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第6話 瑠美視点③
☆1
しおりを挟む「……おとうさんに、会いたかったから会えて嬉しい」
緊張しているけど、私は素直な気持ちを声に出せてほっとした。いつもは口が開くことも難しくて結局何も喋れない事が多い。
話さなくてもいいか、と途中で諦めてしまう。
けれど、ぼんやりとした記憶の中で『瑠美、じょーずだね』と笑ってくれたお父さんの声が時々聞こえてくる。それが私を慰めてくれた。
会いたかった。
「……俺も会いたかったよ。さみしい思いをさせてごめんな」
運転する父の横顔を見る。すまなそうに眉が下がっていた。
涼真君達を家の前まで送る。
ばいばい、とさよならの挨拶をして別れた。
車の中には私と父と那智の3人だけになった。
気まずい雰囲気はない。
何を話したらいいか、というよりたくさん話したい事があった。
那智と父が住むアパートへ向かった。
部屋の中に入ると少し散らかってはいるけど足の踏み場は確保されている状態だ。
「……ちょっとだけお邪魔します」
「おう、なんかこのままバイバイじゃさみしいし」
グラスにブドウジュースを注いでくれた。
私の好きな味だ。お礼を言ってグラスを受け取った。渇いた喉が潤う。
今まで会いたい、って思っていた父親が目の前にいるのが不思議だ。でも、違和感なくてとけこんでいく。
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