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第一部
第3話 咬噛、コボルトの廃坑
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……エリーは冒険者ギルドでクエストを受けてきたようだ。
皆の所へ戻り、クエストの内容を話し始める。
「さて、次のクエはEランクの『コボルトに奪われた鉱石を奪還せよ!』かな」
「どんな内容なんだろ?」
「コボルトが住んでいる廃坑に行って、鉱石を街へ運ぶみたい」
「コボルトというと犬みたいなやつかな?」
「そうだね、可愛げがないから、犬っていうより狼だけどね」
「ポメラニアン型のコボルトがいたらどうしよう?」
「それはまず斬れないわね……」
「そんな変なモンスターいるわけないでしょうよ」
そんな会話をしながら、一行はコボルトの住んでいる廃坑へ向かった。
――『コボルトの廃坑』
入り口は木材の柱で補強されてあるが、作りはかなり古く、少しの衝撃でも与えれば崩れそうな程、脆そうだった。
かつては大勢の鉱夫達がここに出入りし、何かの鉱石を採掘していたかもしれない。
だが今はコボルト達に占領され、全く人が寄り付かなくなってしまったのである。
一行は廃坑の入り口に近づくと、遠くから様子を覗った。
「入り口に見張りが二匹いるね」
「ウチの召喚魔法、試しに使ってみていい?」
「二匹とも引っ張れる?」
「まあ、そこはお試しで……」
「召喚! ミニゴーレム・チャ!」
フェイの掛け声で、地面から小型の土のゴーレムが起き上がってきた。
彼は頭にハゲヅラをかぶり、丸い眼鏡をかけ、鼻の下にはチョビヒゲがついている。
「よし、ちょっとだけ行ってこい! チャ!」
フェイの号令で、ミニゴーレムは廃坑の入り口へと千鳥足で歩いて行く。
「……フェイ、これはオチが見えてるというか、出オチじゃない…?」
「重要なのは見た目ではなく、心よ」
「そんなキメ顔で言わなくてもさ……」
そうしている間に、ミニゴーレム・チャは見張りのコボルトへ近づいて行った。
チャはフラフラしながら歩き、何かを吐き出しそうな仕草をする。
だが突然、〝イーッキシッ!〟と大きなクシャミをすると、見張りの二匹のコボルトはその声に驚き、尻もちをついてしまった。
チャは急いで皆の所へ戻り、少し遅れて二匹のコボルトが追いかけてきた。
「もうあの姿で出てきただけでこうなると思ったよ……」
「お約束よ」
「ハイハイ」
二匹のコボルトは、クロウの雷神剣によってあっさりと倒されてしまった。
「この剣やっぱり強いな……、コボルトも一撃だ……」
「さすがSランクの武器だね」
「剣を振るだけで雷が出るのはずるぃょ」
フェイが不満をもらす。
「フェイの魔法だって、変な見た目をのぞけば使えるんじゃない?」
「変じゃない! レジェンドと言って欲しいわ」
「ハイハイ」
そんな話しつつ、四人は坑道の中へ入って行った。
一行は坑道の入り口から奥へと進んで行った。
道中に雑魚のコボルトが出るも、彼らにあっさりと倒されてしまう。
そうして進むと先の方に大広間があり、その手前で身を隠しつつ中を覗いてみた。
そこには広間の中央には、大型で足の短いコボルトが寝そべっていたのだ。
ボスらしきコボルトを発見した四人は、相談を始めた。
「やっぱりボスかな?」
「そうみたいだね」
「ウチが調べるわ! 健康分析! ……彼はダックスフントを父にもつコボルト『鉄牙のザッシュ』よ! 腰痛が酷いらしいわ」
「ダックスフント……、しかも雑種って……」
「ダックスフントの遺伝子が強すぎるな……」
「とにかくさ、どう戦う?」
「先に俺が行くよ、戦士が盾役になったほうがいいし」
「待って下さい、先に防御魔法をかけます。聖なる盾!」
「ありがと、じゃ行ってくる」
クロウは『鉄牙のザッシュ』へ向かって行き、彼に斬りかかった。
ザッシュはダックスフントのように胴が長く、足が短い。
彼は立ち上がると、短い足でヨチヨチ歩き出した。
その愛くるしい姿に思わず手を差し伸べてしまいそうになる四人。
だが彼は遠吠えで仲間を呼ぶと、坑道の奥の方からコボルト達が現れ、こちらに襲いかかって来た。
「雑魚が来たよ!」
「ウチに任せて!」
「召喚! ミニゴーレム・チョースケ!」
唇の厚いミニゴーレムが現れた。〝オイッス!〟
「召喚! ミニゴーレム・コージ!」
黒縁メガネの体操選手のようなミニゴーレムが現れた。
「召喚! ミニゴーレム・ブー!」
太ったミニゴーレムが眠っている。
「召喚! ミニゴーレム・チャ!」
さっきのハゲヅラのミニゴーレムが酔っぱらっている。
「召喚! ミニゴーレム・ケン!」
変なおじさんのミニゴーレムが踊っている。
「よし、行け!」
フェイは眠っているブーを叩き起こし、エリーの援護へ向かった。
クロウは『鉄牙のザッシュ』と戦っているものの、彼は弱くはなかった。
ザッシュは二本足で立つとヨチヨチ歩きだが、前足をついた後に素早く飛びかかってきて、噛みついてくるのだ。
「くそっ! 立ってるとかわいいのに!」
クロウがそう言うと、かわいいと言われたザッシュは、喜んで尻尾を振り始めた。
「……なんだこいつ?」
彼は疑問に思ったが、ザッシュはこちらの隙を見ると、すぐ噛みついてくる。
そのザッシュの攻撃をなんとか躱し、体勢を整えて武器を構える。
ザッシュは再び立ち上がった。攻撃の準備だろうか。
「なんで立ってかわいく見せようとするんだよ!」
クロウがそう言うと、ザッシュは〝ハッハッ〟と舌を出して喜びだした。
(こいつ、かわいいって言われると喜ぶのか?)
そう思ったクロウは、
「はいはいかわいいね~、こっちおいで~」
と言いながら、しゃがんでザッシュを手招きした。
彼はその呼びかけに応じて、後ろ足で立ってヨチヨチ歩きで近づいて来る。
「お手!」
クロウはそう言って雷神剣を前に差し出した。
彼は雷神剣に前足を乗せてしまい、電撃を浴びて〝キャウ~ン〟と倒れてしまった。
(なにこのアホ犬……)
クロウはそう思ったが、倒してしまったのは仕方ない、そう思う事にした。
その頃には雑魚のコボルト達との戦闘も終わったらしい。
「そっち大丈夫だった?」
エリーが聞いてきた。
「なんかアホな犬だったよ……」
クロウは呆れながら答えた。
「なにそれ? でもまあ勝ったからいいか」
そうしていると倒れたザッシュの姿は消え去り、そこに二つの装備が残った。
クロウがそれを拾い上げて調べると、Bランクの『詐欺師の短剣』と『美白の指輪』だった。
「短剣と指輪だけど、誰か欲しい?」
「あたしが短剣もらうよ」
「じゃあ、ウチは指輪で」
こうしてエリーが短剣、フェイが指輪を受け取ると、彼らは先に進む事にした。
一行はそれから廃坑の奥へと進み、ついに奪われた鉱石を見つけた。
だがその鉱石は想像より大きく、とても一人で持ち運べるようなものでは無かった。
「これどうやって運んだらいいんだろ? クロウ、一人で持ち上げられる?」
「無理だねぇ、四人がかりでもいけるかどうか、台車かネコみたいなのを持ってくるのかな……?」
「廃坑の中にこれを運ぶようなものあった?」
「そうですね……、坑道といえばトロッコとかあればいいのですが、ここでは見てないですね……」
「ウチのミニゴーレム達に運ばせるわ」
フェイの号令で、五匹のミニゴーレム達は鉱石を持ち上げた。
「へぇ~、便利じゃん」
「フフフ、もっと褒めてもいいのよ」
「調子に乗りそうだから辞めとくよ」
こうして四人は、ミニゴーレム達に鉱石を運んでもらいながら街へと戻った。
一行はリベルタスの街へ戻り、冒険者ギルドでクエストの報告をして報酬を受け取ると、四人とも職業ランクがEに昇格した。
「お? ランクが上がった」
「ランクが上がると、どうなるのでしょうか?」
「そうね、スキルの上限は職業ランクと同じなの。職業ランクが上がり、適当に冒険していれば、そのうち各種スキルのランクも上がるとおもうわ」
「それにね、受けられるクエのランク上限も一段階上がるから、次からDランクのクエも受けられるよ」
「そうなのですか」
そんな話をしながら冒険者ギルドを出て、四人は酒場へ向かった。
そして酒場に入り、四人が席に着くと、エリーが喋り出した。
「はい、ここで皆さんに重大な発表がありま~す」
三人はエリーの顔を見つめる。
「今からあたしたちのギルドを作ろうと思います!」
「ギルド?」
「作るんですか?」
「はい、作ります。職業ランクE以上にならないと作れないとのことだったので、やっと条件を満たすことができました」
「ギルドってこの手のゲームによくあるやつ?」
「そうです。まあ簡単な仲良しグループだと思ってください。ギルドを設立するとギルド拠点という家を持てるようになるし、その他にも細かい便利な機能を使うことができるようになります」
「ということで、クロウとリノは参加してくれますか? フェイは強制参加だけど」
「はい、今まで皆さんに色々お世話になっているので、こちらからもお願いします」
リノは頭を下げた。
「俺も参加するよ。皆といると楽しいからね」
「よし、じゃあギルドはこの四人でスタートしよう!」
「皆さん改めてよろしくお願いします」
「俺もよろしくお願いします」
クロウとリノは頭を下げた。
「そして、ギルドマスターになるのはクロウにお願いしようと思う」
「えっ? 俺?」
「もちろんレアなスキル持ってるからです」
「あまり期待されてもなぁ」
「まあ、困ったら皆で助けるから、心配しなくていいよ」
「じゃあさ、ギルドを設立したら何をやればいいんだ?」
「そうだね、まずはギルドの名前を決めて、システムに登録してから、ギルド拠点を借りる、という順でやっていこう」
エリーは再び話し続ける。
「それではギルドの名前を皆さんに考えてもらって、一番良さそうなものをギルド名にしたいと思います」
「ではフェイから」
「え~? 『空飛ぶ堕天使』」
「飛んでいるのか堕ちているのか分かりませんね。次リノ」
「え……、はい、『木星シュークリーム』というのはどうでしょう」
「でかすぎです。胸やけしそうです。次クロウ」
「ん~、『ちくわ大明神』」
「意味が分かりません、却下。」
「じゃあさ~、リノっちはどうなのよ?」
「え……、『神聖モフモフ帝国』……」
「却下」「変」「ダメです」
「えぇ~、あたしがネーミングセンス無いからみんなを頼りにしてたのに、みんな似たり寄ったりじゃん」
「そんなすぐにポンっと出てこないよ」
「う~ん、じゃあさ、適当な仮の名前のギルド作って、ギルド拠点を借りてから、もう一度考え直そうか? ギルド名はいつでも変更できるし」
三人はその意見に同意した。
「じゃあ、クロウ、お願い。メニューからギルドの項目へ飛んで、ギルド設立を選んでみて」
「分かった、やってみる」
「…………」
「あれ? ギルドの名前が、『ギルド名(仮)』になったんだけど?」
「なんだそりゃ?」
「なんか決定の場所押しても反応しないから、何回か押してみたらこういう感じに」
「う~ん、仮の名前だからまあいいか。じゃ、次ギルド拠点」
「メニューのギルドのところにあったね」
「うん、メンバー少ないから、一番安いやつでいいよ。って言っても、大きい拠点はギルドランク低いから借りられないけどね」
「よし、借りたよ。週あたり千シルバーかかるんだね」
「そのお金はギルド金庫から支払われるから気にしなくても大丈夫。クエこなしていけば、少しづつギルド資金も増えていくからね」
「なるほど」
「じゃあ、ギルド拠点に入ってみようか、場所は?」
「東通り57番地」
「じゃあ、行ってみよう」
四人はその住所の場所へ向かい、ギルド拠点の中に入った。
ギルド拠点の中に入ると、まず食堂兼広間があった。
左手にはキッチンがあり、その奥は作業場や倉庫になっているようだ。
食堂の奥の方には、二階へと続く階段と、浴室トイレがある。
二階へ上がると、ギルドメンバーの自室が十室用意されていた。
「おぉ、結構雰囲気いいね」
「内装はある程度自由に変えられるよ。家具買うのにお金かかるけど」
「へぇ~」
「二階は個人の部屋だね。後で適当に部屋を割り振ろう」
「うん」
「この台所は?」
「料理作ったりできるよ~。多分リノっちのお仕事」
「そうですね、じゃあせっかくですし、買い物するついでに何か食べるものを買ってきますね」
「いってらっしゃい」
その後、三人でギルド拠点の家具を移動し、レイアウトを変えたりした。
そうしていると、リノが戻って来た。
「ただいま帰りました」
「食材を買ってきましたので、今から簡単なの作りますね」
「お~、ありがとう」
リノは手早く紅茶とサンドウィッチを作り、全員に配ると、皆でおいしく食べた。
「そういえばですね、前にいただいた銃を調べてみたのですけど」
「どうだった?」
「『ベレッタ92』でした。弾は9x19mmパラベラム弾を使用、装弾数10、世界各国の警察や軍隊で使われていて、映画でもよくみかける拳銃です」
そうい言うとリノは、手慣れた動きで銃の動作を確認しだした。
「リノ、なんでそんなに銃を使い慣れてるの……?」
「あ、はい、このゲームをやる前は、銃を使って戦うゲームをやっていたので、自然と詳しくなってしまいました。」
再びリノは手慣れた動きで銃を動作を確認すると、銃を解体し始めた。
(((このメイドさん、プロだ……)))
三人はそう思った。
そんな話をしていると、今日はもう遅くなったので、四人はそれぞれの部屋を割り振ってから休む事にしたのだ。
皆の所へ戻り、クエストの内容を話し始める。
「さて、次のクエはEランクの『コボルトに奪われた鉱石を奪還せよ!』かな」
「どんな内容なんだろ?」
「コボルトが住んでいる廃坑に行って、鉱石を街へ運ぶみたい」
「コボルトというと犬みたいなやつかな?」
「そうだね、可愛げがないから、犬っていうより狼だけどね」
「ポメラニアン型のコボルトがいたらどうしよう?」
「それはまず斬れないわね……」
「そんな変なモンスターいるわけないでしょうよ」
そんな会話をしながら、一行はコボルトの住んでいる廃坑へ向かった。
――『コボルトの廃坑』
入り口は木材の柱で補強されてあるが、作りはかなり古く、少しの衝撃でも与えれば崩れそうな程、脆そうだった。
かつては大勢の鉱夫達がここに出入りし、何かの鉱石を採掘していたかもしれない。
だが今はコボルト達に占領され、全く人が寄り付かなくなってしまったのである。
一行は廃坑の入り口に近づくと、遠くから様子を覗った。
「入り口に見張りが二匹いるね」
「ウチの召喚魔法、試しに使ってみていい?」
「二匹とも引っ張れる?」
「まあ、そこはお試しで……」
「召喚! ミニゴーレム・チャ!」
フェイの掛け声で、地面から小型の土のゴーレムが起き上がってきた。
彼は頭にハゲヅラをかぶり、丸い眼鏡をかけ、鼻の下にはチョビヒゲがついている。
「よし、ちょっとだけ行ってこい! チャ!」
フェイの号令で、ミニゴーレムは廃坑の入り口へと千鳥足で歩いて行く。
「……フェイ、これはオチが見えてるというか、出オチじゃない…?」
「重要なのは見た目ではなく、心よ」
「そんなキメ顔で言わなくてもさ……」
そうしている間に、ミニゴーレム・チャは見張りのコボルトへ近づいて行った。
チャはフラフラしながら歩き、何かを吐き出しそうな仕草をする。
だが突然、〝イーッキシッ!〟と大きなクシャミをすると、見張りの二匹のコボルトはその声に驚き、尻もちをついてしまった。
チャは急いで皆の所へ戻り、少し遅れて二匹のコボルトが追いかけてきた。
「もうあの姿で出てきただけでこうなると思ったよ……」
「お約束よ」
「ハイハイ」
二匹のコボルトは、クロウの雷神剣によってあっさりと倒されてしまった。
「この剣やっぱり強いな……、コボルトも一撃だ……」
「さすがSランクの武器だね」
「剣を振るだけで雷が出るのはずるぃょ」
フェイが不満をもらす。
「フェイの魔法だって、変な見た目をのぞけば使えるんじゃない?」
「変じゃない! レジェンドと言って欲しいわ」
「ハイハイ」
そんな話しつつ、四人は坑道の中へ入って行った。
一行は坑道の入り口から奥へと進んで行った。
道中に雑魚のコボルトが出るも、彼らにあっさりと倒されてしまう。
そうして進むと先の方に大広間があり、その手前で身を隠しつつ中を覗いてみた。
そこには広間の中央には、大型で足の短いコボルトが寝そべっていたのだ。
ボスらしきコボルトを発見した四人は、相談を始めた。
「やっぱりボスかな?」
「そうみたいだね」
「ウチが調べるわ! 健康分析! ……彼はダックスフントを父にもつコボルト『鉄牙のザッシュ』よ! 腰痛が酷いらしいわ」
「ダックスフント……、しかも雑種って……」
「ダックスフントの遺伝子が強すぎるな……」
「とにかくさ、どう戦う?」
「先に俺が行くよ、戦士が盾役になったほうがいいし」
「待って下さい、先に防御魔法をかけます。聖なる盾!」
「ありがと、じゃ行ってくる」
クロウは『鉄牙のザッシュ』へ向かって行き、彼に斬りかかった。
ザッシュはダックスフントのように胴が長く、足が短い。
彼は立ち上がると、短い足でヨチヨチ歩き出した。
その愛くるしい姿に思わず手を差し伸べてしまいそうになる四人。
だが彼は遠吠えで仲間を呼ぶと、坑道の奥の方からコボルト達が現れ、こちらに襲いかかって来た。
「雑魚が来たよ!」
「ウチに任せて!」
「召喚! ミニゴーレム・チョースケ!」
唇の厚いミニゴーレムが現れた。〝オイッス!〟
「召喚! ミニゴーレム・コージ!」
黒縁メガネの体操選手のようなミニゴーレムが現れた。
「召喚! ミニゴーレム・ブー!」
太ったミニゴーレムが眠っている。
「召喚! ミニゴーレム・チャ!」
さっきのハゲヅラのミニゴーレムが酔っぱらっている。
「召喚! ミニゴーレム・ケン!」
変なおじさんのミニゴーレムが踊っている。
「よし、行け!」
フェイは眠っているブーを叩き起こし、エリーの援護へ向かった。
クロウは『鉄牙のザッシュ』と戦っているものの、彼は弱くはなかった。
ザッシュは二本足で立つとヨチヨチ歩きだが、前足をついた後に素早く飛びかかってきて、噛みついてくるのだ。
「くそっ! 立ってるとかわいいのに!」
クロウがそう言うと、かわいいと言われたザッシュは、喜んで尻尾を振り始めた。
「……なんだこいつ?」
彼は疑問に思ったが、ザッシュはこちらの隙を見ると、すぐ噛みついてくる。
そのザッシュの攻撃をなんとか躱し、体勢を整えて武器を構える。
ザッシュは再び立ち上がった。攻撃の準備だろうか。
「なんで立ってかわいく見せようとするんだよ!」
クロウがそう言うと、ザッシュは〝ハッハッ〟と舌を出して喜びだした。
(こいつ、かわいいって言われると喜ぶのか?)
そう思ったクロウは、
「はいはいかわいいね~、こっちおいで~」
と言いながら、しゃがんでザッシュを手招きした。
彼はその呼びかけに応じて、後ろ足で立ってヨチヨチ歩きで近づいて来る。
「お手!」
クロウはそう言って雷神剣を前に差し出した。
彼は雷神剣に前足を乗せてしまい、電撃を浴びて〝キャウ~ン〟と倒れてしまった。
(なにこのアホ犬……)
クロウはそう思ったが、倒してしまったのは仕方ない、そう思う事にした。
その頃には雑魚のコボルト達との戦闘も終わったらしい。
「そっち大丈夫だった?」
エリーが聞いてきた。
「なんかアホな犬だったよ……」
クロウは呆れながら答えた。
「なにそれ? でもまあ勝ったからいいか」
そうしていると倒れたザッシュの姿は消え去り、そこに二つの装備が残った。
クロウがそれを拾い上げて調べると、Bランクの『詐欺師の短剣』と『美白の指輪』だった。
「短剣と指輪だけど、誰か欲しい?」
「あたしが短剣もらうよ」
「じゃあ、ウチは指輪で」
こうしてエリーが短剣、フェイが指輪を受け取ると、彼らは先に進む事にした。
一行はそれから廃坑の奥へと進み、ついに奪われた鉱石を見つけた。
だがその鉱石は想像より大きく、とても一人で持ち運べるようなものでは無かった。
「これどうやって運んだらいいんだろ? クロウ、一人で持ち上げられる?」
「無理だねぇ、四人がかりでもいけるかどうか、台車かネコみたいなのを持ってくるのかな……?」
「廃坑の中にこれを運ぶようなものあった?」
「そうですね……、坑道といえばトロッコとかあればいいのですが、ここでは見てないですね……」
「ウチのミニゴーレム達に運ばせるわ」
フェイの号令で、五匹のミニゴーレム達は鉱石を持ち上げた。
「へぇ~、便利じゃん」
「フフフ、もっと褒めてもいいのよ」
「調子に乗りそうだから辞めとくよ」
こうして四人は、ミニゴーレム達に鉱石を運んでもらいながら街へと戻った。
一行はリベルタスの街へ戻り、冒険者ギルドでクエストの報告をして報酬を受け取ると、四人とも職業ランクがEに昇格した。
「お? ランクが上がった」
「ランクが上がると、どうなるのでしょうか?」
「そうね、スキルの上限は職業ランクと同じなの。職業ランクが上がり、適当に冒険していれば、そのうち各種スキルのランクも上がるとおもうわ」
「それにね、受けられるクエのランク上限も一段階上がるから、次からDランクのクエも受けられるよ」
「そうなのですか」
そんな話をしながら冒険者ギルドを出て、四人は酒場へ向かった。
そして酒場に入り、四人が席に着くと、エリーが喋り出した。
「はい、ここで皆さんに重大な発表がありま~す」
三人はエリーの顔を見つめる。
「今からあたしたちのギルドを作ろうと思います!」
「ギルド?」
「作るんですか?」
「はい、作ります。職業ランクE以上にならないと作れないとのことだったので、やっと条件を満たすことができました」
「ギルドってこの手のゲームによくあるやつ?」
「そうです。まあ簡単な仲良しグループだと思ってください。ギルドを設立するとギルド拠点という家を持てるようになるし、その他にも細かい便利な機能を使うことができるようになります」
「ということで、クロウとリノは参加してくれますか? フェイは強制参加だけど」
「はい、今まで皆さんに色々お世話になっているので、こちらからもお願いします」
リノは頭を下げた。
「俺も参加するよ。皆といると楽しいからね」
「よし、じゃあギルドはこの四人でスタートしよう!」
「皆さん改めてよろしくお願いします」
「俺もよろしくお願いします」
クロウとリノは頭を下げた。
「そして、ギルドマスターになるのはクロウにお願いしようと思う」
「えっ? 俺?」
「もちろんレアなスキル持ってるからです」
「あまり期待されてもなぁ」
「まあ、困ったら皆で助けるから、心配しなくていいよ」
「じゃあさ、ギルドを設立したら何をやればいいんだ?」
「そうだね、まずはギルドの名前を決めて、システムに登録してから、ギルド拠点を借りる、という順でやっていこう」
エリーは再び話し続ける。
「それではギルドの名前を皆さんに考えてもらって、一番良さそうなものをギルド名にしたいと思います」
「ではフェイから」
「え~? 『空飛ぶ堕天使』」
「飛んでいるのか堕ちているのか分かりませんね。次リノ」
「え……、はい、『木星シュークリーム』というのはどうでしょう」
「でかすぎです。胸やけしそうです。次クロウ」
「ん~、『ちくわ大明神』」
「意味が分かりません、却下。」
「じゃあさ~、リノっちはどうなのよ?」
「え……、『神聖モフモフ帝国』……」
「却下」「変」「ダメです」
「えぇ~、あたしがネーミングセンス無いからみんなを頼りにしてたのに、みんな似たり寄ったりじゃん」
「そんなすぐにポンっと出てこないよ」
「う~ん、じゃあさ、適当な仮の名前のギルド作って、ギルド拠点を借りてから、もう一度考え直そうか? ギルド名はいつでも変更できるし」
三人はその意見に同意した。
「じゃあ、クロウ、お願い。メニューからギルドの項目へ飛んで、ギルド設立を選んでみて」
「分かった、やってみる」
「…………」
「あれ? ギルドの名前が、『ギルド名(仮)』になったんだけど?」
「なんだそりゃ?」
「なんか決定の場所押しても反応しないから、何回か押してみたらこういう感じに」
「う~ん、仮の名前だからまあいいか。じゃ、次ギルド拠点」
「メニューのギルドのところにあったね」
「うん、メンバー少ないから、一番安いやつでいいよ。って言っても、大きい拠点はギルドランク低いから借りられないけどね」
「よし、借りたよ。週あたり千シルバーかかるんだね」
「そのお金はギルド金庫から支払われるから気にしなくても大丈夫。クエこなしていけば、少しづつギルド資金も増えていくからね」
「なるほど」
「じゃあ、ギルド拠点に入ってみようか、場所は?」
「東通り57番地」
「じゃあ、行ってみよう」
四人はその住所の場所へ向かい、ギルド拠点の中に入った。
ギルド拠点の中に入ると、まず食堂兼広間があった。
左手にはキッチンがあり、その奥は作業場や倉庫になっているようだ。
食堂の奥の方には、二階へと続く階段と、浴室トイレがある。
二階へ上がると、ギルドメンバーの自室が十室用意されていた。
「おぉ、結構雰囲気いいね」
「内装はある程度自由に変えられるよ。家具買うのにお金かかるけど」
「へぇ~」
「二階は個人の部屋だね。後で適当に部屋を割り振ろう」
「うん」
「この台所は?」
「料理作ったりできるよ~。多分リノっちのお仕事」
「そうですね、じゃあせっかくですし、買い物するついでに何か食べるものを買ってきますね」
「いってらっしゃい」
その後、三人でギルド拠点の家具を移動し、レイアウトを変えたりした。
そうしていると、リノが戻って来た。
「ただいま帰りました」
「食材を買ってきましたので、今から簡単なの作りますね」
「お~、ありがとう」
リノは手早く紅茶とサンドウィッチを作り、全員に配ると、皆でおいしく食べた。
「そういえばですね、前にいただいた銃を調べてみたのですけど」
「どうだった?」
「『ベレッタ92』でした。弾は9x19mmパラベラム弾を使用、装弾数10、世界各国の警察や軍隊で使われていて、映画でもよくみかける拳銃です」
そうい言うとリノは、手慣れた動きで銃の動作を確認しだした。
「リノ、なんでそんなに銃を使い慣れてるの……?」
「あ、はい、このゲームをやる前は、銃を使って戦うゲームをやっていたので、自然と詳しくなってしまいました。」
再びリノは手慣れた動きで銃を動作を確認すると、銃を解体し始めた。
(((このメイドさん、プロだ……)))
三人はそう思った。
そんな話をしていると、今日はもう遅くなったので、四人はそれぞれの部屋を割り振ってから休む事にしたのだ。
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※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
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VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
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当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
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ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
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突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
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