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◆飛びました

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「やっと、来たか」
「ああ、ごめんねガンツさん」
「ふん! ホーク号を直せといいながら部品が全くなかったのにはホントにビックリしたぞ。まあ、ケインが持っていてくれたのは正直助かったがな」
「でもね、俺が部品を持っていたのはさ……広場にそのままにされていたからなんだけどね。それはどうなのかな?」
「な、何を言っているのかな、ケイン君は……」
「だからね、広場に散らかっていると思って誰かにイタズラされたりするのが心配だったからなんだけどさ。どうして、それを片付けた俺が謝らないとダメなのかなと……ふと、思ったんだけどさ。どうなのかな」
「う、う~ん、どうなんだろうなそれは……」
「そうか。ガンツさんが分からないのならしょうがない。じゃあ、アンジェさんに聞けば教えてくれるのかな」
「だ、ダメだ! それだけはダメだ!」
「じゃあ、どうするのかな?」
「ぐ、ぐぬぬ……」

 朝になりインベントリにホーク号の部品を入れっぱなしにしていたことを思い出したので、朝食を済ませてからガンツさんの元へと来てホーク号の部品をインベントリから取り出し並べた所でガンツさんにチクリと嫌味を言われてから「ん? どうして俺が謝っているんだ?」と不思議に思った。だから、ガンツさんにどういうことなのかと聞けばガンツは惚け出す。

 ならば、アンジェさんに確認するしかないかと携帯電話を取りだしたところで、ガンツさんが「ダメだ」と言う。

「親父、負けだよ。っていうか、元はと言えば親父がここの里の連中との言い合いからホーク号を解体して、携帯電話まで解体したのが始まりだろ」
「それはイーガンさんもでしょ」
「ああ、そうだな。って、ケイン君。今は止めてよ」

 里の前の広場で俺達が騒がしくしていると、里の中からワッツさんを先頭にゾロゾロと何事かと近寄ってくる。

「ケイン……と言ったな。今日はどうしたんだ?」
「今日は、ガンツさんの落とし物を届けに来ただけだから、直ぐに帰るよ。じゃあ、ガンツさん達、頑張って復元してね」
「「……」」
「ん? どうしたの?」
「本当に言い難いことなんだが……そのな……」

 ガンツさんは何か言い辛そうにしているから、どうしたのか詳しく聞いてみるとどうやらイーガンさんと二人では直すのが難しいということらしい。

「なんだ。そんなこと」
「そんなことって言うがな「だから、人が足りないんでしょ?」……あ、ま、まあ、そうかな」
「なら、そこの暇そうなワッツさん達に手伝って貰えばいいじゃない」
「「「誰が暇だ!」」」
「だって、暇そうじゃない。こんな早くから集まっているんだし」
「「「ぐぬぬ……」」」
「それにガンツさん達を焚き付けたのもワッツさん達でしょ」
「い、いや、それは……」
「そうだな、確かにな」
「ワッツがやたらと煽っていたしな」
「……」

 ワッツさんは自分達に責任はないと訴えるが、他の人達は少しずつ思い出してきたのかワッツさんが煽っていたのは覚えているらしい。

「じゃあ、決まりだね。ガンツさん主導で頑張って!」
「いや、ケイン……本気か?」
「え? 作れるでしょ? イーガンさんも勉強になるしね」
「「……」」

 部品はある。作った本人もいる。人手も足りている。でも、ガンツさんはどこか納得していない顔をしている。

「ガンツさん、何か問題でも?」
「……鬼!」
「え? ふ~ん、この提案はアンジェさんからだってのを忘れているみたいね。じゃあ、さっきのはアンジェさんに対して「ち、違うわ!」……え? なに?」
「ち、違います。止めて下さい。お願いします。この通りです。もう、顔が腫れるのはイヤなんです!」
「親父……」
「ガンツ……」

 ガンツさんはその場で膝から崩れ落ち、俺に懇願してきたのを見て可哀想に思いガンツさんに声を掛ける。

「ガンツさん、ほら立って」
「ケイン、分かってくれたんだな」
「うん、大丈夫。アンジェさんにはちゃんと一字一句違わずに報告するからさ」
「……鬼! いや、鬼の方が可愛く見えるくらいだ! この悪魔め!」
「え~そんなぁ~」
「「「褒めてないから!」」」

 携帯電話が使えないガンツさんの代わりにアンジェさんに伝えてあげるって言うのにあまり喜んで貰えなかった。

「ん~難しいねマサオ」
『俺はそう考えられるお前の性格が羨ましいよ』
「え~そうかな~」
『いや、褒めてないからな』

 とりあえずぶつくさと文句を言いながらも復元作業を始めたのでここはガンツさんの頑張りに期待して俺は帰ることにした。

『で、今日はどうするんだ?』
「そうだね。どうしようか」
『特にすることもないなら、飛ぼうぜ!』
「飛ぶ? あ、そうか。それもそうだね、うん、そうしよう」
『よし!』

 マサオの提案で今日は飛ぶことにしたので、インベントリから飛行機を取り出す。

 すると、それを見た里の人達から「うぉぉぉ~」と歓声が聞こえる。それに気付いたガンツさんも復元作業の手を止め俺の方を見ているが、すごく悔しそうだ。すると、推進器を魔導モーターからジェットエンジンに換装しているのが見た目で分かったようで俺と機体を交互に見ている。

 俺はそんなガンツさん達を横目に機体へと乗り込むと諸々のチェックを済ませてからゆっくりと機体を上昇させる。

「さ~て、どこに行こうか?」
『前に海に行ったんだろ。じゃあ、今度は山だな』
「そうだね。じゃあ、そうしようか」
『よし! じゃあ、出発だ!』
「うん、出発!」
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