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第6話 瑠美視点③
☆2
しおりを挟む母は離婚した傷を違うカットバンをぺたりと貼り付けて仰々しく覆って守っているのに父は新しいカットバンを探そうとしていない。
「……お母さんは彼氏が出来て、来年結婚するって」
「へえ、そうなのか」
世間話。縁側に座って空を見上げてのんびりとした口調で今日の天気を話している時のような声だ。
父の瞳を覗き込んでもそこに寂しさはなかった。
「お父さんは?」
「いや、俺はもういいんだ。お前の母さんを幸せに出来なかったしなぁ。今のままで十分幸せだしよ。笑わせるより泣かせるのが得意なもんで、困ったことに……俺はいいんだよ。結婚ってのは合わない。俺は俺が一番好きなんです」
ぽつり、ぽつりと話す父。
反省文を書いている小学生のようだ。だけど途中で鉛筆を放り投げた。
自分が一番好きだと子供の前で言える自由なところ嫌いじゃない。
「やだな~。こんな奴の血が流れているなんて、親父の遺伝子抜くわ」
嫌そうな顔を作る那智君。
「え、やだ。この子反抗期?」
急にオカマバーのママっぽい口調になる父。他愛ない会話をぼんやりときいた。
どうでもいい日常が流れていく。ここには涙は必要なくて悲しさとかもない。
自然のままでいられる。
私は父のオカマのママっぽい口調が面白くて声を出して笑った。
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