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◆就職のお世話をしました
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俺はドワーフタウンのゴーシュさんの菓子店の裏に転移ゲートを繋ぎユリシアさんとナーガの龍姉妹達と共に転移ゲートを潜る。
「ん~いい匂い!」
「そうだね、お姉ちゃん」
「はいはい、どうでもいいけど、これから先は大人しくしてよ。あなた達姉妹がはしゃぐだけで、これくらいの街なら崩壊するんだから」
「あら、信用ないのね」
「そうよ。私達がそんなことするなんて……しないよね? お姉ちゃん」
「……約束しよう。出来るだけはしゃがないと」
「「……」」
ナーガの問い掛けにユリシアさんが答えるまでに一瞬、空白があったのが気にはなるが、このままここに居ても何も進まないのでゴーシュさんには申し訳ないと思いつつ、菓子店の裏口から店に入る。
「あ~やっぱりいい匂いだわぁ~」
「ホント、甘くていい匂い!」
「誰だ? って、ケインと……誰?」
「あら、ケイン君。どうしたの? こんなお姉さんと一緒に?」
「その、実はゴーシュさんに頼みたいことがあって……」
「ん? どうした? また、大量注文の話か?」
「それなら、嬉しいけど今はちょっとムリかもよ」
「えっとね、そうじゃなくて……」
「ん?」
店に誰かが入って来た雰囲気を感じたのか、ゴーシュさんと奥さんのユラさんが俺達を見て少しだけ驚くが、俺がユリシアさんとナーガを連れているのを見て不思議そうにしている。
そして、俺がゴーシュさんにお願いがあると言えば、また大量注文の話かと言ってくるが、それではないと言えば、訝しむ。
「ちょっと、言いにくいんだけど……」
「なんだ、どうした? いつものケインらしくないな。多少の無理なら聞くぞ。他ならぬケインからの頼みだからな」
「ほう、そいつは都合がいい!」
「お姉ちゃん!」
「ユリシアさん!」
「何がだ?」
「もう、頼むから俺が話すから割り込まないでよ。大人しくしている約束だったよね?」
「スマン……」
俺はふぅ~と深呼吸をしてから、ゴーシュさんに改めて向き直る。
「あのですね、頼みと言うのは……」
俺はユリシアさん達姉妹をゴーシュさんの菓子店で雇って欲しいことと、出来ればお菓子作りを教えてやって欲しいと頼む。
「あら、あなた!」
「うん、そうだな。でもなぁ~」
俺からの頼みにユラさんはノリ気に見えたが、ゴーシュさんはどうも何かを躊躇っているように見えた。
「ゴーシュさん、何か気になることでも?」
「いや、正直に言えば確かに人手は欲しい。だけど、それは申し訳ないが非力な女性ではなく力仕事が十分に出来る男手が欲しいと思っている。すまない……」
「あ~それなら……ね」
「そうだな。店主、力仕事なら任せて欲しい」
「そうね。その点なら私達には問題ないわね」
「「へ?」」
ゴーシュさんの躊躇いは極単純なことだった。人手は欲しいが足りないのは力仕事が出来る男手だったと言われた。だが、それならそれでこちらにとっては好都合とばかりに俺は姉妹を見れば、ユリシアさんもナーガも問題ないと言う。
だけど、その前に一つだけ正直に言っておかないと後で面倒になるのは目に見えている。
「それなら「その前に」……どうした、ケイン?」
「二人を雇うかどうか決める前にどうしても言っておきたいことがあります」
「ん? 二人に何か問題でもあるのかい?」
「まさか、犯罪者ってことは……そうは見えないわね」
「実は……」
「なんだ? もしかして龍は雇えないとでも言うのか?」
「お姉さん!」
「ユリシアさん!」
「「え?」」
「どうした? 私達が龍だというのが問題なんだろう?」
「だから……あ~もう!」
「「……」」
俺がゴーシュさんに正直に打ち明けようとしたところで、ユリシアさんがフライングしてしまう。そして、その告白にゴーシュさん夫妻は口をパクパクさせたまま固まっていた。
「ゴーシュさん? もしもし? お~い!」
「は! ケインか……俺はどうかしているのかな。そこの二人が龍だと言った気がしたんだが……まさかだよな」
「あの「店主、私達を疑うのか?」……もう、ユリシアさんは黙ってて!」
「ケイン、まさかとは思うが……」
「……はい。この姉妹は龍です」
「「えぇ~!!!」」
ゴーシュさんはユリシアさんを右手で指差していたが、それを左手で無理矢理下に下ろすと俺とユリシアさんの顔を交互に見ているが口は開いたままで塞がっていない。
「やっぱりダメだよね。龍なんて……ユリシアさん、ごめんね。他「ケイン君、待って!」……え?」
「もう、しっかりしなさい!」
「だって、お前……龍だぞ! ここ何年も誰も見たことがないって言う、あの龍だぞ!」
「だから、何?」
「いや、だからって……」
「しっかりしてよ! 今、私達の目の前にいるのは?」
「……龍だろ?」
「違うわよ! 綺麗な二人の女性でしょ!」
「いや、でも……」
「もう、二人が実は龍だからって言うのはこの際、横に置いといて」
「置くなよ!」
「置くわよ! だって、どうみてもヒトじゃない!」
「でも「もう、分かったわよ」……ユラ」
どうも龍の姉妹にビビり話が進まないゴーシュさんに対しユラさんは龍には見えないから大丈夫と言い張るが、ゴーシュさんはなかなかウンと言わない。
そんなゴーシュさんに痺れを切らしたのか、ユラさんが分かったと一言言えば、ゴーシュさんは安堵した顔になる。
「ここは私がこの二人と一緒にするから! あなたは王都のお店に行ってちょうだい!」
「へ?」
「ん~いい匂い!」
「そうだね、お姉ちゃん」
「はいはい、どうでもいいけど、これから先は大人しくしてよ。あなた達姉妹がはしゃぐだけで、これくらいの街なら崩壊するんだから」
「あら、信用ないのね」
「そうよ。私達がそんなことするなんて……しないよね? お姉ちゃん」
「……約束しよう。出来るだけはしゃがないと」
「「……」」
ナーガの問い掛けにユリシアさんが答えるまでに一瞬、空白があったのが気にはなるが、このままここに居ても何も進まないのでゴーシュさんには申し訳ないと思いつつ、菓子店の裏口から店に入る。
「あ~やっぱりいい匂いだわぁ~」
「ホント、甘くていい匂い!」
「誰だ? って、ケインと……誰?」
「あら、ケイン君。どうしたの? こんなお姉さんと一緒に?」
「その、実はゴーシュさんに頼みたいことがあって……」
「ん? どうした? また、大量注文の話か?」
「それなら、嬉しいけど今はちょっとムリかもよ」
「えっとね、そうじゃなくて……」
「ん?」
店に誰かが入って来た雰囲気を感じたのか、ゴーシュさんと奥さんのユラさんが俺達を見て少しだけ驚くが、俺がユリシアさんとナーガを連れているのを見て不思議そうにしている。
そして、俺がゴーシュさんにお願いがあると言えば、また大量注文の話かと言ってくるが、それではないと言えば、訝しむ。
「ちょっと、言いにくいんだけど……」
「なんだ、どうした? いつものケインらしくないな。多少の無理なら聞くぞ。他ならぬケインからの頼みだからな」
「ほう、そいつは都合がいい!」
「お姉ちゃん!」
「ユリシアさん!」
「何がだ?」
「もう、頼むから俺が話すから割り込まないでよ。大人しくしている約束だったよね?」
「スマン……」
俺はふぅ~と深呼吸をしてから、ゴーシュさんに改めて向き直る。
「あのですね、頼みと言うのは……」
俺はユリシアさん達姉妹をゴーシュさんの菓子店で雇って欲しいことと、出来ればお菓子作りを教えてやって欲しいと頼む。
「あら、あなた!」
「うん、そうだな。でもなぁ~」
俺からの頼みにユラさんはノリ気に見えたが、ゴーシュさんはどうも何かを躊躇っているように見えた。
「ゴーシュさん、何か気になることでも?」
「いや、正直に言えば確かに人手は欲しい。だけど、それは申し訳ないが非力な女性ではなく力仕事が十分に出来る男手が欲しいと思っている。すまない……」
「あ~それなら……ね」
「そうだな。店主、力仕事なら任せて欲しい」
「そうね。その点なら私達には問題ないわね」
「「へ?」」
ゴーシュさんの躊躇いは極単純なことだった。人手は欲しいが足りないのは力仕事が出来る男手だったと言われた。だが、それならそれでこちらにとっては好都合とばかりに俺は姉妹を見れば、ユリシアさんもナーガも問題ないと言う。
だけど、その前に一つだけ正直に言っておかないと後で面倒になるのは目に見えている。
「それなら「その前に」……どうした、ケイン?」
「二人を雇うかどうか決める前にどうしても言っておきたいことがあります」
「ん? 二人に何か問題でもあるのかい?」
「まさか、犯罪者ってことは……そうは見えないわね」
「実は……」
「なんだ? もしかして龍は雇えないとでも言うのか?」
「お姉さん!」
「ユリシアさん!」
「「え?」」
「どうした? 私達が龍だというのが問題なんだろう?」
「だから……あ~もう!」
「「……」」
俺がゴーシュさんに正直に打ち明けようとしたところで、ユリシアさんがフライングしてしまう。そして、その告白にゴーシュさん夫妻は口をパクパクさせたまま固まっていた。
「ゴーシュさん? もしもし? お~い!」
「は! ケインか……俺はどうかしているのかな。そこの二人が龍だと言った気がしたんだが……まさかだよな」
「あの「店主、私達を疑うのか?」……もう、ユリシアさんは黙ってて!」
「ケイン、まさかとは思うが……」
「……はい。この姉妹は龍です」
「「えぇ~!!!」」
ゴーシュさんはユリシアさんを右手で指差していたが、それを左手で無理矢理下に下ろすと俺とユリシアさんの顔を交互に見ているが口は開いたままで塞がっていない。
「やっぱりダメだよね。龍なんて……ユリシアさん、ごめんね。他「ケイン君、待って!」……え?」
「もう、しっかりしなさい!」
「だって、お前……龍だぞ! ここ何年も誰も見たことがないって言う、あの龍だぞ!」
「だから、何?」
「いや、だからって……」
「しっかりしてよ! 今、私達の目の前にいるのは?」
「……龍だろ?」
「違うわよ! 綺麗な二人の女性でしょ!」
「いや、でも……」
「もう、二人が実は龍だからって言うのはこの際、横に置いといて」
「置くなよ!」
「置くわよ! だって、どうみてもヒトじゃない!」
「でも「もう、分かったわよ」……ユラ」
どうも龍の姉妹にビビり話が進まないゴーシュさんに対しユラさんは龍には見えないから大丈夫と言い張るが、ゴーシュさんはなかなかウンと言わない。
そんなゴーシュさんに痺れを切らしたのか、ユラさんが分かったと一言言えば、ゴーシュさんは安堵した顔になる。
「ここは私がこの二人と一緒にするから! あなたは王都のお店に行ってちょうだい!」
「へ?」
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