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第二章 アイ

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「違う!謝罪をしに来た。キャベツ畑を食い荒らしてごめんなさい!!」

アイは首を横に振って否定して、深々と頭を下げて大柄の魔物に謝った。
謝られた魔物は一瞬、動揺する。まさか言葉を喋らず荒らし行為を繰り返す薄汚い魔物のなり損ないが謝るとは思っていなかったからだ。

「……う、うるせえ!てめえの面なんて見たくねえ!!さっさと消えろ」

持っていた鍬を振りかざしてアイを追い払おうとする。
アイは避けて逃げた。
消えろ、と言われたら消えるしかない。
大柄の魔物の視界に入らない場所へと移動した。

(どうしたら、いいだろう)

アイは大きな木の枝に座るとせっせと畑を耕す魔物を見下ろす。腕を組むと悩みだした。

「父ちゃん、母ちゃんがおにぎり持っていけって。昼ごはん一緒に食べよう」

意地悪が父親である大きな魔物に話しかける。
その声は甘えの色が滲んでいて、父親を慕っているというのが分かった。
仲良く母親が作ったおにぎりを食べる様子を見てアイは羨ましく思った。

その時、不穏な空気をアイは嗅ぎとった。
人間の匂いだ。
3人いる。
武器を構えておにぎりを仲良く食べている魔物の親子に忍び寄っている。
人間の間では、魔物の毛皮を身にまとうのが流行っていた。どんな寒さに耐えられるならだ。
魔力が込められた銃弾を入れ銃口を大柄の魔物に向けられている。
人間の指が引き金を引いた。

「やめろ!!」

アイは咄嗟に大柄の魔物を庇う。鋭い痛みが肩を貫いた。どんなに殴られても命の危険を感じなかったが、魔力が特殊に加工されたエネルギーに命が削られる。
しかし、無様にまだ倒れるわけにはいかない。
アイは巨大な黒い狼の姿になると牙を剥き出し人間を追い払った。

どさり、とアイは倒れ伏す。

「……っ!!」

親子はアイに近寄った。
まさか自分達をアイが人間から守ってくれるとは思ってなかった。

「しっかりしろよ、おい。死なないよな?お前は不死身だろ」

どんなに殴ってもアイはけろり、としていた。
だが、今は血が噴き出して苦しげに唸っている。

「ごめんなさい……キャベツ、たべて、ごめんなさい」

アイは目を開けて親子に謝った。
瞳は涙で潤み、声は弱々しい。助けて、と命乞いもせず、自分が死ぬかもしれない危険な状態でキャベツを食べたことを後悔して謝罪する姿に親子は胸を締め付けられた。
許してやろう、という気持ちになる。

「許してやるから!しっかりしろ」

「傷をなおしてやる」

大柄の魔物が傷口に薬草をぬろうとするがアイは嫌々と首を横に振った。

「……もう、いきるのやめるから、いい。アイはもういきるのやめる」

アイは目を閉ざした。
力を抜かして暗闇に身を委ねる。
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