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第一章 魔王
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テントの中は暖かい。
狭いテント内には数人待機していた。勇者と屈強の男の話し声が聞こえていたのか、テント内に足を踏み入れる前に視線を感じていた。
その中で冷たい目があった。
「余計な荷物を拾ってきたの?いい迷惑よ」
「……リサ。そんな意地悪ババアみてぇなこと言うなよ。お前まだ16才だろ」
「年とか関係ないでしよ!ジジイ!」
赤髪のショートヘアの若い娘が勇者のデリカシーに欠ける発言に牙を剥き出して威勢が良く言い返した。
鼻の頭に皺が寄り実年齢よりも老けて見えるし、勇者の言葉通り意地悪く見える。
リサは自分が実際、意地悪なおばさんだと見られているとは思わず怒っていた。
だか、勇者以外にも意地悪だ、とここのテントに居る人間すべてに思われている。
リサがそれを知ったら恥ずかしさとショックのあまり顔を真っ赤にして泣いてしまうだろう。
「俺の分のパンとスープあるだろ、寄越せ」
リサは食料保管庫を守っている。
「……その子はなんなのよ?」
包装されたパンとスープを勇者に渡した。
「迷子、だ。腹を空かせて泣いてたんだよ。それを見捨てて魔王討伐したら飯が美味く食えなくなるだろ。お荷物になるってのは分かる。俺がこいつを背負うし、お前らに迷惑かけねぇって約束事する」
「…………分かったわよ」
勇者の言葉をきいてリサはため息洩らした。
リサは過去、勇者に命を救われた者の一人である。
ここのテント内にいるリサとも数人の人間は勇者が凄腕の剣使いである事と魔物討伐における働きぶりを知っていた。
「男の我が儘を聞けるリサは将来いい女になるぜ。俺が保証するし、いい相手が見つかんなかったら俺の嫁さんにしてやるよ」
「……な、なに言ってるのよ!勘違い男!ばーーか!あんたなんかのお嫁さんなんてまっぴらごめんよ」
リサは顔を真っ赤にして勇者を睨み付けた。
心臓がばくばく、してうるさい。
ぷんっとそっぽをむくとしっし!と犬を払うような手付きをする。
それを面白がってしまうのは勇者の悪いところである。
勇者は魔王の手を引いて二人座れるスペースへと移動して座った。
パンとスープを魔王に差し出す。
「……腹減ってるだろ?食えよ」
「いや、私は食べなくても平気だ」
「腹空かないのか?口とか鼻あるし、人間と同じだろ」
勇者は魔王の顔を凝視して言った。
「……腹は空いている感覚はある。でも、食べなくても平気。むやみに私の……」
魔王は言葉が続かずくちごもる。生まれてから一度も問いかけられた事がなかったからだ。
狭いテント内には数人待機していた。勇者と屈強の男の話し声が聞こえていたのか、テント内に足を踏み入れる前に視線を感じていた。
その中で冷たい目があった。
「余計な荷物を拾ってきたの?いい迷惑よ」
「……リサ。そんな意地悪ババアみてぇなこと言うなよ。お前まだ16才だろ」
「年とか関係ないでしよ!ジジイ!」
赤髪のショートヘアの若い娘が勇者のデリカシーに欠ける発言に牙を剥き出して威勢が良く言い返した。
鼻の頭に皺が寄り実年齢よりも老けて見えるし、勇者の言葉通り意地悪く見える。
リサは自分が実際、意地悪なおばさんだと見られているとは思わず怒っていた。
だか、勇者以外にも意地悪だ、とここのテントに居る人間すべてに思われている。
リサがそれを知ったら恥ずかしさとショックのあまり顔を真っ赤にして泣いてしまうだろう。
「俺の分のパンとスープあるだろ、寄越せ」
リサは食料保管庫を守っている。
「……その子はなんなのよ?」
包装されたパンとスープを勇者に渡した。
「迷子、だ。腹を空かせて泣いてたんだよ。それを見捨てて魔王討伐したら飯が美味く食えなくなるだろ。お荷物になるってのは分かる。俺がこいつを背負うし、お前らに迷惑かけねぇって約束事する」
「…………分かったわよ」
勇者の言葉をきいてリサはため息洩らした。
リサは過去、勇者に命を救われた者の一人である。
ここのテント内にいるリサとも数人の人間は勇者が凄腕の剣使いである事と魔物討伐における働きぶりを知っていた。
「男の我が儘を聞けるリサは将来いい女になるぜ。俺が保証するし、いい相手が見つかんなかったら俺の嫁さんにしてやるよ」
「……な、なに言ってるのよ!勘違い男!ばーーか!あんたなんかのお嫁さんなんてまっぴらごめんよ」
リサは顔を真っ赤にして勇者を睨み付けた。
心臓がばくばく、してうるさい。
ぷんっとそっぽをむくとしっし!と犬を払うような手付きをする。
それを面白がってしまうのは勇者の悪いところである。
勇者は魔王の手を引いて二人座れるスペースへと移動して座った。
パンとスープを魔王に差し出す。
「……腹減ってるだろ?食えよ」
「いや、私は食べなくても平気だ」
「腹空かないのか?口とか鼻あるし、人間と同じだろ」
勇者は魔王の顔を凝視して言った。
「……腹は空いている感覚はある。でも、食べなくても平気。むやみに私の……」
魔王は言葉が続かずくちごもる。生まれてから一度も問いかけられた事がなかったからだ。
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