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白いモコモコと膨らんだ雲は綿飴みたいなふわふわ感がまったくない。どっしりと水を含んで見るからに固そうだ。おさとうのおやまみたい、と丸い目を更に大きく開いて熱心に空を見上げいた琉美は目を閉ざすと小さな赤い舌を出し、子猫がミルクを舐めるよう舌をちろり、と動かした。甘い砂糖の味が口のなかで広がり、口元をゆるめる。
想像を膨らまして本物にすることが出来る不思議な力を持っていた。

「るうちゃん、お昼ごはん出来たって」

るうと呼ばれると琉美ぱっと顔中に笑顔の花を咲かせて振り向いた。
嬉しそうに声を弾ませ琉美は幼く小さな指を空にむけた。

「ちい兄様、あそこにお砂糖のおやまがあるの。とってもあまいのよ」

「あ!本当だ。お砂糖のおやまがあるね。あんまり舐めたら駄目だよ。虫歯になっちゃうからね」

抱っこ、と琉美が両手を広げて甘えるのでちい兄と呼ばれた少年、千比絽は琉美を抱き上げた。
指差した空を見上げて相槌を打って幼い妹を見て話を合わせる。
本当に砂糖の甘い味を琉美が楽しんでいるとは思っていない。想像力が豊かなんだ、と微笑ましく妹を見守っている。

「むしばになったら、たいへん!」

「ご飯を食べた後しっかり歯をみがこうね。」

うん、と頷く妹を見て歯磨きの約束が出来たことに千比絽は内心喜んだ。琉美は歯磨きするのがあまり好きではない。
歯みがき粉の味が気に入らないのかと思い、イチゴ味のものを買って試したが嫌がった。歯ブラシが口のなかに入り歯や歯の間をゴシゴシすることが好きになれない。
歯ブラシでバイ菌をやっつけてやる!と話を作りながら歯磨きをするとすんなりと受け入れる。時間がない時はそんなことをやっている余裕もないので、他の方法を考え中だ。
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