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【1】
しおりを挟む「お前のような醜い女は私の妃に相応しくない」
婚約披露のパーティーで、婚約者であるジョルジュ王太子が壇上からまるで家畜を見るような蔑んだ視線を私に送る。
王太子の言葉に私はその場で凍りついた。
周りからクスクスと私に対する嘲笑混じりの声が聞こえてきた。
「当然ですわ。ローズマリー公爵令嬢はご自分で鏡は見ているのでしょうか? 」
「コルセットでは抑えきれていないだらしない体型に、化粧でも誤魔化せない浮腫んだお顔」
「髪の毛だけは綺麗なプラチナブロンドですが、それが一層容姿から浮いて見え、実に滑稽ですこと」
随分な言われ様に私は悔しさと恥ずかしさで全身がカァッと赤く染まる。
コツ――
恥ずかしさに床を見つめるように俯く私の横を、無機質なヒールの音が通り過ぎる。
コツコツと階段を上がるその音は、王太子のいる壇上に到達するとピタリと止んだ。
私は音の主を確認するためゆっくりと壇上へと顔を上げた。
私の視界に、王太子の隣で勝ち誇ったように微笑む妹のイザベラの姿が映った。
「……どういうこと? 」
私は声を震わせ目の前の光景を見つめた。
「見ての通りだ。私はこのイザベラと今日この場を以て婚約する。公爵も既に了承済みだ」
私は側で控えていたお父様にバッと視線を向けた。
お父様がバツが悪そうに私からわざとらしく視線を背ける。
そんなお父様の隣で継母であるジュリア公爵夫人が扇子で口元を隠しながら、妹と同じように私を見ながら薄ら笑いを浮かべていた。
私はこの場に誰も私の味方がいないことを悟った。
「この薄汚い雌豚め! ここはお前のような者がいる場所ではない。さっさと私の前から消えよ!! 」
出ていけと言わんばかりにジョルジュ王太子が勢い良く腕を振り下ろし、入り口を指差した。
私はワナワナと震える身体を両腕で押さえると、この地獄の場所から逃げるように一目散に駆け出した。
『醜い公爵令嬢』
『我が儘で贅沢三昧の悪女』
世間からの私の評判は散々だった。
――自業自得なんだろうか。
私は城内を走りながら今迄の自分の行いを思い返した。
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