「そんなもっともらしい事言って……」
「まあな。とりあえず、お主らの健闘を祈る。じゃあの」
ドルフもそう言って、ソフィアと共に別れの挨拶をし、ウィグラフを追って行った。
「火属性を付与するのか、ヒナ、付けてみる?」
そう言ってクロウはヒナに小さい包みを渡した。
「ふむ、そうだな、試しに付けてみるか」
ヒナはそう言って、小さい包みを開けると、中には炎の形の飾りがあった。
それを自身の『小烏丸』に装着してみる。
「これは……、弱いが確かに火属性になったな……」
スクリーンを開き、武器の性能を確認したヒナはそう呟く。
「あら、あの爺さん、たまにはマシな物作るじゃないの」
「クロ、その剣はどう?」
「今見てみるよ」
クロウはそう言って、ドルフに貰った剣を鞘から抜いた。
その剣は鞘から抜くと、濡れた紙のようにグニャリと垂れてしまった。
「なんだこれ……、ん? メモが貼ってある」
〝この剣は水属性の剣を作ろうとして失敗したものじゃ。名前を『フニャチン』という。大切に使え。―ドルフ―〟
と書いてあった。
「あのジジイ……!」
クロウは怒りに手を震わせ、『フニャチン』を道に投げ捨て、先へ進む事にした。
左の道を進み、角を曲がった先には扉があり、その扉は少し隙間が空いていた。
エリーが覗き込むと、弓を持った盗賊が六人、中にいるようだ。
「全員弓のやつみたいだけど、どうする?」
「ウチにアイディアがあるわよ」
「大丈夫かな……?」
「召喚! ミニゴーレム・チョースケ!」
唇の厚いミニゴーレムが現れた。〝オイッス!〟
「召喚! ミニゴーレム・コージ!」
黒縁メガネの体操選手のようなミニゴーレムが現れた。
「召喚! ミニゴーレム・ブー!」
太ったミニゴーレムがウクレレを弾いている。
「召喚! ミニゴーレム・チャ!」
ハゲヅラ丸メガネにチョビヒゲのミニゴーレムが酔っぱらっている。
「召喚! ミニゴーレム・チュウ!」
おっさんが何かの機材を持ちながら逆ギレしている。〝ナンダバカヤロウ!〟
「……フェイ、最後の人が違うんだけど?」
「元メンバーよ、友情出演だわ」
「あたしは知らないけどさ、それにこの機材は?」
「カラオケ機器よ、カラオケボックスの入り口に入らなかったらしいわ」
「ネタが古すぎて分からないよ~」
「大丈夫よ、さあ、扉を開けましょう」
そう言ってフェイさっとは扉を開けてしまう。
中にいた六人の弓盗賊は、こちらに気づくと案の定弓を撃ってきた。
一行はその矢をカラオケ機器に隠れて凌ぐ。
「矢が次々飛んで来るって!」
「顔すら出せないよ!」
リノは隙を見て銃を撃つも、敵の攻撃が厳しく当たらないようだ。
「フェイ、魔法は使わないのか?」
「待ってて、今からカラオケ機材ごと移動するから」
フェイがそう言うと、五匹のミニゴーレムがカラオケ機材を押しながら敵に近づく。
もちろん彼らもそれに続き、距離が縮んでから飛び出し、一気に盗賊達を斬った。
「フフフ、どう? ウチの頭脳プレイは」
「ネタが古すぎてリアクションに困るんだよ!」
さすがのエリーも、知らないネタだとツッコミづらいようだ。
こうして弓の盗賊達を倒した彼らは、さらに先へと進む。
一行がさらに進んで行くと、そこには地下二階と同じ青銅の扉があった。
エリーが罠の有無を調べた後、五人で一斉にその扉を押して、開く。
その扉の先にいたのは、三つの頭を持つ、大型の狼だった。
「こいつは……、強そうだな……」
「ボスみたいだね……」
「調べてみるわ。健康分析! 彼の名は『ケルベロス』ね。お腹が空いているらしいわ」
「頭が三つありますからね……」
「食べ物で手懐けられないかな?」
「やってみるか……」
五人はもしもの時に備えて、それぞれおやつを持っていたのである。
「それ!」「ほいっ!」「はい!」
クロウ、フェイ、リノが三人同時におやつを投げた。
「三人同時に投げなくても……」
「タイミングが被っちゃったわね」
するとケルベロスの三つの頭が、足元に投げられたおやつを食べ始めた。
「何やったの?」
「草餅」
「カステラ」
「チョコレートです」
「チョコはマズくない? あれ犬っぽいし」
「そうなのですか!?」
「うむ、犬にチョコを食べさせると、最悪死んでしまうな……」
「どうしましょう……」
「うん、まあ、敵だけどね……」
そう話しているうちに、ケルベロスはおやつを食べてしまった。
ケルベロスの右の頭、草餅を食べた頭は、餅が喉につかえたらしく苦しみだした。
「ああっ! ちぎってあげればよかった……」
「敵なんだよね……」
ケルベロスの左の頭、チョコを食べた頭は、口から泡を吹きぐったりしてしまう。
「ごめんなさい……」
「だから敵なんだってば……」
ケルベロスの中央の頭、カステラを食べた頭は、大喜びでもっと欲しそうに舌を出して目を輝かせていた。
「よし!」
フェイはガッツポーズを取った。
「いやもう……、なんか違う遊びになってるし……」
だが三つの頭のうち、両脇の頭が深刻なダメージを受けたようだ。
そのことに気づいた中央の頭は、怒ってこちらに襲いかかって来た。
「やっぱりこうなるよね……」
「二つ頭を潰しただけでも上出来だ!」
こうして五人はケルベロスとの戦いになった。
ケルベロスは三つの頭を持ち、それぞれの口から炎を吐く恐ろしい魔物だ。
だが、一行の手によって二つの頭が潰されてしまい、その強さは半減してしまった。
彼は中央の口から炎を吹きかけるも、
「氷柱障壁!」
と、フェイの魔法によって防がれてしまう。
そして、クロウ、ヒナ、エリーの三連続攻撃で彼に傷を与える。
「氷結飛槍!」
フェイの魔法で彼の足が止まってしまうと、再び三人の連続攻撃を受け、悲鳴を上げながらケルベロスは倒れた。
この時、五人の腕輪が光を放ち、この階層をクリアした事が証明される。
彼らの手によって倒されたケルベロスは、その死体が消えると何かを残した。
「何だ、これ?」
クロウがそれを拾い上げると、それは鈍色に光る『金属製の右腕』だった。
「腕……」
「クロ、それ何?」
「金属の腕みたいだ」
「何かしら? 義手?」
「何でしょうね……?」
「見た事の無い金属だな……」
「後で使い道あるかもしれないし、持って帰って倉庫に置いておくよ」
クロウはそう言って、その腕を持ち帰る事にした。
一行はその後、ゴンドラに乗り、街へ戻った。
冒険者ギルドでクエストを報告して報酬を受け取った後、拠点へ帰る。
クロウは拾った『金属製の右腕』を倉庫に入れ、カギをかけて保管した。
その後、五人はそれぞれ次の冒険に向けて準備をして、今日は休む事にしたのだ。
「地下三階のクエって、盗賊とかの人型の魔物を討伐するみたい」
「人型か、あまり人に近いとやりにくいんだよな……」
「そうね、無駄に断末魔がリアルだったりするからね……」
「私は別に平気ですけど?」
「我らに敵意を向けてくれれば、斬るのに躊躇いは無いな」
そう話しながら歩いていると、クロウの足元に何か小さい物が落ちた。
「クロさん、何か落としましたよ」
リノはそれを拾い上げ、クロウに渡す。何かの金属片のようだ。
「あっ、ごめん、何だろうこれ?」
そう言って彼は身に着けている装備を調べた。
「これ、剣の柄の飾りだ……」
「大丈夫なのか? その剣」
「まだ使ってないけど、カッコいいからな~」
「名前が『定価三〇〇円』でしょ? すぐ折れるんじゃないかしら?」
「どうだろな? 一応予備に初期装備の剣も持ってきたけど」
「何でそんな名前なのよ……」
「俺に言われても困る。使い勝手が良かったら名前変えるか……」
そんな事を話しつつ、彼らはダンジョンに向かう。
――地下三階。
地下三階は洞窟になっていた。
自然にできた鍾乳洞のような物ではなく、誰かが掘った坑道のような雰囲気だ。
この階には盗賊などの人型の魔物が出るらしいが、どうだろうか。
一行は道なりに進んで行く。進む道はいつもの通り、クロウの直感頼みである。
道の折れた場所に差しかかると、向こうから盗賊型の魔物達が二匹現れた。
出会い頭であったが、一行はその盗賊達をすぐ斬り捨てた。
「…………」
クロウは昨日拾った剣、『定価三〇〇円』を見て考えていた。
「どうした、クロ? その剣どうだった?」
エリーが彼に声をかけた。
「この剣、普通すぎる……」
「普通ってなによ?」
「初期装備の剣とほとんど変わらん……」
「ハズレなんじゃないの?」
「いや、1ポイント位攻撃力が上がった気がする……」
「1ポイントの加減が分からんって」
「とりあえず、まだ使ってみるよ」
クロウはそう言って、その剣を鞘に収める。
すると、再び剣から何か落ちたようだ。
「……」
彼は無言でそれを拾い上げ、先へ進んだ。
そこの道の先を進んで行くと扉があった。
エリーがその扉を調べて聞き耳を立てる。
「中に何人かいるね、多分盗賊だろうけど」
と、皆に注意するように言い、扉を開ける。
中にいたのは盗賊三人と戦士二人だった。
その盗賊の中に弓を持つ者がいたが、その五人も一行はあっさり倒してしまう。
キャラクターが弱くなっても、プレイヤーの経験は健在のようだ。
「弓持ってるのもいるのか」
「そりゃいるだろうね」
「後衛が狙われたら面倒だわね」
「でも、私も銃を持ってますし」
「弓を持つ者を先に倒した方が良さそうだな」
そう言って彼らは、奥の扉を開けて、さらに先に進んで行く。
魔物達を倒しながら先へ進むと、そこは分岐路になっていた。
エリーがクロウに聞こうとすると、右手の通路から誰かがこちらに来ている。
冒険者、ドワーフ、女性の三人のようだ。魔物ではないらしい。
前の二人は知っている、ウィグラフとドルフだ。
奥の髪の長い女性は誰だろうか。
「よお、また会ったな」
「久しぶりじゃの」
ウィグラフ達は一行にそう挨拶する。
「おっさんと爺さん! それに後ろの方は?」
その魔法使い風の女性はこちらにお辞儀した。
「何だ、もう忘れたのか、ソフィアちゃんだよ」
「えっ? ソフィっち僧侶辞めたの?」
「いえ、今は『賢者』なのです……」
「賢者!?」
「それで服装が変わってたのね」
「ああ、ソフィアちゃんの爆発は結局バグだったらしくてさ、図書館で調べ物してたら、賢者の資格が手に入ったらしい」
「それは凄いですね……」
「なんでも賢者になる条件はかなり厳しいんだけど、その条件をソフィアちゃんは満たしたようなんだ」
「はい、そうなのです。皆さんにはお世話になりました……」
そう言ってソフィアは再度お辞儀する。
「良かったではないか、これでソフィア殿も思う存分に回復魔法が使えるのだし」
「おっさん、このダンジョンでも魔物食べてるの?」
「いや、それ目的なんだけどさ、まだ人型しか見てなくて食べられてないんだよな」
「ダンジョンで魔物を食べてたら、別の漫画になりそうだわ……」
「おお、それだよ、俺もその漫画のファンでさ。その漫画見てから魔物の肉食べたくなったんだよな」
「パクリですね……」
「そう言うなよ、ホントにおいしい物もたまにあるんだって」
「たまに、か……」
「話変わるけど、二階のボス、強くなかったか? 十二匹同時に倒さないとダメって。お前らはどうやってやったんだ?」
「そうだったの? あたしらの時はグレイス達が倒しちゃったからね……」
「そっか~、やっぱりここのボスを倒すにはそれなりに戦力が必要みたいだな」
「そうなの?」
「どうもこのダンジョンは難易度が高いらしい。一階で上級悪魔が出るって話も聞くしな」
「それはウチらも見たというか、手なずけたというか……」
「お前ら……、どこのバケモンだよ……」
「彼は激辛せんべいが好物だったみたいです。それに子供のようでした」
「へぇ~、観察力も凄いな。さすが二回も勝利者になっただけはある」
「いやただの偶然……」
「ともかくだ、この階でボスを見たら、要注意だな」
「でもまだあたし達もこの階のボス見つけてないんだよね」
「まあな、戦うなら準備しっかり整えた方がいいって事よ」
ウィグラフはそう言って別れの挨拶をした。
「おお、そうじゃ。前回お主らに世話になったからの、儂からの贈り物じゃ、これを持って行け」
ドルフはそう言って、剣と小さな包みをクロウに渡した。
「爺さん、これは?」
「試しに作ってみた水属性の剣と、武器に火属性を付与する道具じゃ。どちらも微妙な物じゃが、お主らなら使えるかもしれん」
「それは助かるけど、爺さん、また変な物じゃないでしょうね? あの短剣、酷い目にあったんだけど?」
「武器は使い手次第じゃよ」
「そんなもっともらしい事言って……」
「まあな。とりあえず、お主らの健闘を祈る。じゃあの」
ドルフもそう言って、ソフィアと共に別れの挨拶をし、ウィグラフを追って行った。
「火属性を付与するのか、ヒナ、付けてみる?」
そう言ってクロウはヒナに小さい包みを渡した。
「ふむ、そうだな、試しに付けてみるか」
ヒナはそう言って、小さい包みを開けると、中には炎の形の飾りがあった。
それを自身の『小烏丸』に装着してみる。
「これは……、弱いが確かに火属性になったな……」
スクリーンを開き、武器の性能を確認したヒナはそう呟く。
「あら、あの爺さん、たまにはマシな物作るじゃないの」
「クロ、その剣はどう?」
「今見てみるよ」
クロウはそう言って、ドルフに貰った剣を鞘から抜いた。
その剣は鞘から抜くと、濡れた紙のようにグニャリと垂れてしまった。
「なんだこれ……、ん? メモが貼ってある」
〝この剣は水属性の剣を作ろうとして失敗したものじゃ。名前を『フニャチン』という。大切に使え。―ドルフ―〟
と書いてあった。
「あのジジイ……!」
クロウは怒りに手を震わせ、『フニャチン』を道に投げ捨て、先へ進む事にした。
左の道を進み、角を曲がった先には扉があり、その扉は少し隙間が空いていた。
エリーが覗き込むと、弓を持った盗賊が六人、中にいるようだ。
「全員弓のやつみたいだけど、どうする?」
「ウチにアイディアがあるわよ」
「大丈夫かな……?」
「召喚! ミニゴーレム・チョースケ!」
唇の厚いミニゴーレムが現れた。〝オイッス!〟
「召喚! ミニゴーレム・コージ!」
黒縁メガネの体操選手のようなミニゴーレムが現れた。
「召喚! ミニゴーレム・ブー!」
太ったミニゴーレムがウクレレを弾いている。
「召喚! ミニゴーレム・チャ!」
ハゲヅラ丸メガネにチョビヒゲのミニゴーレムが酔っぱらっている。
「召喚! ミニゴーレム・チュウ!」
おっさんが何かの機材を持ちながら逆ギレしている。〝ナンダバカヤロウ!〟
「……フェイ、最後の人が違うんだけど?」
「元メンバーよ、友情出演だわ」
「あたしは知らないけどさ、それにこの機材は?」
「カラオケ機器よ、カラオケボックスの入り口に入らなかったらしいわ」
「ネタが古すぎて分からないよ~」
「大丈夫よ、さあ、扉を開けましょう」
そう言ってフェイさっとは扉を開けてしまう。
中にいた六人の弓盗賊は、こちらに気づくと案の定弓を撃ってきた。
一行はその矢をカラオケ機器に隠れて凌ぐ。
「矢が次々飛んで来るって!」
「顔すら出せないよ!」
リノは隙を見て銃を撃つも、敵の攻撃が厳しく当たらないようだ。
「フェイ、魔法は使わないのか?」
「待ってて、今からカラオケ機材ごと移動するから」
フェイがそう言うと、五匹のミニゴーレムがカラオケ機材を押しながら敵に近づく。
もちろん彼らもそれに続き、距離が縮んでから飛び出し、一気に盗賊達を斬った。
「フフフ、どう? ウチの頭脳プレイは」
「ネタが古すぎてリアクションに困るんだよ!」
さすがのエリーも、知らないネタだとツッコミづらいようだ。
こうして弓の盗賊達を倒した彼らは、さらに先へと進む。
一行がさらに進んで行くと、そこには地下二階と同じ青銅の扉があった。
エリーが罠の有無を調べた後、五人で一斉にその扉を押して、開く。
その扉の先にいたのは、三つの頭を持つ、大型の狼だった。
「こいつは……、強そうだな……」
「ボスみたいだね……」
「調べてみるわ。健康分析! 彼の名は『ケルベロス』ね。お腹が空いているらしいわ」
「頭が三つありますからね……」
「食べ物で手懐けられないかな?」
「やってみるか……」
五人はもしもの時に備えて、それぞれおやつを持っていたのである。
「それ!」「ほいっ!」「はい!」
クロウ、フェイ、リノが三人同時におやつを投げた。
「三人同時に投げなくても……」
「タイミングが被っちゃったわね」
するとケルベロスの三つの頭が、足元に投げられたおやつを食べ始めた。
「何やったの?」
「草餅」
「カステラ」
「チョコレートです」
「チョコはマズくない? あれ犬っぽいし」
「そうなのですか!?」
「うむ、犬にチョコを食べさせると、最悪死んでしまうな……」
「どうしましょう……」
「うん、まあ、敵だけどね……」
そう話しているうちに、ケルベロスはおやつを食べてしまった。
ケルベロスの右の頭、草餅を食べた頭は、餅が喉につかえたらしく苦しみだした。
「ああっ! ちぎってあげればよかった……」
「敵なんだよね……」
ケルベロスの左の頭、チョコを食べた頭は、口から泡を吹きぐったりしてしまう。
「ごめんなさい……」
「だから敵なんだってば……」
ケルベロスの中央の頭、カステラを食べた頭は、大喜びでもっと欲しそうに舌を出して目を輝かせていた。
「よし!」
フェイはガッツポーズを取った。
「いやもう……、なんか違う遊びになってるし……」
だが三つの頭のうち、両脇の頭が深刻なダメージを受けたようだ。
そのことに気づいた中央の頭は、怒ってこちらに襲いかかって来た。
「やっぱりこうなるよね……」
「二つ頭を潰しただけでも上出来だ!」
こうして五人はケルベロスとの戦いになった。
ケルベロスは三つの頭を持ち、それぞれの口から炎を吐く恐ろしい魔物だ。
だが、一行の手によって二つの頭が潰されてしまい、その強さは半減してしまった。
彼は中央の口から炎を吹きかけるも、
「氷柱障壁!」
と、フェイの魔法によって防がれてしまう。
そして、クロウ、ヒナ、エリーの三連続攻撃で彼に傷を与える。
「氷結飛槍!」
フェイの魔法で彼の足が止まってしまうと、再び三人の連続攻撃を受け、悲鳴を上げながらケルベロスは倒れた。
この時、五人の腕輪が光を放ち、この階層をクリアした事が証明される。
彼らの手によって倒されたケルベロスは、その死体が消えると何かを残した。
「何だ、これ?」
クロウがそれを拾い上げると、それは鈍色に光る『金属製の右腕』だった。
「腕……」
「クロ、それ何?」
「金属の腕みたいだ」
「何かしら? 義手?」
「何でしょうね……?」
「見た事の無い金属だな……」
「後で使い道あるかもしれないし、持って帰って倉庫に置いておくよ」
クロウはそう言って、その腕を持ち帰る事にした。
一行はその後、ゴンドラに乗り、街へ戻った。
冒険者ギルドでクエストを報告して報酬を受け取った後、拠点へ帰る。
クロウは拾った『金属製の右腕』を倉庫に入れ、カギをかけて保管した。
その後、五人はそれぞれ次の冒険に向けて準備をして、今日は休む事にしたのだ。
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辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
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最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
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倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
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