上 下
444 / 468
連載

◆バラバラの部品を見つけました

しおりを挟む
「信号の位置だとこの辺なんだけどな……マサオ、何か見えない?」
『そう言われてもな~ん? んんん?』
「どうしたの?」
『ケイン、アレに見覚えないか?』
「どれ?」
『アレだよ。アレ!』
「え?」

 機体底部に付けたモニターカメラの映像をマサオが器用に前足で指すが、前足がデカすぎてどこだか分からない。しょうがないので画像を拡大しながら、マサオにどれかを確認していると『そこ!』と言われたので、俺も拡大した画像をよく見ると思わず声が出る。

「え! これって……」
『あ~やっぱりか。どうりで見覚えあると思ったよ。ガンツ、成仏してくれ』
「もう、マサオ。気が早すぎだよ」
『そうか? でも、これだけ機体がバラバラなんだぞ。悲しいけど前を向こうぜ。ケイン』
「そうだけど……」

 確かにマサオが言うように地面にはガンツさんの機体「ホーク号」がバラバラになっている。なってはいるんだけど、どこか違和感があるのでマサオの事故説は素直に受け入れられなかった。

 そんな風に軽いショックを受けながらも違和感を払拭しようと上空からバラバラの部品を眺めていると違和感の正体が分かった気がした。

「あれ? バラバラじゃない」
『は? 何言ってんだ? よく見ろよ、あんなにバラバラなんだぞ』
「だからさ、確かにバラバラなんだけど並べられているでしょ。ほら、よく見てよ」
『ん? あ! そう言われれば確かにそういう風にも見えるな』
「でしょ。これは近くで見ないと分からないよ」
『だな。よし、降りよう』
「うん」

 マサオも俺の言いたいことが分かってくれたのか、降りて調べようということになったので機体をゆっくりと降下させる。

 機体を降りてから気付いたけど、どこかからお酒の匂いがプンプンしてくる。

「マサオ、匂う?」
『ああ、こりゃ酒の匂いだな。フンフン……どうやら、あっちの方から匂ってくるな』
「そうか。じゃあ、その方向にガンツさんがいる可能性があるんだね」
『そうかもな』
「じゃあ、行く前にこれを片付けようか。このまんまじゃ小さな部品とかなくしそうだし」

 俺は機体をインベントリに収納した後に草むらに広げられたホーク号の部品もインベントリに収納する。

「よし、じゃあ行こうか」
『なんかあまり気が進まないけど、アンジェの為でもあるしな』
「だよね。アンジェさんの為に行こう」
『ああ、アンジェの為に!』

 マサオが地面に鼻を近付け匂いを辿るが、別にそんなことをしなくても「絶対にそこでしょ」とハッキリした場所が目の前にある。でも、せっかくマサオが頑張っているしな~とか思っているとマサオがキリッとした顔で「ここだな」と言ったのが俺もさっきからココしかないと思っていた場所。いわゆる門を前にしている。

「えっと、入っていいのかな?」
『門番みたいなのもいないしいいんじゃないか』
「そうだね。じゃ、遠慮なく」

 門の横の通用口みたいな小さい戸を開けて中へ入ると、そこには死屍累々といった感じでいかにもなドワーフのおじさん達が寝転がっている。

「うわぁ~ここまでは予想通りだけど……この中からガンツさんを探すの面倒だな~そうだ! マサオ、ガンツさんの匂い覚えているでしょ。ガンツさんを嗅ぎ分けてよ」
『……お前、本気で言っているのか? この俺にオジサンの匂いを嗅げと』
「そうだよ。だって俺には分からないもん」
『分からないもん……じゃねえ! なんで俺がオジサンの匂いを嗅がなきゃイケないんだよ~』
「さあ? ここには出来るのがマサオしかいないからじゃないの。ほら、さっさとやっちゃて!」
『どうしてもか……』
「うん、どうしても」
『俺がイヤだと言ってもか?』
「うん、だってマサオにしか出来ないことでしょ」
『だが、その前に見た目で分かるんじゃないのか?』
「ホントにそう思う?」
『ああ、思うぞ。思わせてくれよ!』
「でもさ、見てよこれ。同じ様な髭面に樽の様な体型で顔の殆どが髭で隠されているから特徴なんか分かりもしないじゃない。これって間違い探しのレベルだよ。だから、頑張って!」
『ぐぬぬ……仕方ないか。要はガンツが分かればいいんだよな』
「そうだね。マサオに見分けが付くなら匂いを嗅がなくてもいいんじゃない」
『……うん、ムリだな』
「じゃあ、頑張って嗅ぐしかないね」
『いや、そうじゃない』
「え? どういうこと?」
『見つけるのが困難なら、本人に申告してもらえばいいんだよ。な? 簡単なことだろ』
「ん? どういうこと?」
『だからな、こうすればいいんだよ! ワオォォォォォ~ン!』
「うわっ……急に遠吠えなんかして……あ!」
『な、簡単だろ』

 マサオに匂いを嗅いで貰ってガンツさんを探し出してもらおうかと思ったが、マサオが俺に任せろと言って遠吠えを一節かますと寝転がっていたドワーフのオジサン達が「なにごとだ!」とスクッと立ち上がった。そして、その中にまだ爆睡していたオジサン二人がいたので近付くとガンツさんとイーガンさんの二人だったので体を揺すって起こす。

「んんん? なんだアンジェよ。もう少し優しく「ガンツさん!」……ん? アンジェじゃない……えっと……」
「もう、ガンツさんってば!」
「お、ケインか。どうしたわざわざ起こしに来たのか?」
「ガンツさん、まだ寝惚けているの? ここがどこか覚えてる?」
「ここ? 何を言ってるんだ? ここは……ん? ここはどこだ?」
「ハァ~ガンツさん。アンジェさんから伝言ね」
「アンジェから?」
「うん、『帰ってきたら楽しみにしといて』だって」
「……ケイン、ワシをすぐに帰してくれ! 頼む、この通りだ!」
「ちょ、ちょっと待ってよガンツさん。その前にどうして電話が通じなかったのか、どうしてホーク号がバラバラだったのかを教えてくれるかな?」
『ケイン、また顔が悪いぞ』
「だから、こういう時は『悪い顔』だって。ほら、ガンツさん正直に言おうか? さあ!」
「怒るから言わない!」
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

天災少年はやらかしたくありません!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )
ファンタジー
旧題:チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?! 【アルファポリス様にて発売中!!】 「天災少年はやらかしたくありません!」のタイトルで2022年10月19日出荷されました! ※書籍化に伴い一部を掲載停止させて頂きます あれ?何でこうなった? 僕の目の前の標的どころか防御結界が消滅。またその先の校舎の上部が消滅。 さらにさらに遠く離れた山の山頂がゴッソリと抉れてしまっている。 あっけにとられる受験者。気絶する女の子。呆然とする教員。 ま……まわりの視線があまりにも痛すぎる…… 1人に1つの魂(加護)を3つも持ってしまった少年が、個性の強い魂に振り回されて知らず知らずの内に大災害を発生させて、更なるチートで解決していく物語です! 書籍化記念書き下ろし 天災少年はやらかしたくありません!スピンオフ Stories https://www.alphapolis.co.jp/novel/589572036/842685585 第2部『旅行中でもチート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/589572036/979266310 第3部『ダンジョンでもチート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/589572036/211266610

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている 酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。