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第九章

☆6

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「ティア、彼はロゼ。お前の弟だ」

もふもふとティアを抱き締めて再会を充分に喜ぶとレミィは身体を離した。
そして、拗ねているロゼを紹介する。

もう少し感動的な姉弟の対面をさせたかったが、レミィには荷が重かった。

「おとおとぉ!」

ティアは両手を広げながらロゼに駆け寄ると狩猟本能が働いて勢いが余って飛び掛り押し倒してしまった。

「……っ、姉上。激しいな」

片方の目を細めて上半身を起こしてロゼは笑った。ティアはぷるぷると震えるとロゼの背中に腕を回してぎゅーっと抱き締める。

「ろぜ、ごめんなさい…ティア、こわくて、しらないふりしてたの。ごめんなさ…い」

弟が誕生したのは知っていた。
でも、自分を拒絶した母が弟を可愛がる声が聞こえると胸の中にモヤモヤとした黒い煙がたまって苦しかった。
本当の自分が分からなくなりそうで怖かったのだ。
でも、今はその怖さはない。
独りぼっちだと思っていたティアではない。

大切にしたい、大切だと思われたい。

そう思える人が出来たからだ。

「これからだろ。人生の道って誰もが初めて歩くんだしさ、間違っちゃう時もあるって。でも、諦めないでまっすぐ歩こうぜ、ティア姉」

「はい!」

元気よくティアは手を上げて返事をする。
その様子をほんわかした気持ちで見守るレミィとルミテルとランツ。

ロゼは力が抜けてしまったティアを抱っこして起き上がった。ぽーんっと投げられた衝撃が今になって足腰に来てしまったらしい。

「黒猫さん、…レブンがいるの、ここ」

一瞬名前を忘れてしまうが、思い出してティアは木の根元の穴を指差してみんなに伝える。

「そうか、調べてみよう。とりあえず、エメラルドの所に戻ろう。すごく心配している。ティア覚悟しろよ」

「……にゃう」

ティアはぷるぷるする。数々のエメラルドの激しい愛情表現を思い出して戦く。

「レミィ君とティアちゃんが知り合いだったなんて意外でしたわ。レミィって珍しくない名前でしたから、まさか、このレミィだなんて」

「このとは失礼ですよ、お嬢様」

ルミテルとランツ。木の根元の穴に落ちたティアを心配していた所、レミィとロゼと会ったのだ。

「ルミテル、また、ティアここにくる!エメラルドにごめんなさいしないといけないの」

「はい、お待ちしておりますわ」

ティアは手を振って再会の約束をして一旦ルミテルに別れを告げた。

エメラルドが待ってる洋館へと向かった。
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