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第一部
第2話 残酷、オークの集落
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二人がリベルタスの街の酒場に入るなり、彼ら向かって若い娘が声をかけてきた。
「お~い、そこの戦士さんとメイドさん、こっちに来て座らないか~?」
そちらに目をやると、二つ離れたテーブルに腰かけている二人の娘がいた。
一人はエルフだろうか? 長い金髪、とがった耳、端正な顔立ち、ドレスのような服と外套を着ている。
もう一人は人間の娘だ。活発そうな表情、動きやすそうな服を着ている。
彼女はこちらに向かって手招きをして、隣に座るように指差している。
二人は他に空いているテーブルも無いなので、そのテーブルへと向かう。
彼女に近づくと、隣に座るようにうながされ、二人は席に着いた。
「あたしは『エリー』っていう。職業は『盗賊』だ。で、こっちが……」
「ウチは『フェイ』っていいます。『魔法使い』やってます。よろしくね」
エルフの娘に続き、メイドの娘が言った。
「私は『リノ』っていいます」
「俺は『クロウ』っていう」
エリーと名乗った娘は話を続けた。
「あたしら、この酒場で前衛役と回復役のプレイヤーを仲間に加えて、四人くらいでクエストでもやろうかって話してたんだ」
「そこで丁度良くあなたたちが酒場に入ってきたので、声をかけさせてもらったの」
「声をかけたのはあたしだけどな」
エリーは口が早いようだが、フェイはその発言を気にせず続ける。
「そういうわけですので、よかったら一緒にいかがですか?」
「俺は構わないけど、リノちゃんは?」
「私も大丈夫です」
「二人とも知り合いか?」
「いや、さっきのクエで彼女に助けられてね、そこで知り合ったばかり」
「そっか、ちなみにあたしらはシーズン1からの連れでね」
「シーズン1って?」
「あれ、知らないのか? このゲームには複数の『勝利条件』というのががあって、そのうちのどれかを満たしたら、このゲームの勝利者となって、現実世界で『賞金』が支払われるんだよ」
「そうなのか? 初心者ガイドっぽいの飛ばしたからなぁ」
「そこはちゃんと見ておけよ……」
エリーはあきれ顔でそう言い、話を続ける。
「それでな、このゲームの勝利条件を達成したプレイヤーには、『賞金』に加えて、次のシーズンでゲーム内での願い事を一つ、叶えることができるんだよ」
「ふむ……」
「これは聞いた話なんだけど、シーズン1の勝利者は、このゲームの世界を滅ぼそうとしている『魔王』という者を倒して、その褒美に現実世界での賞金『十万ドル』を獲得したらしい。そしてさらにゲーム内の願い事で、自分が第二の魔王になることを望んだみたい」
「へぇ~、そんなこともできるんだ」
「そしてシーズン2の勝利者は、伝説の古代竜を倒し、『竜の心臓』というものを手に入れて、不死身の体をになることで勝利条件を満たしたらしい。あ、もちろん賞金『二十万ドル』も獲得してるね」
「なるほど、このゲームの勝利者になることで、現実で賞金を貰えるわけか」
「そんなことも知らないでこのゲームやってたのか? それに今のシーズン3は賞金が『三十万ドル』に値上げされたんだよ」
「三十万ドル? これは賞金を狙っていくしかないな」
「おいおい、そうは言っても簡単じゃないぞ? 貰えるのは数万人いるプレイヤーのごく数人だし、宝くじみたいなもんだよ?」
「そうか……、でもな、俺はキャラクターを作った時から変わったスキルを持っててね、幸運に恵まれてるらしい」
「なんだそれ? ちょっと見せてみろ」
クロウはスクリーンを開き、スキルの項目を表示すると、エリーが覗き込んだ。
そこには『剣術F』、『盾術F』、『防御F』、『白い烏』と表示されていた。
「『白い烏』って何? ランクが無いから才能スキルらしいけど」
リノとフェイも、彼のスクリーンを覗き込んだ。
「本当にそういうスキルがあったのですね……」
「『白い烏』っていうの、初めて見たわ……、かなりのレアなのかしら?」
「その『才能スキル』って何なんだろ?」
「そっか、あたしのスクリーンを見てみな」
そう言ってエリーは自分のスクリーンを表示させた。
「これがあたしのスキルよ。『短剣F』、『回避F』、『忍び足F』、『開錠F』、『罠発見F』、『罠解除F』ってあるだろ? これが職業固有のスキル。そして私はまだ覚えてないけど、一般スキルというのもあって、それは店でも売ってる。それで、才能スキルってのはプレイヤー固有のもので、初めから持ってる人もいれば、ゲームをプレイしてる最中に突然目覚めたりする人もいるんだ」
「そうなのか」
「でも才能スキルって、レアだから情報が少なすぎてほとんど分かってないのよね」
「持ってないのが当たり前だから、無くても気にするほどのことじゃないからね」
「俺もこのゲーム始めたら何故かこのスキル持ってたんだよな……」
エリーが何か決めたような感じで一度うなずき、再び話し始めた。
「よし、この四人でパーティー組んで、どっか行こうか!」
「そうね、このメンバーだと面白そうね」
「はい、よろしくお願いします」
「クロウは?」
「行こう。このスキルの効果、もう少し色々と試してみたいし」
「じゃああたし、冒険者ギルドに行って、なんかクエ受けてくるよ」
こうして四人は酒場を後にし、冒険者ギルドへ向かった。
そしてエリーは、手早く次のクエストを受注してきて、皆の所へ戻ってきた。
「エリっち、どんなクエ受けてきたの?」
「Eランクの『オークの集落を壊滅させよ!』ってやつ」
「壊滅となると、雑魚十匹位倒すの?」
「さっきやたら強そうなの出てきたから、今度は楽なのがいいな」
「ボスもいないはずだから簡単だと思うよ」
四人はそんな話して、オークの集落へ向かった。
――『オークの集落』
集落は枯れ木で作った柵で囲われていて、不器用な作りになっていた。
入り口にはオークが二匹、集落の広場にも二匹、見張りがいる。
その広場を囲むように原始的な小屋が二つ建ててあり、広場の奥には洞穴の入り口らしきものも見える。その洞穴も彼らの住居になっているかもしれない。
「まず見張りを倒そうか。あたしが石を投げて見張りを引っ張って来るから、クロウとリノで一匹お願い。あたしとフェイでもう一匹やる」
エリーがそう提案すると、皆うなずいて同意した。
「じゃ、引っ張ってくるね」
彼女は入り口のオークに近づき石を投げて、彼らを引き連れて戻ってきた。
「フェイ、お願い!」
「氷結飛槍!」
フェイの杖から氷の槍が飛び出し、オークの足元に突き刺さった
その氷が徐々に広がっていくと、彼の足を凍らせてその動きを止める。
エリーはその隙を見逃さず、彼の背後に回り、その急所を刺した。
そのオークは悲鳴を上げて倒れ、動かなくなった。
一方のクロウ達も、彼がオークを斬りつけると剣先から雷撃が放たれ、オークを一撃で倒してしまった。
「ちょっとこの剣、強すぎるんだけど……」
「なんだその剣? なんていう名前?」
「『雷神剣』っていうSランクの剣。さっきのクエで拾った」
「何だそりゃ? なんで序盤からそんな強いの持ってるんだよ?」
「俺も良く分からん。このゲーム今日始めたばっかりだしな」
「ふ~ん、とりあえず色々試してみようか」
彼らはそう話すと、クエスト達成の為、他のオーク達を倒す事にした。
オークはいわゆる豚人間とでもいうもので、こういうゲームには序盤の敵としてよく出てくる魔物だ。もちろん序盤の敵だけあって弱い。
彼らはまず、見張りのオーク達を集落の外へ誘き出して倒した。
次に広場の小屋の中にいるオーク達をも倒すと、残るは洞穴の中のみとなった。
「楽勝だな、この中の奴も倒そう」
「油断するなよ、洞穴の中にもオークがいるんだし」
一行が洞穴を覗き込むと、中にいたのは、赤い染料を体のあちこちに塗っている、大型の太ったオークだ。
彼は大きな鍋で何かを煮ていて、嫌な臭いが洞穴に漂っていた。
四人は洞穴の外から様子見しつつ、作戦を考えていた。
「やっぱりあれは魔物のボスでしょうか……」
「そうみたいだな……」
「ウチの覚えたての魔法で調べられるよ?」
「フェイ、大丈夫なの?」
「ウチに任せて! 健康分析! ……彼はレッドオークの『前立腺のザガン』よ。腹囲140、BMI値55.56、メタボリックシンドロームの疑いがあるわ」
「メタボに前立腺って何だよ! ガンなの? アレ」
「そういう名前みたいだし、再検査が必要かも?」
「せめて敵の弱点とか調べてくれよ~」
「病気はともかく、強そうだな……」
「どうしましょうか……?」
「やっぱ基本通り、戦士が魔物を引き付けて、回復しつつ皆で攻撃かな?」
「それでやってみようか。四人でかかれば何とかなるだろう」
「大丈夫? いけそう?」
「俺に任せてくれ、この『白い鴉』ってスキルは幸運の象徴だと思う」
「私はがんばって回復しますね」
「う~ん……」
エリーは心配そうにしていたが、彼がやる気なので、任せる事にした。
クロウは手に雷神剣を構え、洞穴に入り『前立腺のザガン』に近づいて行く。
そして彼の後ろに隠れるように三人が続く。
ザガンはこちらに気づくと、手にした大きな混ぜ棒振り上げて襲いかかって来た。
「氷結飛針!」
フェイの魔法が飛び、ザガンの顔に当たり、彼を怯ませる。
エリーはその隙に背後から斬りかかるが、彼の脂肪は厚く、致命傷にはならない。
次にクロウが攻撃しようとするが、彼の方が早く混ぜ棒を振り下ろしてきた。
クロウはその攻撃を剣で受け止めようとするが、
「熱っ! あっ!?」
混ぜ棒についていた鍋の汁を浴びてしまい、思わず剣を落としてしまった。
だが彼の落とした雷神剣は、地面に落ちるとそこから雷撃を放ち、その雷がザガンの足に当たったのだ。
〝ピギィッ!〟
と、急な足への雷撃にザガンはよろめき、後ろへ倒れてしまう。
だが後ろにあったのは熱い鍋である。彼はアツアツの鍋に尻もちをついてしまった。
〝プギィィィ!〟
と彼は尻に大やけどを負って回り転がりだした。
クロウとエリーが、転げまわるザガンに攻撃をためらっていると、
「氷結飛針!」
そこへ再びフェイの魔法が飛んだ。
だが、今度は氷のつららが彼の尻の穴に突き刺さってしまったのだ。
〝パペェッ~~~~~ッッ!〟
ザガンはよく分からない叫び声を上げて、泡を吹いて動かなくなってしまった。
「……なんか勝ってしまったな」
「フェイ、ずいぶん残酷な殺し方するね……」
「……絶対に事故よ、ウチは狙ってないわ……」
「ちょっとオークさんがかわいそうですね……」
四人はザガンの最後に呆れていると、彼の死体が消え、そこに何かの箱が残った。
「ドロップアイテムかな?」
エリーがそれを拾い上げた。
「宝石箱っぽいね、高く売れそう。とりあえずあたしが拾っておくよ。街に戻ったら山分けにしよう」
「そだね」
過程はどうあれ、敵のボスを倒してクエストを達成した四人は、街へ戻る事にした。
リベルタスの街へ戻った一行は、クエストを報告して報酬を受け取った。
そして酒場で休憩しながら、オークが落とした宝石箱を開けてみた。
宝石箱を開くと、中に入っていたのは『ホルスターに入った銃』と貴金属だった。
「「「「銃!?」」」」
四人は驚いて大声を出してしまう。
「じゃあさ、リノっちが銃のスキル持ってるみたいだから銃をあげて、貴金属は三人で山分けかな?」
「えっ!? 銃なんて高い物、私が貰ってもいいのですか?」
「うん、それでいいよ」
「そうそう、貰っておきなよ」
「ちょっとそれだと後ろめたいので、貴金属のほうを換金してから、もう一度考えるのはどうでしょうか?」
三人はリノがそう言って譲らないので、食事を取ってから貴金属の換金に向かった。
「貴金属と宝石箱で六万シルバーだって」
「結構いい値段だな」
「やっぱさ、最初の案の銃以外三人で山分けでいこうよ」
「うん、ウチはそれがいいと思うよ」
「俺もそれでいいよ」
「えっと、本当にそれでいいのでしょうか……?」
「そんな気にしなくてもいいと思うよ」
「では、皆さんのご好意甘えさせて頂くことにします」
リノは深々とお辞儀した。
「そんなに気にしなくてもいいのに」
「うん」
「じゃあ、貴金属換金して配るね~」
「は~い」
「じゃあちょっと装備買ってくるよ」
「あたしも」
「ウチも」
「私もですね」
「じゃあ、買い物してから冒険者ギルド前に集合しよう」
彼らはそう話すと、それぞれ買い物しに街へ散らばった。
その後、四人はそれぞれ買い物を済ませて、広場に集まった。
皆それぞれ装備を新調して、見た目も所々変わっている。
その中でも目立つのは、やはりフェイだった。
「今回はヨーロッパの民族衣装みたいなやつにしてみました」
「また衣装買ったの?」
「召喚魔法も買ってきたよ」
「あんまりおふざけは勘弁してくれよな~」
「今回は、いや今回もちゃんと実用性のあるものだよ」
「リノ、大人しいけど、どうかしたの?」
「はい、突然高いアイテムを貰ったりしたので、ちょっと困惑気味です」
「そうよね、あたしらも急に大金入ってきたし、クロウのスキルの力なのかな?」
三人はクロウの顔をじっと見つめた。
「俺は特に何もやってないんだけどなぁ……」
「まあいいさ、なるようになる。じゃ、次のクエ受けてくるね~」
エリーはそう言って、次のクエストを受けに冒険者ギルドへ向かった。
こうして彼らは、この四人のパーティのまま、次のクエストへ向かうのであった。
「お~い、そこの戦士さんとメイドさん、こっちに来て座らないか~?」
そちらに目をやると、二つ離れたテーブルに腰かけている二人の娘がいた。
一人はエルフだろうか? 長い金髪、とがった耳、端正な顔立ち、ドレスのような服と外套を着ている。
もう一人は人間の娘だ。活発そうな表情、動きやすそうな服を着ている。
彼女はこちらに向かって手招きをして、隣に座るように指差している。
二人は他に空いているテーブルも無いなので、そのテーブルへと向かう。
彼女に近づくと、隣に座るようにうながされ、二人は席に着いた。
「あたしは『エリー』っていう。職業は『盗賊』だ。で、こっちが……」
「ウチは『フェイ』っていいます。『魔法使い』やってます。よろしくね」
エルフの娘に続き、メイドの娘が言った。
「私は『リノ』っていいます」
「俺は『クロウ』っていう」
エリーと名乗った娘は話を続けた。
「あたしら、この酒場で前衛役と回復役のプレイヤーを仲間に加えて、四人くらいでクエストでもやろうかって話してたんだ」
「そこで丁度良くあなたたちが酒場に入ってきたので、声をかけさせてもらったの」
「声をかけたのはあたしだけどな」
エリーは口が早いようだが、フェイはその発言を気にせず続ける。
「そういうわけですので、よかったら一緒にいかがですか?」
「俺は構わないけど、リノちゃんは?」
「私も大丈夫です」
「二人とも知り合いか?」
「いや、さっきのクエで彼女に助けられてね、そこで知り合ったばかり」
「そっか、ちなみにあたしらはシーズン1からの連れでね」
「シーズン1って?」
「あれ、知らないのか? このゲームには複数の『勝利条件』というのががあって、そのうちのどれかを満たしたら、このゲームの勝利者となって、現実世界で『賞金』が支払われるんだよ」
「そうなのか? 初心者ガイドっぽいの飛ばしたからなぁ」
「そこはちゃんと見ておけよ……」
エリーはあきれ顔でそう言い、話を続ける。
「それでな、このゲームの勝利条件を達成したプレイヤーには、『賞金』に加えて、次のシーズンでゲーム内での願い事を一つ、叶えることができるんだよ」
「ふむ……」
「これは聞いた話なんだけど、シーズン1の勝利者は、このゲームの世界を滅ぼそうとしている『魔王』という者を倒して、その褒美に現実世界での賞金『十万ドル』を獲得したらしい。そしてさらにゲーム内の願い事で、自分が第二の魔王になることを望んだみたい」
「へぇ~、そんなこともできるんだ」
「そしてシーズン2の勝利者は、伝説の古代竜を倒し、『竜の心臓』というものを手に入れて、不死身の体をになることで勝利条件を満たしたらしい。あ、もちろん賞金『二十万ドル』も獲得してるね」
「なるほど、このゲームの勝利者になることで、現実で賞金を貰えるわけか」
「そんなことも知らないでこのゲームやってたのか? それに今のシーズン3は賞金が『三十万ドル』に値上げされたんだよ」
「三十万ドル? これは賞金を狙っていくしかないな」
「おいおい、そうは言っても簡単じゃないぞ? 貰えるのは数万人いるプレイヤーのごく数人だし、宝くじみたいなもんだよ?」
「そうか……、でもな、俺はキャラクターを作った時から変わったスキルを持っててね、幸運に恵まれてるらしい」
「なんだそれ? ちょっと見せてみろ」
クロウはスクリーンを開き、スキルの項目を表示すると、エリーが覗き込んだ。
そこには『剣術F』、『盾術F』、『防御F』、『白い烏』と表示されていた。
「『白い烏』って何? ランクが無いから才能スキルらしいけど」
リノとフェイも、彼のスクリーンを覗き込んだ。
「本当にそういうスキルがあったのですね……」
「『白い烏』っていうの、初めて見たわ……、かなりのレアなのかしら?」
「その『才能スキル』って何なんだろ?」
「そっか、あたしのスクリーンを見てみな」
そう言ってエリーは自分のスクリーンを表示させた。
「これがあたしのスキルよ。『短剣F』、『回避F』、『忍び足F』、『開錠F』、『罠発見F』、『罠解除F』ってあるだろ? これが職業固有のスキル。そして私はまだ覚えてないけど、一般スキルというのもあって、それは店でも売ってる。それで、才能スキルってのはプレイヤー固有のもので、初めから持ってる人もいれば、ゲームをプレイしてる最中に突然目覚めたりする人もいるんだ」
「そうなのか」
「でも才能スキルって、レアだから情報が少なすぎてほとんど分かってないのよね」
「持ってないのが当たり前だから、無くても気にするほどのことじゃないからね」
「俺もこのゲーム始めたら何故かこのスキル持ってたんだよな……」
エリーが何か決めたような感じで一度うなずき、再び話し始めた。
「よし、この四人でパーティー組んで、どっか行こうか!」
「そうね、このメンバーだと面白そうね」
「はい、よろしくお願いします」
「クロウは?」
「行こう。このスキルの効果、もう少し色々と試してみたいし」
「じゃああたし、冒険者ギルドに行って、なんかクエ受けてくるよ」
こうして四人は酒場を後にし、冒険者ギルドへ向かった。
そしてエリーは、手早く次のクエストを受注してきて、皆の所へ戻ってきた。
「エリっち、どんなクエ受けてきたの?」
「Eランクの『オークの集落を壊滅させよ!』ってやつ」
「壊滅となると、雑魚十匹位倒すの?」
「さっきやたら強そうなの出てきたから、今度は楽なのがいいな」
「ボスもいないはずだから簡単だと思うよ」
四人はそんな話して、オークの集落へ向かった。
――『オークの集落』
集落は枯れ木で作った柵で囲われていて、不器用な作りになっていた。
入り口にはオークが二匹、集落の広場にも二匹、見張りがいる。
その広場を囲むように原始的な小屋が二つ建ててあり、広場の奥には洞穴の入り口らしきものも見える。その洞穴も彼らの住居になっているかもしれない。
「まず見張りを倒そうか。あたしが石を投げて見張りを引っ張って来るから、クロウとリノで一匹お願い。あたしとフェイでもう一匹やる」
エリーがそう提案すると、皆うなずいて同意した。
「じゃ、引っ張ってくるね」
彼女は入り口のオークに近づき石を投げて、彼らを引き連れて戻ってきた。
「フェイ、お願い!」
「氷結飛槍!」
フェイの杖から氷の槍が飛び出し、オークの足元に突き刺さった
その氷が徐々に広がっていくと、彼の足を凍らせてその動きを止める。
エリーはその隙を見逃さず、彼の背後に回り、その急所を刺した。
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「ちょっとこの剣、強すぎるんだけど……」
「なんだその剣? なんていう名前?」
「『雷神剣』っていうSランクの剣。さっきのクエで拾った」
「何だそりゃ? なんで序盤からそんな強いの持ってるんだよ?」
「俺も良く分からん。このゲーム今日始めたばっかりだしな」
「ふ~ん、とりあえず色々試してみようか」
彼らはそう話すと、クエスト達成の為、他のオーク達を倒す事にした。
オークはいわゆる豚人間とでもいうもので、こういうゲームには序盤の敵としてよく出てくる魔物だ。もちろん序盤の敵だけあって弱い。
彼らはまず、見張りのオーク達を集落の外へ誘き出して倒した。
次に広場の小屋の中にいるオーク達をも倒すと、残るは洞穴の中のみとなった。
「楽勝だな、この中の奴も倒そう」
「油断するなよ、洞穴の中にもオークがいるんだし」
一行が洞穴を覗き込むと、中にいたのは、赤い染料を体のあちこちに塗っている、大型の太ったオークだ。
彼は大きな鍋で何かを煮ていて、嫌な臭いが洞穴に漂っていた。
四人は洞穴の外から様子見しつつ、作戦を考えていた。
「やっぱりあれは魔物のボスでしょうか……」
「そうみたいだな……」
「ウチの覚えたての魔法で調べられるよ?」
「フェイ、大丈夫なの?」
「ウチに任せて! 健康分析! ……彼はレッドオークの『前立腺のザガン』よ。腹囲140、BMI値55.56、メタボリックシンドロームの疑いがあるわ」
「メタボに前立腺って何だよ! ガンなの? アレ」
「そういう名前みたいだし、再検査が必要かも?」
「せめて敵の弱点とか調べてくれよ~」
「病気はともかく、強そうだな……」
「どうしましょうか……?」
「やっぱ基本通り、戦士が魔物を引き付けて、回復しつつ皆で攻撃かな?」
「それでやってみようか。四人でかかれば何とかなるだろう」
「大丈夫? いけそう?」
「俺に任せてくれ、この『白い鴉』ってスキルは幸運の象徴だと思う」
「私はがんばって回復しますね」
「う~ん……」
エリーは心配そうにしていたが、彼がやる気なので、任せる事にした。
クロウは手に雷神剣を構え、洞穴に入り『前立腺のザガン』に近づいて行く。
そして彼の後ろに隠れるように三人が続く。
ザガンはこちらに気づくと、手にした大きな混ぜ棒振り上げて襲いかかって来た。
「氷結飛針!」
フェイの魔法が飛び、ザガンの顔に当たり、彼を怯ませる。
エリーはその隙に背後から斬りかかるが、彼の脂肪は厚く、致命傷にはならない。
次にクロウが攻撃しようとするが、彼の方が早く混ぜ棒を振り下ろしてきた。
クロウはその攻撃を剣で受け止めようとするが、
「熱っ! あっ!?」
混ぜ棒についていた鍋の汁を浴びてしまい、思わず剣を落としてしまった。
だが彼の落とした雷神剣は、地面に落ちるとそこから雷撃を放ち、その雷がザガンの足に当たったのだ。
〝ピギィッ!〟
と、急な足への雷撃にザガンはよろめき、後ろへ倒れてしまう。
だが後ろにあったのは熱い鍋である。彼はアツアツの鍋に尻もちをついてしまった。
〝プギィィィ!〟
と彼は尻に大やけどを負って回り転がりだした。
クロウとエリーが、転げまわるザガンに攻撃をためらっていると、
「氷結飛針!」
そこへ再びフェイの魔法が飛んだ。
だが、今度は氷のつららが彼の尻の穴に突き刺さってしまったのだ。
〝パペェッ~~~~~ッッ!〟
ザガンはよく分からない叫び声を上げて、泡を吹いて動かなくなってしまった。
「……なんか勝ってしまったな」
「フェイ、ずいぶん残酷な殺し方するね……」
「……絶対に事故よ、ウチは狙ってないわ……」
「ちょっとオークさんがかわいそうですね……」
四人はザガンの最後に呆れていると、彼の死体が消え、そこに何かの箱が残った。
「ドロップアイテムかな?」
エリーがそれを拾い上げた。
「宝石箱っぽいね、高く売れそう。とりあえずあたしが拾っておくよ。街に戻ったら山分けにしよう」
「そだね」
過程はどうあれ、敵のボスを倒してクエストを達成した四人は、街へ戻る事にした。
リベルタスの街へ戻った一行は、クエストを報告して報酬を受け取った。
そして酒場で休憩しながら、オークが落とした宝石箱を開けてみた。
宝石箱を開くと、中に入っていたのは『ホルスターに入った銃』と貴金属だった。
「「「「銃!?」」」」
四人は驚いて大声を出してしまう。
「じゃあさ、リノっちが銃のスキル持ってるみたいだから銃をあげて、貴金属は三人で山分けかな?」
「えっ!? 銃なんて高い物、私が貰ってもいいのですか?」
「うん、それでいいよ」
「そうそう、貰っておきなよ」
「ちょっとそれだと後ろめたいので、貴金属のほうを換金してから、もう一度考えるのはどうでしょうか?」
三人はリノがそう言って譲らないので、食事を取ってから貴金属の換金に向かった。
「貴金属と宝石箱で六万シルバーだって」
「結構いい値段だな」
「やっぱさ、最初の案の銃以外三人で山分けでいこうよ」
「うん、ウチはそれがいいと思うよ」
「俺もそれでいいよ」
「えっと、本当にそれでいいのでしょうか……?」
「そんな気にしなくてもいいと思うよ」
「では、皆さんのご好意甘えさせて頂くことにします」
リノは深々とお辞儀した。
「そんなに気にしなくてもいいのに」
「うん」
「じゃあ、貴金属換金して配るね~」
「は~い」
「じゃあちょっと装備買ってくるよ」
「あたしも」
「ウチも」
「私もですね」
「じゃあ、買い物してから冒険者ギルド前に集合しよう」
彼らはそう話すと、それぞれ買い物しに街へ散らばった。
その後、四人はそれぞれ買い物を済ませて、広場に集まった。
皆それぞれ装備を新調して、見た目も所々変わっている。
その中でも目立つのは、やはりフェイだった。
「今回はヨーロッパの民族衣装みたいなやつにしてみました」
「また衣装買ったの?」
「召喚魔法も買ってきたよ」
「あんまりおふざけは勘弁してくれよな~」
「今回は、いや今回もちゃんと実用性のあるものだよ」
「リノ、大人しいけど、どうかしたの?」
「はい、突然高いアイテムを貰ったりしたので、ちょっと困惑気味です」
「そうよね、あたしらも急に大金入ってきたし、クロウのスキルの力なのかな?」
三人はクロウの顔をじっと見つめた。
「俺は特に何もやってないんだけどなぁ……」
「まあいいさ、なるようになる。じゃ、次のクエ受けてくるね~」
エリーはそう言って、次のクエストを受けに冒険者ギルドへ向かった。
こうして彼らは、この四人のパーティのまま、次のクエストへ向かうのであった。
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※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
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VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
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当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
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ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
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突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
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