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3巻

3-2

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 2 鉄道の旅でした


 こうして魔導列車を作る作業が大体終わり、俺は、ちょっと息抜きをしたくなった。
 魔導列車の試運転も兼ねて、何か新しいことをやってみたくなったんだよね。

「この線路、どこまで延ばせるかな? 未開の地まで行けたら楽しそうだよね」

 そんなことを思いついた俺は、工房で作った魔導列車に乗り込んで、まだ行ったことのない方に行ってみることにした。
 魔導列車に乗ったまま、どんどん線路を延ばしていく。
 こうやって線路を延ばしていく作業、結構楽しいんだよね。
 周りには森が広がっていて、木々の緑が気持ちいい。枝には鳥がいて、のどかな感じの景色が広がっている。
「こういう場所って、いやされていいな~。今度家族で来てもいいかも!」と思いながら、線路をどんどん延ばし続ける。
 そんなことをやってると、気がついたら森を抜け出して、広い野原に出ていた。

「おお~、これはいい眺めだね」

 一人なのに、思わず声を上げてしまう俺。
 野原の中には牧草がたくさんえていて、遠くに羊に似た生き物がいるのが見える。

「あれ、あれはなんだろ? 羊っぽいけど、それにしてはまん丸すぎるし、モコモコすぎない? どうせなら近くで見てみよっと」

 そう思って魔導列車を降りて近付いていくと、やっぱりそれは普通と違ってて、変わった外見の羊だった。
 顔が見えないくらい全身雲みたいなモコモコの毛におおわれていて、ちょっとジャンプするとしばらくフワフワ浮いている。

「へ~、こんなところにこんな生物がいるんだ。ちょっと変だけど、結構カワイイね。名前はなんだろ? とりあえずファンタジー羊って呼んでおくか」

 そんなことを思いながらその生き物たちを眺めて、新たな発見にニマニマする。
 指でつついてみると、フワフワした羊たちの感触は見た目通り雲みたいな感じで、顔がどこなのかさっぱり分からなくてなんだか面白い。
 これって人になつくのかな? 逃げていかないし、とりあえず大丈夫そうだよね。
 そう思い、ファンタジー羊たちの前でぴょんぴょんねてみる。羊たちも俺の動きを真似て、ぴょんぴょん跳ね始めた。
 羊たちがちょっとジャンプすると、まるで風船みたいにフワフワ浮いている。
 楽しくなってずっと跳ねてはしゃいでたら、野原の向こうの木の後ろに、人影がちらっと見えた。
 え? 人がいるの?
 俺が様子をうかがうと、こっちをジーッと見てるみたいだった。すごくオドオドしてるんだけど、恥ずかしがり屋なのか?

「えっと……誰?」

 声を掛けてみたら、恥ずかしそうに顔を出したのはピンク色のロングヘアーで三つ編みの女の子だった。垂れ目で気弱そうだけど、どことなく清楚な雰囲気をまとっていて、かなり可愛い。

「あの、こんにちは……」

 女の子は小声で挨拶をする。

「私、ルミィって言います」
「ルミィ? 俺はケイン。よろしくね」
「「…………」」

 挨拶した後ルミィが黙るので、俺も黙ってしまった。

「あの、どうしたの? 俺に用があったりする?」
「え、えっと…………」
「「…………」」

 また黙る俺たち。
 えっ、なんなのって思っていると、ルミィがファンタジー羊をジッと見ていることに気付いた。
 俺もつられて羊を見たら、羊の首には首輪みたいなひもがついている。

「あっ、もしかして……ルミィの羊なの?」

 そう言ったらルミィはコクリと頷いた。

「あの、勝手に羊たちと遊んじゃって、ごめんね」

 俺はルミィに謝った。
 ルミィは小さく首を横に振る。

「いえ、大丈夫です……」

「ほんとに? よかった~」と安心する俺。

「ところでこれ、ルミィの羊たちなんだよね? 何か特別な種類の羊なの?」

 そう尋ねるとルミィは少し考えてから、ボソボソとしゃべり始めた。

「その……この羊、『フワフラム』っていう種類なんです。フワフラムは風船みたいに浮くことができて、それが特徴なんです。それでフワフラムと名付けられました」
「ああ~、だからこんなにフワフワと浮くんだね。でも、どうして浮くんだろう? 魔法か何か?」

 ルミィは少し困った顔をした。しばらくして、またボソボソと喋りだす。

「それは……普通の羊は胃が四つあるんですが、フワフラムには八つも胃があって、消化する時に空気が溜まって膨らむんです……その時空気より軽い気体が集まるので、草を食べるとフワフワ浮くんですよ……」

 声はボソボソしてるけど、羊のことになると少しは話してくれるみたい。

「ほんとに!? すごいね~。自分で浮けるなんて、羊たちは楽しいだろうな」

 俺は驚きながらも、ファンタジーな羊たちの生態に感心した。さすが異世界だけあって、変な生き物がいるんだな~。

「…………」

 でもルミィはすぐにまた無言になってしまった。かなり内気な子みたいだ。
 けど、俺はなんだかんだでルミィが気になって仕方なかった。

「ルミィ、君はこの辺りに住んでるの?」
「えっと、その……森の向こうにある村に住んでます」

 また小声で答えるルミィ。

「へー、それなら近くに住んでるんだね。また一緒に遊ばない?」

 俺が提案すると、ルミィは顔を真っ赤にして頷いた。

「え、えと……ありがとうございます。また来ます……」

 そう言ってルミィは小さく微笑んだ。
 その笑顔を見て、俺も嬉しくなる。

「よし、それじゃあまたね。ルミィ、羊たちも!」

 そう言って手を振ると、ルミィもお返しに手を振ってくれた。
 その後俺は魔導列車に乗り、ひとまず引き返すことにした。
 今日は楽しかったな~。新しい友達ができたし、羊たちも面白かったし。
 でも一番印象に残ったのは、内気だけど可愛いルミィの笑顔かな。
「また会えるのが楽しみだな~」と、俺は一人で微笑んだのだった。


 ◇◇◇


 次の日の朝起きると、リビングに向かう。リビングに入ると兄ズはもう起きていて、テーブルについていた。

「おはよう、ケイン。昨日は何してたんだ?」
「サム兄さん、ケインは昨日魔導列車の試験運転をしてたんだよ。それでケイン、どうだった?」

 サム兄さんとクリス兄さんが立て続けに聞いてきた。

「う~ん、まあなんとかなったよ。でも途中で珍しいことが起きてさ」

 そう言って、昨日の出来事を話し始める俺。

「……でさ、フワフラムっていう羊と出会ったんだよ。その羊たちは食べ物を食べるとふわっと浮くんだよ。それに、そこにルミィって子がいてさ」

 サム兄さんとクリス兄さんは驚いた顔をしながら、俺の話を聞いている。

「羊? 何か特別な羊?」

 クリス兄さんが興味津々に尋ねてきた。クリス兄さんは目新しい情報を聞くと興奮するんだよね。

「そんな羊がいるのか? 俺も見てみたい!」

 サム兄さんも興奮気味に言う。

「それに、そのルミィってはどんな子なんだ?」
「ルミィは、すごく内気な子でさ。でもかなり可愛いんだよね。羊たちの世話をしてるみたいだよ」

 サム兄さんに聞かれて俺がそう言うと、兄ズの目がさらに大きくなった。
「俺もその羊と遊びたい!」とさらに興奮するサム兄さんと、「僕もその羊たちと遊びたいな。それに、そのルミィって子にもっと詳しく聞いてみたいな」と言うクリス兄さん。
 兄ズがテンションが上がったみたいなので、俺は提案してみる。

「じゃあ、みんなでピクニックにでも行こうか」

 兄ズは大喜びし、二人ともすごく嬉しそうに頷く。

「それなら、今日の昼食はお弁当にして、ピクニックにしようよ」
「うん、それいいな!」
「それはいい案だね!」

 俺が言うと、兄ズは揃って賛成してくれた。
「よし、じゃあ母さんにお弁当を作ってもらおう!」と俺が言い、サム兄さんとクリス兄さんと一緒にキッチンに向かう。

「母さん、俺たち、ピクニックに行くからお弁当作って!」

 サム兄さんが元気いっぱいにお願いすると……

「もー、急ね。でもいいわよ」

 母さんはそう言いつつ、すぐにお弁当を作り始めてくれた。
 母さんっていつも忙しいのに、俺たちの頼みを断らないでくれるんだよね。
 お弁当が完成すると、母さんは一つ一つの中身を説明してくれた。

「これはサムの好きなハンバーグね。ケインとクリスも好きでしょ? それから、これはサンドイッチ、これは野菜の煮物」

 母さんがそんな風に説明してくれると、あまりに美味おいしそうで俺たちは口をあんぐりと開けて見入ってしまった。

「ほんとにありがとう、母さん!」

 俺たちは一斉に母さんにお礼を言う。

「今日は楽しい日になりそうだな~」

 そんなことを言いつつ、ワクワクしながらお弁当を手に家を出る。


「よし、行くぞー!」

 俺たちは転移ゲートを通って、領都の魔導列車のところに兄ズと移動した。

「おお~、これが魔導列車か!」

 魔導列車を見た瞬間、サム兄さんは興奮して声を上げた。
 クリス兄さんも口をポカンと開けて、魔導列車を見つめていた。

「それにしても、デカイよね。中はどんな感じなのかな?」 

 俺はニヤリと笑って、「乗ってみれば分かるよ」と答える。
 それから兄ズと一緒に魔導列車に乗り込んだ。
 車内はすごく広くて、窓から見える景色がきれいだから、テンションが上がるんだよね。

「よし、出発だ!」

 そう言って、俺は魔導列車を発車させる。
 列車がゆっくりと動きだす。それからしばらく走ると、青空が広がり、緑の丘が見えてきた。

「わあ、ここってこんなに景色がきれいだったんだね~」

 クリス兄さんが感嘆の声を上げている。

「ほんと、風が気持ちいいな~」

 サム兄さんも楽しそうだ。
 列車が走っていくと、窓の外に広がる風景がどんどん変わっていく。
 天気がよくて、緑がいっぱいの牧草地がずっと続いている。兄ズはその景色に夢中になっていた。

「すごいな、こんなに広くて緑がきれいな場所があるんだね」
「風景が最高だよね~。ピクニックするにも最高の場所だよ」

 サム兄さんに続いて、クリス兄さんはそう言った後にっこりと笑って……

「こんな景色、なかなか見れないよ。ケイン、ありがとう!」

 とお礼を言ってくれた。
 俺も嬉しくて笑顔になっちゃうな~。

「でも、まだこれからが楽しいんだよ!」

 そう言って、また魔導列車の運転に集中する。
 しばらくすると、目指していた牧草地が見えてきた。

「よし、そろそろ着くよー!」

 そう言いながら列車の速度を落としていく。
 兄ズはワクワクした顔で窓から外を見ている。

「やったー! 早く羊と遊びたいな」

 サム兄さんが満面の笑みを浮かべる。

「それに、ルミィって子にも会えるんだよね?」

 クリス兄さんも楽しそうだ。
 しばらくして魔導列車が牧草地に到着したので、完全に停止させる。
「よし、じゃあ行こうか」と言って、俺は兄ズを外にさそう。

「あそこが、昨日出会ったフワフラムがいる場所だよ」

 俺は草原を指差して、兄ズに説明した。
 サム兄さんが興奮して叫ぶ。

「うわぁ、ほんとに羊がいる!」
「それに、空気がすごく澄んでるな~」

 クリス兄さんも感心していた。


「じゃあ、早速みんなでルミィと羊たちに会いに行こうか」

 俺はにっこりと笑って、兄ズを促した。
 俺たちは草原を進んで、フワフラムたちのもとへと向かう。
 緑色の草原では、まるでぬいぐるみみたいに可愛いフワフラムたちが遊んでいる。
 その光景を見て、兄ズは目をキラキラさせながら大喜びだった。

「おおっ、見ろよ! あのフワフラム、空に浮かんでるな!」

 サム兄さんが指を差して驚いていた。

「本当だ! これがフワフラムか。すごいな~」

 クリス兄さんも目を輝かせる。

「よーし、それじゃあ一緒に遊ぼうか!」

 俺は言って、サム兄さんとクリス兄さんと一緒にフワフラムたちのところへ駆けていった。
 クリス兄さんが「うわー、可愛い! 触ってみていい?」って俺に聞いてきたから、「大丈夫だよ、優しく触ればね」って答えておいた。
 実はよく知らないけど、大丈夫だろう。多分。
 そうこうして三人でフワフラムたちと遊び始め、一緒に跳ねたり、追いかけっこしたりして、時間を忘れて遊んでしまった。

「一緒に遊べるなんて、夢みたいだな!」

 サム兄さんがはしゃいでいる。

「本当だよ。こんな羊が本当にいるだなんて信じられないね」

 クリス兄さんも興奮していた。
 そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

「おい、あのフワフラム、なんか変じゃない?」

 急にサム兄さんに言われて、指差したところを見る。
 すると、一匹のフワフラムが空に浮かんでいた。でも普通と違って浮いたままで地面に降りてこない。

「様子がおかしいね」
「大丈夫なのかな? 一体どうしたんだろう」

 俺とクリス兄さんも心配になって見上げる。

「うーん、もっと近付いて見てみようか」

 俺がそう提案して、兄ズと一緒にそのフワフラムのところへ歩いていった。
 その時突然、ルミィが現れた。前会った時のように無言で、なんだか顔色が悪い。

「ルミィ、何かあったの?」

 俺が問いかける。
 その瞬間、ルミィが泣きだしてしまった。涙が流れて、止まらない様子のルミィ。

「え、何、どうしたの? ルミィ、大丈夫?」

 俺と兄ズは大慌てでルミィに駆け寄った。
 まだ知り合ったばっかだけどルミィの泣く顔を見ると、どうしても心配で気になっちゃうんだよね。
 俺は兄ズと一緒に、早くどうにかしてあげないとって気持ちになった。

「ルミィ、泣かないで。どうしたの?」

 俺が問いかけると、ルミィはゆっくりと話し始めた。

「フワフラムたちは、毎日湖から水を飲んでるんです……でも、最近、湖にすごく大きい魚が住み着いて、フワフラムたちが水を飲みに行けなくなっちゃったんです……」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、水を飲まないとフワフラムは空に浮いたままになっちゃうってこと?」

 クリス兄さんが驚いたように尋ねる。

「うん、だから空から降りてこれない子が出ちゃったんです……水を飲むと、体の中の空気が抜けるから、ちゃんと地上にいられるんですけど……でも、今は……」

 ルミィの話を聞いて、俺はなんとかしてあげたいという気持ちがさらに強くなった。

「じゃあ、水を飲ませに行こうよ! 湖に行って、その魚を追い払えばいいんだよね?」

 俺は提案する。
 でも、ルミィはまた泣き始めてしまった。

「ええ、どうしたの? 大丈夫だよ、俺たちも手伝うから魚をなんとかしよう?」

 俺はルミィ元気づけようとする。

「でも、でも、その魚、すごく大きくて怖いんです……私の村の大人にも言ったんですけど、誰も近付けなくて……でもフワフラムが好きな水は湖の水だから、他の水はダメで……」

 困った顔になるルミィ。また泣きそうになっている。
 慌ててルミィに言う。

「大丈夫だよ、ルミィ。俺たちが一緒に行くからさ」
「デカイって言っても魚だろ? 驚かせればいなくなるって! 多分」

 俺が言うと、サム兄さんも続けて適当なことを言う。

「……本当に? でも、大人でも追い払えなかったので、危ないかもしれないです……」

 顔を上げたルミィはまだ心配そうにしている。

「大丈夫だよ、ルミィ。サム兄さんもクリス兄さんもいるし、みんなでなんとかするから。それに、浮いたままのフワフラムたちは助けてあげないとだよ。ね?」

 俺は兄ズにそう言って目配せした。
 兄ズもニコッと笑って、「「うん、一緒に行こう!」」と言ってくれた。

「……みなさん、ありがとうございます!」

 涙目だけど嬉しそうな表情のルミィ。
 よかった~、やっと泣きやんでくれた。

「それじゃあ、みんなで湖に行こう!」

 俺たちみんなに伝えて出発する。
 湖に向かう途中で空を見ると、まだ浮いているフワフラムたちが、道を歩いている俺たちのことを見ていた。

「大丈夫、みんなが水を飲めるように行ってくるからね!」

 そう声を掛けると、フワフラムたちは事情を分かったみたいな顔で、首を縦に振りながら見送ってくれた。


 俺たちはルミィに案内されて、フワフラムたちがいつも水を飲む湖へと到着した。
 湖は水がき通ってて、底には小魚たちが泳いでいる。水鳥も泳いでて、どう見ても平和そうな雰囲気だった。

「ここにそんなデカイ魚がいるなんて信じられなくない? きれいで穏やかそうにしか見えないもん」

 俺が言うと、クリス兄さんも同意してくれた。

「そうだね、そんなに怖そうには見えないかな。魚なんて、ちっちゃいのしかいなさそうだよ」

 でもその時、サム兄さんが湖を覗き込んで、「おい、ここに何かいるぞ」と言ってきた。

「え、何? 何がいるの?」

 俺たちはみんなで湖に顔を近付ける。
 次の瞬間『ザッパー!』と音がして湖の中からすごい大きな魚が現れた。

「うわあああ!」

 サム兄さんが叫ぶ。

「ほんとにいた!」
「こいつ、すごくデカイよ!」

 俺が驚いて叫ぶと、クリス兄さんも言う。
 魚は跳ねた後、またすぐ湖の中にもぐっていったけど、こんなデカさの魚が泳いでいたとかびっくりした。
 ちょっとブルーギルっぽい形をしているけど、どちらかというとブラックバスみたいな形に近い。体もブラックバスのように筋肉質で、目が細くて鋭くて、歯がギザギザだった。身体だけじゃなく背中についてるギザギザしたひれも大きくて、全体がごつごつしていた。
 色は暗くて、背中の部分が真っ黒、腹の方は青っぽい色だ。
 その魚は湖の中央あたりで、ゆっくりと泳いでいる。

「や、やっぱりいたんだ!」

 俺が驚いて呟くと、兄ズもビックリしている様子だ。

「本当にデカイ魚だな」
「こんなの見たことないよ。どうすればいいんだろう?」

 ルミィは魚を見て怖がっている。

「や、やっぱりこんな大きい魚を追い払うなんて、できないです……」

 ルミィはまた涙目になってしまった。

「だ、大丈夫だよルミィ~! なんとかするから。一緒に考えようよ!」

 俺はルミィの背中をぽんぽん叩いてなぐさめる。

「でも、でも……」

 また泣きそうになるルミィ。

「ルミィ、泣くなよ。俺も最初はびっくりしたけど、まあ多分だけどなんとかするからさ! 確かにデカイけど魚は魚だろ? 釣ったら食べれるかもしれないし。あれだけデカイならめちゃくちゃ満腹になるだろうな~」

 サム兄さんがよく分からない理屈でルミィを慰める。
 ルミィはサム兄さんの脳天気な励ましを聞いて、ちょっと笑顔になった。

「は、はい……」
「そうだよルミィ。ほら、こういう時は冷静にならないとね。魚が湖に現れたのはいつからなのかとか、何か原因に心当たりがないか聞かせてくれるかな?」

 クリス兄さんも冷静に問いかける。
 ルミィはみんなに声を掛けられてホッとしたのか、気持ちを落ち着けられた様子で喋り始めた。

「えっと……最近日照りがあったので、水不足で困らないようにって、湖の水を溜めておくためにせき止めたんです。それから、なんだかがいっぱい発生して……それから、魚が現れたと思います」
「なるほどね」

 クリス兄さんがニヤリとして言った。

「藻が発生したってことは、それでバクテリアとか小魚が増えて、えさを求めてデカイ魚が現れたのかもしれないね!」
「おおっ! なるほどな!」

 サム兄さんが、分かってるのか分かってないのかよく分からない感じで反応する。
 俺も感心して「クリス兄さん、ほんとに頭いいよね。そういうのすぐに分かっちゃうんだ。すごいな~」と言った。

「ありがとうサム兄さん、ケイン。でも、これはただの仮説だからね」

 サム兄さんだったらすぐ調子に乗りそうだけど、クリス兄さんは冷静だった。


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