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第一章
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参とっては人間が住むように作られた家はとても窮屈に感じられるが、この空間の空気はとても清く呼吸が楽にすることが出来る。
ここは一ノ瀬の女達の気配がする。肉体を失い魂だけになっても何十人かはここに止まり、生まれ変わらず行く末を見守ってくれている。
いち花は生身の人間とは縁が途切れそうになっているが、守護霊達がそれを繋ぎ止めようとしていた。
そして、目覚めた鬼を守っていた。
この日、ほんの数分だけ、早くいち花は家を出た。
戸を開けて、参の指に己の手をしっかり絡める。
ぴりっとした感覚が全身を駆け抜け繋がった事を確認した。
へその緒なのだ。手を繋ぐ、それはいち花が参を腹の中に入れる。参が人間のような状態になるのは、一時的にでもいち花から手を通して人間としての栄養素を取り入れることが出来るからだ。
女が、鬼と人間の世界の出入り口の門番もつとめている。
己と繋がる鬼を生まれた瞬間から、育てないとならない。年老いて人間は果てて赤子としてめぐり魂は宿る。前世の記憶を忘れるが消えることはない。
母のふた葉から引き継がれた記憶はすべて受け継いだわけではない。
いち花は数え年で8つ。幼く未熟であり、伝授するに値しない。
ざわざわざわ。
全身に寒気を感じた。緊張に萎縮して体温を下げている状態から回復しようと震えるのを感じた。
家を出た瞬間、重苦しさを感じて眉をひそめる。
ここは一ノ瀬の女達の気配がする。肉体を失い魂だけになっても何十人かはここに止まり、生まれ変わらず行く末を見守ってくれている。
いち花は生身の人間とは縁が途切れそうになっているが、守護霊達がそれを繋ぎ止めようとしていた。
そして、目覚めた鬼を守っていた。
この日、ほんの数分だけ、早くいち花は家を出た。
戸を開けて、参の指に己の手をしっかり絡める。
ぴりっとした感覚が全身を駆け抜け繋がった事を確認した。
へその緒なのだ。手を繋ぐ、それはいち花が参を腹の中に入れる。参が人間のような状態になるのは、一時的にでもいち花から手を通して人間としての栄養素を取り入れることが出来るからだ。
女が、鬼と人間の世界の出入り口の門番もつとめている。
己と繋がる鬼を生まれた瞬間から、育てないとならない。年老いて人間は果てて赤子としてめぐり魂は宿る。前世の記憶を忘れるが消えることはない。
母のふた葉から引き継がれた記憶はすべて受け継いだわけではない。
いち花は数え年で8つ。幼く未熟であり、伝授するに値しない。
ざわざわざわ。
全身に寒気を感じた。緊張に萎縮して体温を下げている状態から回復しようと震えるのを感じた。
家を出た瞬間、重苦しさを感じて眉をひそめる。
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