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魔狼の群れがルウミナを取り囲んでいた。今はやはり笑顔ではなく、緊張感で表情は固い。みんなトモダチ的な考えの能天気な馬鹿ではなかったらしい。
ナイフ等の武器は所持していない丸腰だ。

「あ!あっちに珍しい蝶々が飛んでます!」

目を丸くし驚いた表情を作るとルウミナは向こう側に指を指して声をわざとらしい口調で魔狼達の視線を誘導しようとする。
真面目に下手な嘘をつこうとしているが、やはり失敗に終わった。
魔狼達は微動にしない。
威嚇の低い声をあげている。

やはり、こいつは馬鹿だとキリトは目を細める。重くのしかかっていた心で渦巻いていた感情が静かに元の形に収まるのを感じた。
一匹の魔狼がルウミナに牙を向けて飛びかかった。その顔はどんな顔をしているのだろう、恐怖でひきつり、泣いているのだろうとキリトはルウミナを見た。

ルウミナは目を見開き、死から逃げようもせず、受け入れようとしていた。
凛々しく澄んだ瞳。

(こいつの父親は俺の父親を殺した。だけど、こいつは俺に何かしたか、したと言えば)

貴重な薬草で、傷を癒してくれた。

キリトは地を蹴った。そして、ルウミナに飛びかかる魔狼に体当たりする。身を低くして戦闘態勢をとる。赤い視線がキリトに集まった。
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