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【9】ジョルジュside
しおりを挟むローズマリーとの婚約破棄後、私は愛しいイザベラと新たに婚約をし直し、幸せな日々を送っていた。
国民も私達二人の婚約を喜んでおり、巷では私達が結ばれる物語が小説や演劇となり、大人気だと耳にした。
それというのも、やはり世間から悪名高い嫌われもののローズマリーが良い意味で私達の恋物語を引き立ててくれたからだろう。
しかし、そんな幸せ絶頂の私達に少しばかりの問題が起きてた。
一つ目は、私の父である国王の存在だ。
私は国王に内緒でローズマリーとの婚約破棄を実行した。
公爵家との縁談を積極的に薦めていたのは国王だった。
正直、公爵家の娘ならローズマリーでもイザベラでも変わりがないだろうと私は単純に思っていた。
それなのに、婚約破棄後国王は酷く私を責め立てた。
ローズマリーを推す国王の気が知れなかった。
国を思うなら、あんな心卑しく醜く肥えた女より、心優しい純真無垢で美しいイザベラの方が断然良いに決まっている。
そこまでしてローズマリーを推す国王の真意を聞こうとしたが、国王に黙ってイザベラとの婚約話を進めた私に対して、最早国王は腹の内をさらけ出してくれることはなかった。完全に私は国王からの信頼を失くしてしまったのだった。
そしてもうひとつの問題はというと、ローズマリーに比べてイザベラの王妃教育が難航を極めているという事実。
元々が低下層の男爵貴族のもとで生まれたイザベラはどちらかと言うと庶民に近い生活を送っており、生まれながらの貴族令嬢としての知識やマナーには疎かった。
庶民的な雰囲気が庶民や公爵家の使用人から好かれている由縁たるところはあるだろうが、次期王室へ入るとなれば、いつまでも庶民の感覚でいてもらっては困るのだ。
国民の母となり、国を代表する淑女の頂点に立たなくてはならない。
その点で言えばローズマリーは優秀だった。
しかし私が婚約話を受けた時には、既に彼女の悪評が耳に入っており、彼女に対する良い印象はなく、私は彼女に対して最初から素っ気ない態度を取っていた。
私の態度にいつ噛み付いてくるかと身構えていたが、流石に王太子である私に対して失礼な態度を取ることはなかった。
そうこうして彼女の様子を時折こっそり眺めにいくと、お妃教育を真面目にこなすローズマリーは噂に聞く程性格が歪んでいるようには見えなかった。
厳しいお妃教育の影響で、彼女の体型が少しだけ痩せ始めた頃、ふと中庭で花を愛でるローズマリーに視線を奪われたことがあった。
彼女の腰まで伸びるプラチナブロンドの髪の毛が陽の光に照らされて、まるで繊細な絹糸のようにキラキラと輝いていた。
決して華やかではないものの、どこか高貴な気品を漂わせ、凛としている彼女の横顔から目が離せなかった。
横顔でも分かる彼女の意思の強そうな瞳は、紛れもなく王妃に相応しい威厳を持ち合わせているように感じられた。
しかし、僅かだが私がローズマリーに興味が湧き始めた頃、私は婚約前の内輪のパーティーで彼女の妹であるイザベラと出会ってしまったのだ。
ローズマリーと正反対の誰かが守ってやらなければと思わせるような可憐で美しい彼女に私は一瞬で惹かれた。
内気で奥ゆかしい彼女が恐る恐る私に声を掛けてきた時、私の心は彼女に全て持っていかれた。
私達はお互いに許されない恋に燃え上がるように激しく惹かれあった。
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