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【2】
しおりを挟む私が10歳の時に最愛のお母様が病気で亡くなった。
お母様は名門貴族の令嬢で気品に溢れ、控えめでとても優しい女性だった。
社交界が苦手なのか華やかな場を嫌い、極力人と関わることを避け、屋敷でひっそりと暮らしているような人だった。
お母様の死を悲しんでいた私の前に、お父様が新しいお母様を連れてやってきた。
新しい義母はお母様とは真逆の華やかな美しい女性だった。
そして彼女も未亡人で、私よりも一つ年下の娘がおり、彼女が後妻となったその瞬間に私に妹が出来た。
妹は継母に似てとても美しい容姿をしていた。
私が彼女に唯一勝てるとしたら亡くなった母親譲りのプラチナブロンドの髪だけだった。
妹は初めから私の存在が気に入らないらしく、何かにつけて私に対してキツく当たってきた。
お父様は新しいお義母様に夢中なようで、私のことなど気にも止めてくれなかった。
やがて私も妹も社交界にデビューする年になった。
妹の美しさは社交界でも評判で縁談の話があちこちから持ち上がった。
一方私はと言うと、妹に比べ地味で取り分け抜きん出た才能があるわけでもなく、妹の比較対象として度々話題になるだけの存在だった。
私の心は次第に荒んでいき、ストレスから私は食べることに逃げた。
食べて食べて食べまくった。
それに比例して服のサイズもどんどん大きくなっていく。
どんなに屋敷のメイド達が私を着飾らせても美しくならない姿に、私はメイド達に強く当たり散らすようになった。
公爵家での私はまるで腫れ物扱いだった。
そんなある日のこと。
お城から私にジョルジュ王太子のお妃候補としての縁談話が持ちかけられた。
理由は私の血統だった。
亡くなった母親は名門貴族の唯一の令嬢で、その血はとても尊いとされていた。
私には引き継がれなかったが、どうやら母親にはその家門の特異な能力が伝承されていたらしい。
初めて耳にする情報に私は驚いた。
王室はその能力を欲した。
それからの私は自分に舞い込んだ夢のような縁談話に、今迄の自暴自棄になり、自堕落な生活を送っていた自分を叱責するようにお妃教育に熱心に取り組んだ。
ジョルジュ王太子とは婚約前に何度か顔を合わせることがあったが、いつも彼の態度は素っ気なかった。
私の容姿と噂を耳にしていれば当然のことだと思い、私はそれでも彼に認められるように必死で努力を重ねた。
王家の血を引く彼はとても高貴で、その容姿も世の女性達が騒ぐ程の美貌の持ち主であったので、態度は冷たくとも私は密かに彼に恋心を抱くようになっていた。
そして、いよいよ婚約披露の当日。
憧れの王太子から公の場で罵倒され、裏切られた。
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