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第一章
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むし暑い夜だ。エアコンなんて高級な家電製品を買ったり、快適な涼しい環境を維持するための電気代を払う生活の余裕はない。
高校卒業して千紗は家を飛び出した。血の繋がった両親と弟と家族の絆を上手く結べなかった。
格安のアパートの一室が千紗の居場所だ。一階にありたまに年老いた猫がふらり、と訪れて千紗の様子を覗きに来る。それが待ち遠しい。
ベットに横たわって数分しか経っていないのだが、もう既にうっすらと肌が汗ばみ背中につう、と汗が流れていくのを感じた。
窓を開けようか、と一瞬考える。日中の暑さがこもった部屋の空気を入れ替えて、幾分か涼しくなった夜の風を取り入れようか、と思うが。
(起き上がるのもだるい)
そして声を出して呟くのも面倒臭い。まだ19才なのに孤独死しそうだ。
夢を見つけられなかった子供は干からびた大人になる。何も興味を持てなかった。ただ時間が無駄に流れていく。
ベットに横たわり目を瞑ると様々な事が頭に過る。
色々な言葉や情景を思い出してしまう。
恋人がいるからリア充でしょ?とバイト先で最近入ったばかりだが、濃いキャラを発揮している53才の鈴木宏一が、何の気なしに客の入りが切れたとき話しかけてきたが、笑顔一杯ではい!リア充でぇす!なんて若々しく元気に返事をしなかった。そうでもないですよ、と真顔で返してしまった。
鈴木は意外そうに目を丸め、佐藤ちゃん疲れているの?なんて心配されたのは一昨日の事である。
恋人はバイト先の先輩で男性にしては身体の線が細く千紗より辛うじて少し背が高い。八幡夏輝と名前が輝いている。女の子のように可愛らしい整った顔立ちで、アイドルを目指したらなれるのではないか、と周囲がざわつく程度のかわいこ君だ。一つ年上だが弟のような存在だった。彼は車の運転が好きでよく休みを合わせてドライブに連れていってくれた。川や山や自然の色とりどりの美しい光景を一緒に見て感動した。
一緒に居ると何でも出来そうな気がした。
だけど、自分は高校卒業したばかりで、なんの学も個性も魅力も何も持っていない。
自分だけ夏輝にのめり込んで醜悪を晒しそうで怖い。
(私のような女の子なんてそこら辺にいる。替えはいくらでもいる。夏輝は、私じゃなくてもいい)
キスしただけだ。嬉しかった。
いい雰囲気だと思っている。だが、自分では制御できない『女』の気配を感じ嫌悪感に震えた。
強い罪悪感が胸の中で膨張する。
高校卒業して千紗は家を飛び出した。血の繋がった両親と弟と家族の絆を上手く結べなかった。
格安のアパートの一室が千紗の居場所だ。一階にありたまに年老いた猫がふらり、と訪れて千紗の様子を覗きに来る。それが待ち遠しい。
ベットに横たわって数分しか経っていないのだが、もう既にうっすらと肌が汗ばみ背中につう、と汗が流れていくのを感じた。
窓を開けようか、と一瞬考える。日中の暑さがこもった部屋の空気を入れ替えて、幾分か涼しくなった夜の風を取り入れようか、と思うが。
(起き上がるのもだるい)
そして声を出して呟くのも面倒臭い。まだ19才なのに孤独死しそうだ。
夢を見つけられなかった子供は干からびた大人になる。何も興味を持てなかった。ただ時間が無駄に流れていく。
ベットに横たわり目を瞑ると様々な事が頭に過る。
色々な言葉や情景を思い出してしまう。
恋人がいるからリア充でしょ?とバイト先で最近入ったばかりだが、濃いキャラを発揮している53才の鈴木宏一が、何の気なしに客の入りが切れたとき話しかけてきたが、笑顔一杯ではい!リア充でぇす!なんて若々しく元気に返事をしなかった。そうでもないですよ、と真顔で返してしまった。
鈴木は意外そうに目を丸め、佐藤ちゃん疲れているの?なんて心配されたのは一昨日の事である。
恋人はバイト先の先輩で男性にしては身体の線が細く千紗より辛うじて少し背が高い。八幡夏輝と名前が輝いている。女の子のように可愛らしい整った顔立ちで、アイドルを目指したらなれるのではないか、と周囲がざわつく程度のかわいこ君だ。一つ年上だが弟のような存在だった。彼は車の運転が好きでよく休みを合わせてドライブに連れていってくれた。川や山や自然の色とりどりの美しい光景を一緒に見て感動した。
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だけど、自分は高校卒業したばかりで、なんの学も個性も魅力も何も持っていない。
自分だけ夏輝にのめり込んで醜悪を晒しそうで怖い。
(私のような女の子なんてそこら辺にいる。替えはいくらでもいる。夏輝は、私じゃなくてもいい)
キスしただけだ。嬉しかった。
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