上 下
448 / 468
連載

◆探索に出掛けました

しおりを挟む
 さて、上昇したはいいけど、どこに行こうかと考える。隣の席ではマサオがどこでもいいから早く行こうぜと急かしてくる。行き先を決めずに飛ぶのもいいけどどうせなら目的なり目標があった方が達成感があると思う。そしてふと思い付く。

「よし! 決めた」
『ん? やっと行き先が決まったのか? 長ぇよ』

 俺が機体を止めたまま、しばらく行き先を考えていたのを黙って待っていたマサオが呆れた感じで言ってくる。

「まあまあ、そう言わずに。絶対に楽しくなるからさ」
『まあな。ケインといれば退屈しないのは確かだからな』
「そうでしょ、そうでしょ。じゃあ、行こうか!」
『おう! で、どこに行くんだ?』
「うん、それはね……」
『お前、それはそうとう危険な気がするんだけど……』

 行き先をどこにしようかと考えていた時にふと思い付いたのは『探索』だった。単なる探索ではなく行方不明になったドローンを探そうというものだ。

 地図の作成の為に四台のドローンをセットで飛ばしていたが、そのドローン全機がいきなり消息を絶った。一台、二台なら故障かなと思うが、『信号消失ロスト』すること自体が有り得ないことなので確実に何かがあったことは明白だ。そして、出来ればその信号消失ロスト地点で出来ればドローンの回収と原因を追及したいとマサオに話すと『危険な臭い』がすると言われてしまう。

「でも、それも含めての冒険じゃないの」
『まあ、そう言われるとな……』
「それにマサオがいれば無敵なんでしょ?」
『ふふふ、ケインのクセに分かっているじゃないか』
「そりゃあね、相棒だもの」
『うん、そうだな。確かに相棒だな。最近はその相棒感も薄れてきたから心配だったが』
「え? そうだっけ?」
『……自覚はないのか。まあいいそれもいつものことだからな』
「え? 何か言った?」
『そういうところなんだよなぁ~』

 マサオが何を言っていたような気がするが、俺はタブレットに信号消失ロスト地点を表示させ、機首をゆっくりとその方向に合わせる。

「よし、方向はあった。じゃあ、行くよ」
『おう、ってか何回目の発信宣言だよ。いいから、出せよ』
「もう、ノリが悪いな」
『はいはい、いいから行こう』
「もう、じゃあ行くよ」
『おう!』

 俺はスロットルをゆっくりと引き、徐々に加速させる。

「これくらいでいいかな」
『おいおい、もうちょっと出せるだろ! お前の本気はこんなもんじゃないだろ! もっと来いよ!』
「えっと、マサオどうしたの?」
『すまない……さっき里まで来たときの加速感が忘れられなくてな』
「もしかして……気持ちよかったの?」
『ああ、もしかしたらアレが俺の求める何かに一番近かったのかもしれないと思ってな』
「あ~まだ続いていたんだソレ」
『何言ってんだ。止める訳ないだろ。まだ、ソレがなんなのかも分かってないのによ!』
「分かってないんだ……」
『おう、まだな。でも、もう少しなんだよ。何が足りないんだろうな、ホントに』
「まあ、気長に頑張って。もし、行き詰まったのならとんでもない加速感と充足感と孤独感が味わえる物をプレゼントしてあげられるかもよ」
『ん? 加速感と充足感は分かる気がするが……孤独感ってのはなんなんだ?』
「ふふふ、それはその時のお楽しみにね」
『ケイン、また顔が悪いぞ?』
「……ふぅ~もういいよ。それで」

 究極の加速感を味わいたいなら水平では限度があるから、垂直での重力からの脱出しかないよなと考える。でも、出来れば同行したくないからイク時はマサオ一人で行ってもらおうかなと考えている。とりあえずの安全対策は考えるとして、パラシュートは無理だろうな。それに真空状態での推進剤って何が使えるかも分からないし。そもそもこの世界での大気圏外ってどんなものなのかも分からない。だから、実現するにはまだまだ先のことだろう。

 そんなことを考えている内に目的地付近に来たようで自機の位置と信号消失ロスト地点の座標が重なったので、ゆっくりとスロットルを戻しその場に留まる。

「ドローンが消えたのはこの辺りなんだけど……山ばかりだね」
『そうだな。俺もこの辺は知らないな。大体、どの辺りなんだ?』
「ちょっと待ってね」

 俺はタブレットを操作して表示している地図を縮小させると大陸全体が表示された。

「ここがドワーフタウンで、ここが王都でしょ。それにここが竜人の里だよね」
『そうすると大分、上の方だな』
「う~ん、そうだね。大陸の中央辺りで極点に近い位置だね」
『また、来たのか』
「え? マサオ、何?」
『あ? 俺は何も言ってないぞ』
「あれ? でも、確かに聞こえたけど?」
『おいおい、しっかりしろよ。こんな空の上で、ここには俺とお前しかいないんだぞ。他の誰の声が聞こえるって言うんだよ』
「それもそうなんだけどさ……おかしいな」

 さっき聞こえた声は俺の勘違いだったのかなと思っていたら、急に視界が暗くなる。

「あれ? 急に暗くなったと思ったら影の中か……え? 影? いやいやいや、おかしいって!」
『ケイン、どうした?』
「マサオ、どうしよう! 影だよ! 影!」
『影がどうした? そりゃ、影に隠れるくらいあるだろうよ』
「だから、それが変なんだって!」
『だから、何が変なんだよ! 影になることくらいいくらでもあるだろうが!』
「だから、ここは何も遮る物がない雲の上なんだよ! そんなところで何が影になるっていうのさ!」
『あ~だから、それは……え? マジか!』
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。