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◆思い出してくれました

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「用ってのは名前のことなの?」
「そう、名前をくれると言ったでしょ?」
「え? そんなこと言っ「言ったよね?」……言ってないハズだけど?」
「もう、男の子がそんな細かいことを気にしちゃダメよ」
「……」

 もう、どうあっても俺に名前を付けさせようとしているのがバンバン伝わってくるけど、同時に『名付けはゼッタイにヤバい!』というイヤな予感が消えることはない。

 でも『名前を付ける』イコール従属ペットにする』なので、そうなるのはどうしても避けたい。

 大体、ドラゴンの状態でも連れて帰れないのは勿論だけど、女性の姿のままで、しかも下着未着用で帰れば家族の皆に何を言われるか堪った物じゃない。それにリーサさんになんて説明すればいいんだよ。

「で、まだなの?」
「まだも何もそんな約束はしてないし、そもそも名付けしたら着いてくるつもりなんでしょ」
「さ、さあなんのことかしら……」
「それと俺が名前を付けると、どうなるのかを教えて欲しいんだけど」
「それはどうしても必要なの?」
「うん、どうしても聞きたい」
「べ、別にどうってことはないわよ」
「そうなのかな、ナーガさん」
「わ、私……えっと確か……」

 お姉さんが俺に対し名前はまだなのかと聞いてくるが、その前にハッキリさせておきたいから、お姉さんに対し名付けを行うとどうなるのかを確認するが、お姉さんはそれを俺に教えるのは都合が悪いのか、何か誤魔化そうとしている様にも思えたので、ここは妹であるナーガさんに聞いてみる。

 俺に急に話を振られ少し慌てはしたが、俺が聞きたいことは理解しているようで顎に指を当て何かを必死に思い出そうとしているようだ。

 そしてお姉さんはそんなナーガさんの様子を面白く無さそうに見ている。お姉さんは両手を組みナーガさんに向かって拝んでいるようにも見える。まるで、『何も思い出さないで欲しい』と願っているようだ。

 そんな二人の様子から、やっぱりなと名付けに対し危機感を覚える。

「あ! そう言えば……」
「「何?」」
「私も朧気なんだけど……」
「いいよ。それで?」
「あのね、確か……」
「ナーガ! 無理して思い出さなくてもいいのよ」
「ちょっと、黙って! ナーガさんを邪魔しないで!」
「邪魔だなんて、そんな……私はナーガのことを思って」
はちょっと黙ってて……今、思い出しているんだから……って、アレ? 私、今……」
「ナーガ、気のせいよ。ほら、いいから思い出しなさい」
「いや、ちょっと待って! ナーガさん、今お姉さんを呼んだでしょ」
「そうよね。私は確か……って」
「あ~言っちゃった! もう、折角いい嫁ぎ先が見つかったと思ったのになぁ~」
「「「……」」」

 お姉さん、もといユリシアさんをジッと見ながら、「名前が分かってよかったですね」とニッコリと笑って言えば、ユリシアさんは「どうも」と少し機嫌が悪そうに返す。

「あれ? 私、何かしちゃいました?」
「全然、ナーガさんは何も悪くないよ。それどころか俺は助けてもらったようなもんだしね」
「え? どうして、そうなるの?」
「だって、名付けなんかしたら、お姉さん……ユリシアさんと何か特別な関係を結ぶことになるんでしょ。そうなったら、俺に対して家に連れて帰れと迫られることになるのは目に見えているからね」
「そうよ! そうなの。確かにケインが言うように名付けは特別な意味を持つわ」
「もう、分かったわよ。降参よ、降参。あ~あ、折角お嫁さんになれるところだったのに……」

 さっきも言っていたけど、ユリシアさんは本当に俺の元へと来るつもりだったみたいだけど、未遂で終わったようで俺はホッと胸をなで下ろす。

「でも、これで終わりとは思えないんだよね」
「ふふふ、よく分かっているじゃないの」
「どゆこと?」
「だって、お菓子を食べたいじゃない」
「それはご自由にどうぞ」
「もう、だから君にお願いしているでしょ」
「お願い? 脅迫めいたことはされた気がするけど……」
「もう、終わったことでしょ」

 俺に嘘を付いてまで名付けさせようとしたことをユリシアさんはとして水に流そうとしているようだけど、俺は忘れないからね。

 でも、だからと言ってお菓子を渡さないと言えば、それこそドラゴンの姿で家に来ることは容易に想像が出来る。

 どうやってユリシアさんに納得してもらえるのだろうかと考えてみるが、あまりいい考えが浮かんでこない。だけど、これなら納得してもらえるだろうとユリシアさんに一つの提案をしてみる。

「あのさ……」
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