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第二部
第37話 再会、遺跡の三人
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一行は馬車に乗り、『遺跡の街・ロゼルタ』へ向かっていた。
フェイが、ロゼルタでヤバい魔物がでる遺跡が見つかったらしい、という情報を聞きつけて、五人でそこへ向かうことにしたのだ。
「本当にそんな魔物いるのかねぇ?」
「らしいよ? フェイの情報だけど」
「酒場で飲んでる時に聞いたのよ。ロゼルタの新しい遺跡で上級悪魔が出たって」
「それが本当だとしたら、いい物があるかもしれませんね」
「上級悪魔か、戦ってみたいものだな……」
「そんな遺跡、罠なんかも多そうだよな」
「あたしの罠解除の腕を信じないの?」
「エリっちはうっかりさんだからね~」
「罠解除に絶対なんてものは無いんだからね!」
「悪魔か、楽しみだ」
そんなことを話しながら馬車は進み、彼らロゼルタへ到着した。
ロゼルタへ着くと、そこは新しい地下遺跡の話で盛り上がっていた。
アークデーモンが出るのは本当らしく、今まで何人もの冒険者が挑んだが、皆返り討ちにあい、大怪我して戻って来たり、帰って来ない者もいるそうだ。
そんな中、一行はロゼルタで地下の遺跡に入る準備をし、その中へ足を踏み込んだ。
遺跡の中は他の遺跡と同様に石造りであり、巨人でも歩けそうな程、通路は広く、高かった。
一行はエリーを先頭に、罠を警戒しながら進んだ。
「あれ? ここ罠が解除されてる」
エリーがそう言った。
「俺達が初めて入る訳じゃないし、先客がやったんだろ?」
「そうよね……」
「でも、解除されてない罠もあるかもしれないから、油断しない方がいいわ」
「はいはい、分かってますよ」
エリーは気を引き締め、罠を発見することにより注意しながら進む。
通路を進み、広間に出た。そこには魔物の姿は無く、ガランとしていた。
広間の右と前方に通路が伸びていて、どちらかに進まねばならないようだ。
「クロ、どっち?」
「ん~、右で」
クロウの直感を頼みに、一行は進んだ。
その通路は左に折れ、そこを曲がると何者かがいた。
灰色の天使のような体に黒い翼、顔は猛獣のようで額にはねじれた角が生えている。
――『上級悪魔』だ。
この敵は戦うしかない、五人はそう思い、武器を手にする。
向こうもこちらに気づくと、襲いかかってきた。
フェイの魔法とリノの狙撃で先制すると、クロウとヒナが斬りかかる。
上級だけあって、その体は鋼のように硬く、こちらの攻撃を通さないようだ。
そして悪魔が何かを叫ぶと、片腕を上げ魔法を使おうと試みる。
その挙動を、エリーが彼の右腕を斬りつけ、リノが左目を狙撃して、潰した。
悪魔は言葉にならない咆哮を上げ、怒り狂ってこちらを攻撃してくる。
だが理性を失った分、あちこちに隙ができ、フェイの魔法、クロウの攻撃で体勢を崩されると、ヒナが彼の首を斬りつけ、勝負は決まった。
「さすがに強かったな」
「上級の悪魔だしね」
「これが大勢で来て魔法を連発されたら、たまったものじゃないわ」
「なるべく狭い所で戦った方が良さそうですね」
「強敵だったな、ここへ来た甲斐があった」
彼らはアークデーモンを倒すと、罠を警戒しつつ先へと進んだ。
その先には小部屋があり、下級悪魔が二匹いた。
だが今の彼らの敵ではなく、あっさりと倒し、さらに奥へと向かう。
そこには下へ降りる階段があり、そこを降りた。
地下二階、そこの通路の先には空洞があった。
奥には先へと続く通路らしきものが見えるも、足元の空洞には足場になる物は何も見えず、崖と漆黒の空間が広がっていた。
下の方から冷たい風が吹き上げ、彼らの髪を揺らす。
「これは……、下に落ちたらヤバイな」
「ちょっと調べてみるよ」
「ここを飛んで行けとでもいうのかしら?」
「銃弾なら向こう側へ届きますが……」
「あっ! これ!」
「何だ?」
エリーが空洞の一部を指差した。
「ここだけ透明な床がある!」
「そういう仕掛けか……」
「幅はどれくらいあるの?」
「一メートルも無いけど、透明な場所さえ分かれば、歩けそうだよ」
「私に考えがあります」
リノはそう言って、鞄から袋を出した。
「それは何だ?」
ヒナが聞く。
「小麦粉です、これを透明の床に撒けば、足場が見えると思います」
「ナイス! リノ」
「じゃあ、やってみますね」
リノはそう言い、透明の床らしい所に小麦粉を撒く。
幅五十センチ程度の足場が小麦粉の白と共に見えてきた。
「よし、これで進めるな」
五人はリノを先頭に、小麦粉の足場を頼りに進んで行く。
彼らが透明な足場を渡り、向こう側へ着くころには小麦粉が切れてしまうも、何とか全員渡ることが出来た。
通路を進んで行くと、この道は右に折れて、さらに先へと通路が見える。
そこを進んで行くと、左手の壁に、鉄格子の扉が見えた。
中を見ると、上半身は美しい女性、下半身は蛇、背中には竜の翼がある魔物がいた。
そして彼女の奥の方には、壁に長い杖が飾ってあるのが見えた。
「これ、前にあった『伝説の武器』かな?」
「そうみたいね」
「奥にあるのは『長い杖』みたいね」
「中に入ってみます?」
「戦ってみようか」
五人はそう話して、中に入り、戦うことにした。
「健康分析! 彼女の名は『メリュジーヌ』よ。入浴中に覗かれると相手を呪い殺すらしいわ」
「風呂覗かれたら誰でも怒るよな……」
「あたしでも殺すよ……」
「そうですね……」
「皆、行くぞ!」
そう言って、ヒナはメリュジーヌに斬りかかって行った。
「ちょっ! 待てよ!」
「またセクハラする気か!」
「アレはキモかったよね……」
「彼女にとっては良かったのかも……」
四人もヒナに続き、戦い始めた。
ヒナの斬撃を長い爪で受け止めるメリュジーヌ。
彼女は背中の翼で宙に浮かぶと、下半身の蛇でヒナを薙ぎ払う。
「ぐっ……」
不意の攻撃で、腰にダメージを受け、吹き飛ばされてしまうヒナ。
それをリノが回復魔法で治療すると、彼女は再び立ち上がり、刀を構えた。
メリュジーヌが右腕を上げ魔法を使うと、指から氷の槍が飛び出し、彼らを襲う。
五人それぞれその魔法を躱し、クロウが距離を詰め、斬りかかった。
リノの銃撃、フェイの魔法でその翼を攻撃するも、大きなダメージを与えられない。
「ヒナ、アレをやるよ!」
「承知!」
エリーそう言うと、両手の短剣を同時に振り、つむじ風を巻き起こす。
そのつむじ風をさらに成長させて、ヒナの刀の炎を混ぜ込む。
すると、つむじ風が炎を巻き上げ、炎の竜巻と呼べるものになっていった。
エリーがその炎の竜巻を、二本の短剣を振り、メリュジーヌめがけて押し出す。
彼女はそれを躱そうとするも、竜巻に巻きこまれ、炎に焼かれながら悲鳴をあげた。
そして、メリュジーヌの悲鳴が聞こえなくなると、徐々に炎の竜巻は消えていき、そこには焦げた彼女の死骸が残されたのだ。
エリーとヒナは、互いにハイタッチで手を合わせ、技の成功を喜んだ。
「凄い技だな……」
「爺さんにこの短剣を作ってもらったおかげだよ」
「短剣で魔法を使うなんて、ずるいわね……」
「でも、フェイさんもこの前一緒にやってたじゃないですか」
「そうだぞ、これで某も協力技に参加できた」
「とりあえず、ここの杖を貰おうか」
フェイは壁に掛けてあった『長い杖』を手にした。
「これは『メリュジーヌの杖』ね、前に持ってたラミアの杖よりもいいわね」
そう言って、フェイは満足そうにその杖を眺めていた。
五人はここで少し休憩を取り、さらに奥へと進んで行った。
遺跡の通路は左に折れ、そこをさらに進むと階段があり、そこを降りる。
地下三階になったようだ。通路は先へと伸びていて、その先には小部屋がある。
その小部屋にはアークデーモンがいたものの、先程と同じく彼らに倒されてしまう。
五人は通路の罠を解除しつつ道なりに進み、右に折れて行くと、その先は道は二つに分かれていた。正面と左へ、である。
どちらに進もうか両方の道を除くと、正面の道から誰か来たようだ。
歩いてきたのは三人、知っている顔だ。
中央にマオ、右にライシス、左に目隠し黒忍者だ。
「アンタ達、こんな所で会うなんて、奇遇ね」
「マオか、やっぱり君らも伝説の武器を取りに?」
「そうね、そんなとこかしら」
「あれ? ライスは前の仲間どうしたの?」
「てめぇらが変なあだ名つけるから辞めちまったんだよ! チクショー! ……それに、今はマオ様と行動を共にしているのだ」
「マオの子分になったのかしら?」
「楽なんだよ! 戦闘が! ほとんどビームで終わるしな」
「それでマオさんと一緒にいるのですね」
「おい、目隠ししてる忍者か犯罪者か分からん奴、其方は何故そこにいるのだ?」
「さあな……、金払いがいいんでな」
「ロリコンだからじゃねぇの?」
「ちが……」
マオはダーティの言葉を遮って喋りだす。
「ダーティはね、アタシの魅力にメロメロなのよ☆」
彼女はそう言って、きゃるーん☆キメ顔を見せた。
「違う! 断じて違う!」
ダーティはマオに怒るも、彼女に無視されている。
「あんた達、仲良さそうだね~」
「そういうことよ、宝は早いもの勝ちだからね!」
そう言ってマオは走り出し、続けて二人も追いかける。
……だが突然、彼女達の足元の床が開き、三人は悲鳴を上げて下へと落ちて行った。
「罠があったのか……」
「アホね……」
「でも、彼女達が本気で戦ったらかなり強そうだわ……」
「……あの、きゃっ!」
突然、床から光線が次々と飛び出してきた。多分マオの八つ当たりだろう。
「やばい、走ろう!」
下からこちらが見える訳はないので当たる心配は無いが、念のため五人は走って通路の奥へと進んだ。
さらに奥へ進む一行。左手に例の鉄格子の扉が見えてきた。
その鉄格子を覗き込むと、やはり魔物と、その奥に槍が掛けてある。
その魔物は、馬の頭に羊の角を持つ、悪魔のような姿だった。
「……強そうだな」
「槍か……、どうしようか?」
「面倒ならスルーしてもいいわよ」
「あの悪魔、結構背が高いみたいですね」
「強い者とは戦ってみたいが……」
「とりあえず戦ってみるか、何とかなるだろう」
五人はいつも通り、何も考えずに格子扉を開け、中に入る。
この部屋の天井には槍のような突起が下へ向けて尖っており、天井の罠のようだ。
「この天井、罠っぽいな……」
「上から落ちてくるのかな?」
「それは困るわ……。あれ!?」
「何か……、あっ!?」
彼らの前の床が膨らんでいき、床の下から何かが盛り上がってきたのだ。
「何だこれは!?」
戦う前に部屋の床が破裂しそうになり、動揺してしまう五人。
だが、目の前の悪魔は宙を舞い、こちらへ襲いかかって来ている。
その時、何かが地面を突き破り、飛び出してきた。
……頭、だろうか。それも巨大な……。
そしてこの髪色には見覚えがある。マオだ。
「これ……、マオの頭?」
「また巨大化したのかな?」
「何してるんだろ……?」
「ニンニクでも食べたのでしょうか……」
「おい、悪魔が死んでるぞ……」
ヒナにそう言われて天井を見上げると、こちらへ襲いかかってきた悪魔は、マオの頭と天井の槍に挟まれ、いつの間にか死んでいた……。
五人は目の前の出来事に呆然としてしまった。
「こんな狭いとこで巨大化しなくてもいいのにな……」
「そうだ! 額に『肉』って書いてやろう、マジック持ってない?」
「それもいいかもね。そういやリノっち、牛乳持ってる?」
「はい、一応持ってますが……」
「何する気だ?」
「マオの頭にかけるのよ」
「あ~、そういや牛乳に弱いんだっけ……」
「こう書いて……、こう」
エリーは床から突き出たマオの額に、『肉』と書き込んだ。
〝クヒヒヒ、クヒ……〟
そのくすぐったさに下からマオの笑い声が聞こえてくる。
五人は笑いをこらえつつ、奥の武器を手に取ろうと、奥へ進んだ。
牛乳を頭にかけられたマオの頭は、徐々に縮んできたように見えた。
だが、床から立て続けに光線が飛び出して来たのだ。
「やばい! マオがキレた!」
当然の事であるが、マオは怒り狂い、下から次々と光線を出してきた。
「逃げよう!」
「遺跡が崩れるって!」
五人は一目散に逃げだした。
遺跡の下がどうなっているかは分からない、だが良くないことが起きているようだ。
あちこちの壁や床などにヒビが入り、この遺跡がもう持たないと暗示してくる。
五人は急いで走り、階段を登り、この遺跡から脱出した。
そして一行が遺跡から脱出すると、地震のような轟音を立てて地面が沈んでいく。
その様をぼんやり見守る五人……。
「あ~、マジで怒らせちゃったな」
「そうだね……、でもあれくらいじゃ死なないでしょ」
「だよね、マオも巨大化してたし」
「他の二人は大丈夫でしょうか?」
「分からん……」
とにかく、目的の遺跡が沈んでしまったので、彼らはリベルタスに帰ることにした。
一行は、フェイの杖を手に入れて街へと戻ってきた。
そして、次の冒険の準備をして、今日は休む事にしたのだ。
マオ達が復讐に来ないことを祈りながら……。
フェイが、ロゼルタでヤバい魔物がでる遺跡が見つかったらしい、という情報を聞きつけて、五人でそこへ向かうことにしたのだ。
「本当にそんな魔物いるのかねぇ?」
「らしいよ? フェイの情報だけど」
「酒場で飲んでる時に聞いたのよ。ロゼルタの新しい遺跡で上級悪魔が出たって」
「それが本当だとしたら、いい物があるかもしれませんね」
「上級悪魔か、戦ってみたいものだな……」
「そんな遺跡、罠なんかも多そうだよな」
「あたしの罠解除の腕を信じないの?」
「エリっちはうっかりさんだからね~」
「罠解除に絶対なんてものは無いんだからね!」
「悪魔か、楽しみだ」
そんなことを話しながら馬車は進み、彼らロゼルタへ到着した。
ロゼルタへ着くと、そこは新しい地下遺跡の話で盛り上がっていた。
アークデーモンが出るのは本当らしく、今まで何人もの冒険者が挑んだが、皆返り討ちにあい、大怪我して戻って来たり、帰って来ない者もいるそうだ。
そんな中、一行はロゼルタで地下の遺跡に入る準備をし、その中へ足を踏み込んだ。
遺跡の中は他の遺跡と同様に石造りであり、巨人でも歩けそうな程、通路は広く、高かった。
一行はエリーを先頭に、罠を警戒しながら進んだ。
「あれ? ここ罠が解除されてる」
エリーがそう言った。
「俺達が初めて入る訳じゃないし、先客がやったんだろ?」
「そうよね……」
「でも、解除されてない罠もあるかもしれないから、油断しない方がいいわ」
「はいはい、分かってますよ」
エリーは気を引き締め、罠を発見することにより注意しながら進む。
通路を進み、広間に出た。そこには魔物の姿は無く、ガランとしていた。
広間の右と前方に通路が伸びていて、どちらかに進まねばならないようだ。
「クロ、どっち?」
「ん~、右で」
クロウの直感を頼みに、一行は進んだ。
その通路は左に折れ、そこを曲がると何者かがいた。
灰色の天使のような体に黒い翼、顔は猛獣のようで額にはねじれた角が生えている。
――『上級悪魔』だ。
この敵は戦うしかない、五人はそう思い、武器を手にする。
向こうもこちらに気づくと、襲いかかってきた。
フェイの魔法とリノの狙撃で先制すると、クロウとヒナが斬りかかる。
上級だけあって、その体は鋼のように硬く、こちらの攻撃を通さないようだ。
そして悪魔が何かを叫ぶと、片腕を上げ魔法を使おうと試みる。
その挙動を、エリーが彼の右腕を斬りつけ、リノが左目を狙撃して、潰した。
悪魔は言葉にならない咆哮を上げ、怒り狂ってこちらを攻撃してくる。
だが理性を失った分、あちこちに隙ができ、フェイの魔法、クロウの攻撃で体勢を崩されると、ヒナが彼の首を斬りつけ、勝負は決まった。
「さすがに強かったな」
「上級の悪魔だしね」
「これが大勢で来て魔法を連発されたら、たまったものじゃないわ」
「なるべく狭い所で戦った方が良さそうですね」
「強敵だったな、ここへ来た甲斐があった」
彼らはアークデーモンを倒すと、罠を警戒しつつ先へと進んだ。
その先には小部屋があり、下級悪魔が二匹いた。
だが今の彼らの敵ではなく、あっさりと倒し、さらに奥へと向かう。
そこには下へ降りる階段があり、そこを降りた。
地下二階、そこの通路の先には空洞があった。
奥には先へと続く通路らしきものが見えるも、足元の空洞には足場になる物は何も見えず、崖と漆黒の空間が広がっていた。
下の方から冷たい風が吹き上げ、彼らの髪を揺らす。
「これは……、下に落ちたらヤバイな」
「ちょっと調べてみるよ」
「ここを飛んで行けとでもいうのかしら?」
「銃弾なら向こう側へ届きますが……」
「あっ! これ!」
「何だ?」
エリーが空洞の一部を指差した。
「ここだけ透明な床がある!」
「そういう仕掛けか……」
「幅はどれくらいあるの?」
「一メートルも無いけど、透明な場所さえ分かれば、歩けそうだよ」
「私に考えがあります」
リノはそう言って、鞄から袋を出した。
「それは何だ?」
ヒナが聞く。
「小麦粉です、これを透明の床に撒けば、足場が見えると思います」
「ナイス! リノ」
「じゃあ、やってみますね」
リノはそう言い、透明の床らしい所に小麦粉を撒く。
幅五十センチ程度の足場が小麦粉の白と共に見えてきた。
「よし、これで進めるな」
五人はリノを先頭に、小麦粉の足場を頼りに進んで行く。
彼らが透明な足場を渡り、向こう側へ着くころには小麦粉が切れてしまうも、何とか全員渡ることが出来た。
通路を進んで行くと、この道は右に折れて、さらに先へと通路が見える。
そこを進んで行くと、左手の壁に、鉄格子の扉が見えた。
中を見ると、上半身は美しい女性、下半身は蛇、背中には竜の翼がある魔物がいた。
そして彼女の奥の方には、壁に長い杖が飾ってあるのが見えた。
「これ、前にあった『伝説の武器』かな?」
「そうみたいね」
「奥にあるのは『長い杖』みたいね」
「中に入ってみます?」
「戦ってみようか」
五人はそう話して、中に入り、戦うことにした。
「健康分析! 彼女の名は『メリュジーヌ』よ。入浴中に覗かれると相手を呪い殺すらしいわ」
「風呂覗かれたら誰でも怒るよな……」
「あたしでも殺すよ……」
「そうですね……」
「皆、行くぞ!」
そう言って、ヒナはメリュジーヌに斬りかかって行った。
「ちょっ! 待てよ!」
「またセクハラする気か!」
「アレはキモかったよね……」
「彼女にとっては良かったのかも……」
四人もヒナに続き、戦い始めた。
ヒナの斬撃を長い爪で受け止めるメリュジーヌ。
彼女は背中の翼で宙に浮かぶと、下半身の蛇でヒナを薙ぎ払う。
「ぐっ……」
不意の攻撃で、腰にダメージを受け、吹き飛ばされてしまうヒナ。
それをリノが回復魔法で治療すると、彼女は再び立ち上がり、刀を構えた。
メリュジーヌが右腕を上げ魔法を使うと、指から氷の槍が飛び出し、彼らを襲う。
五人それぞれその魔法を躱し、クロウが距離を詰め、斬りかかった。
リノの銃撃、フェイの魔法でその翼を攻撃するも、大きなダメージを与えられない。
「ヒナ、アレをやるよ!」
「承知!」
エリーそう言うと、両手の短剣を同時に振り、つむじ風を巻き起こす。
そのつむじ風をさらに成長させて、ヒナの刀の炎を混ぜ込む。
すると、つむじ風が炎を巻き上げ、炎の竜巻と呼べるものになっていった。
エリーがその炎の竜巻を、二本の短剣を振り、メリュジーヌめがけて押し出す。
彼女はそれを躱そうとするも、竜巻に巻きこまれ、炎に焼かれながら悲鳴をあげた。
そして、メリュジーヌの悲鳴が聞こえなくなると、徐々に炎の竜巻は消えていき、そこには焦げた彼女の死骸が残されたのだ。
エリーとヒナは、互いにハイタッチで手を合わせ、技の成功を喜んだ。
「凄い技だな……」
「爺さんにこの短剣を作ってもらったおかげだよ」
「短剣で魔法を使うなんて、ずるいわね……」
「でも、フェイさんもこの前一緒にやってたじゃないですか」
「そうだぞ、これで某も協力技に参加できた」
「とりあえず、ここの杖を貰おうか」
フェイは壁に掛けてあった『長い杖』を手にした。
「これは『メリュジーヌの杖』ね、前に持ってたラミアの杖よりもいいわね」
そう言って、フェイは満足そうにその杖を眺めていた。
五人はここで少し休憩を取り、さらに奥へと進んで行った。
遺跡の通路は左に折れ、そこをさらに進むと階段があり、そこを降りる。
地下三階になったようだ。通路は先へと伸びていて、その先には小部屋がある。
その小部屋にはアークデーモンがいたものの、先程と同じく彼らに倒されてしまう。
五人は通路の罠を解除しつつ道なりに進み、右に折れて行くと、その先は道は二つに分かれていた。正面と左へ、である。
どちらに進もうか両方の道を除くと、正面の道から誰か来たようだ。
歩いてきたのは三人、知っている顔だ。
中央にマオ、右にライシス、左に目隠し黒忍者だ。
「アンタ達、こんな所で会うなんて、奇遇ね」
「マオか、やっぱり君らも伝説の武器を取りに?」
「そうね、そんなとこかしら」
「あれ? ライスは前の仲間どうしたの?」
「てめぇらが変なあだ名つけるから辞めちまったんだよ! チクショー! ……それに、今はマオ様と行動を共にしているのだ」
「マオの子分になったのかしら?」
「楽なんだよ! 戦闘が! ほとんどビームで終わるしな」
「それでマオさんと一緒にいるのですね」
「おい、目隠ししてる忍者か犯罪者か分からん奴、其方は何故そこにいるのだ?」
「さあな……、金払いがいいんでな」
「ロリコンだからじゃねぇの?」
「ちが……」
マオはダーティの言葉を遮って喋りだす。
「ダーティはね、アタシの魅力にメロメロなのよ☆」
彼女はそう言って、きゃるーん☆キメ顔を見せた。
「違う! 断じて違う!」
ダーティはマオに怒るも、彼女に無視されている。
「あんた達、仲良さそうだね~」
「そういうことよ、宝は早いもの勝ちだからね!」
そう言ってマオは走り出し、続けて二人も追いかける。
……だが突然、彼女達の足元の床が開き、三人は悲鳴を上げて下へと落ちて行った。
「罠があったのか……」
「アホね……」
「でも、彼女達が本気で戦ったらかなり強そうだわ……」
「……あの、きゃっ!」
突然、床から光線が次々と飛び出してきた。多分マオの八つ当たりだろう。
「やばい、走ろう!」
下からこちらが見える訳はないので当たる心配は無いが、念のため五人は走って通路の奥へと進んだ。
さらに奥へ進む一行。左手に例の鉄格子の扉が見えてきた。
その鉄格子を覗き込むと、やはり魔物と、その奥に槍が掛けてある。
その魔物は、馬の頭に羊の角を持つ、悪魔のような姿だった。
「……強そうだな」
「槍か……、どうしようか?」
「面倒ならスルーしてもいいわよ」
「あの悪魔、結構背が高いみたいですね」
「強い者とは戦ってみたいが……」
「とりあえず戦ってみるか、何とかなるだろう」
五人はいつも通り、何も考えずに格子扉を開け、中に入る。
この部屋の天井には槍のような突起が下へ向けて尖っており、天井の罠のようだ。
「この天井、罠っぽいな……」
「上から落ちてくるのかな?」
「それは困るわ……。あれ!?」
「何か……、あっ!?」
彼らの前の床が膨らんでいき、床の下から何かが盛り上がってきたのだ。
「何だこれは!?」
戦う前に部屋の床が破裂しそうになり、動揺してしまう五人。
だが、目の前の悪魔は宙を舞い、こちらへ襲いかかって来ている。
その時、何かが地面を突き破り、飛び出してきた。
……頭、だろうか。それも巨大な……。
そしてこの髪色には見覚えがある。マオだ。
「これ……、マオの頭?」
「また巨大化したのかな?」
「何してるんだろ……?」
「ニンニクでも食べたのでしょうか……」
「おい、悪魔が死んでるぞ……」
ヒナにそう言われて天井を見上げると、こちらへ襲いかかってきた悪魔は、マオの頭と天井の槍に挟まれ、いつの間にか死んでいた……。
五人は目の前の出来事に呆然としてしまった。
「こんな狭いとこで巨大化しなくてもいいのにな……」
「そうだ! 額に『肉』って書いてやろう、マジック持ってない?」
「それもいいかもね。そういやリノっち、牛乳持ってる?」
「はい、一応持ってますが……」
「何する気だ?」
「マオの頭にかけるのよ」
「あ~、そういや牛乳に弱いんだっけ……」
「こう書いて……、こう」
エリーは床から突き出たマオの額に、『肉』と書き込んだ。
〝クヒヒヒ、クヒ……〟
そのくすぐったさに下からマオの笑い声が聞こえてくる。
五人は笑いをこらえつつ、奥の武器を手に取ろうと、奥へ進んだ。
牛乳を頭にかけられたマオの頭は、徐々に縮んできたように見えた。
だが、床から立て続けに光線が飛び出して来たのだ。
「やばい! マオがキレた!」
当然の事であるが、マオは怒り狂い、下から次々と光線を出してきた。
「逃げよう!」
「遺跡が崩れるって!」
五人は一目散に逃げだした。
遺跡の下がどうなっているかは分からない、だが良くないことが起きているようだ。
あちこちの壁や床などにヒビが入り、この遺跡がもう持たないと暗示してくる。
五人は急いで走り、階段を登り、この遺跡から脱出した。
そして一行が遺跡から脱出すると、地震のような轟音を立てて地面が沈んでいく。
その様をぼんやり見守る五人……。
「あ~、マジで怒らせちゃったな」
「そうだね……、でもあれくらいじゃ死なないでしょ」
「だよね、マオも巨大化してたし」
「他の二人は大丈夫でしょうか?」
「分からん……」
とにかく、目的の遺跡が沈んでしまったので、彼らはリベルタスに帰ることにした。
一行は、フェイの杖を手に入れて街へと戻ってきた。
そして、次の冒険の準備をして、今日は休む事にしたのだ。
マオ達が復讐に来ないことを祈りながら……。
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鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
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おもしろ夫婦のゲーム・ライフ
石動 守
SF
「ゲームがやりたい~~!」
と魂の叫びを上げる妻に、夫はその場を提供する。
しかし、妻は
「嫌よ! 毎日見てる顔とゲーム内でも一緒とか」
少々愛情を疑う夫であったが、妻の意見を採用する。
さて、VRゲームを始める二人、どんなゲーム・ライフを送ることになるのやら……
*先の長い小説です。のんびり読んで下さい。
*この作品は、「小説家になろう」様、「カクヨム」様でも連載中です。
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ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
八ッ坂千鶴
SF
普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。
そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!
※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。
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クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える
ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─
これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。
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カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。
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最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
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