Ωの魔王の溺愛姫。

遊虎りん

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予章 

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「ああ、そうか。貴方には幼稚趣味が」

ああ、なるほど、とザイは声をあげた。
わざとらしくぽん、と音を鳴らして両手を打ち付けるとのんびりとした声で人聞きが悪い言葉を放った。

「殺すぞ。次は予告もなく確実に殺す」

リュウは強い眼力でザイを亡き者にしようとし鋭い視線を向けると同時にザイの言葉を瞬時に断ち切ると愛娘を胸に抱いて住み処へと足を向けた。
それに当然とばかりに続く足音が聞こえて眉を寄せて眉間に深い皺を作った。
振り向きもせず刺すような鋭い声で足音の主に告げた。

「ついてくるな。帰れ」

「はい、帰ります。なーんて帰るわけがないでしょう。私は貴方の我儘を聞いて数年待ったんですよ。」

軽い口調ではあるがザイが放つ雰囲気は重苦しい執拗な熱帯びた感情を含まれている。
ザイはリンから一瞬も視線を外していない。
隙あらば牙を向けようとする飢えた獣のような危うさがあった。
ザイがリンに強い執着を見せるのは仕方のない事だ。仕方ない、という言葉では様々な因縁が絡まり合い一言では収まりきれないが面倒だからその言葉で簡単に済ませる。
リュウの口から大きなため息が自然と洩れた。

「今はそれ以上口を開くな。後でお前の愚痴を聞き流してやる」

「聞き流さないで下さい。酒を飲んで朝まで付き合って、お前はよくやったって慰めてくださいよ」

「……慰めはしないが、朝まで酒なら付き合ってやってもいい」

リンに視線を向けてリュウは苦し気に言葉を吐いた。熱に魘されながら苦し気に眠っている。眠っているまな娘には聞かせなくない話だ。

身を隠していた家が主人の気配を感じて姿を現す。
二階建てだが赤い屋根の小さな家だ。

「小さな家ですね。昔は大きなお城に住んでいたのに、物足りなくないですか?」

「俺とリンが寝て飯を食って少し走り回ることが出来れば十分だ」

「走り回る必要あります?」

「リンが風呂を嫌がって逃げる」

呑気な会話。昔からザイと話すといつも意味もない他愛もない会話が続いてしまう。それでいつもリュウの調子が崩れる。
リュウは話しかけられると無視できない性分である。例え心底嫌っていても返事はする。
それが、ある運命を成立させた大きな要因であった。

人間嫌いの一般的な考えの持ち主だった魔物であり、魔王だったリュウ。
その考えを変え更に、人間の女性を愛するまでになったのは会話をして、最初の縁を結べたからだ。会話が、成立しなければその人の姿にふれあい縁を深めることは出来ない。
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