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◆考えを放棄されました
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朝になりいつもの様に工房の自室へ入る。
「おはよう、ガンツさん」
「おう、昨日はご苦労だったな」
既に居たガンツさんに挨拶を済ませるとガンツさんが昨日の王太子達の接待を労ってくれた。だけど、俺自体はそれほど相手はしていないのでそんなに労われるほどではない。まあ、強いて言うのならとマサオをチラリと見る。
「なんだマサオが相手をしたのか?」
「したと言うよりは……無駄に張り合った……ってのが正しいのかもね。ね、マサオ」
『言うなよケイン。これでも少しは反省しているんだぞ』
マサオが反省しているのは昨日のマリー様との対決のことなんだろう。それにしてもマサオを負かすなんて、ちょっと考えたくないかも。
「そんなことより、これからの予定を決めるぞ。兄さん達を連れて来たから、ある程度の人手不足は解消出来たが……まだまだ足りないな」
「まだ足りないの?」
「ああ、そうだな。少なくとも今の倍は欲しいところだな」
「倍ってそんなに?」
「ああ、そうなるとまた攫ってくるしかないか」
「ちょっと、ガンツさん」
「ああ、攫うは違うな。まずは人手が必要なことを話してから、頭を下げてお願いして来てくれるように頼むんだったな」
「ガンツさんに出来るの?」
「ワシをバカにしているのか?」
「いや、そういう訳じゃないけどさ。どれもガンツさんには出来ないでしょ」
「まあな。確かにワシには出来ないさ」
「じゃあ、どうするの?」
「ふふふ……」
俺の問い掛けにガンツさんは無理だと答えるがニヤリとすると、ガンツさんは「ワシがするんじゃない」と言う。
「なら、細かい交渉は誰かに任せるってことなの?」
「まあ、簡単に言えばワシが現地に飛び、交渉してもらい、ケインにここと繋いでもらうってのをあちこちで繰り返すだけだ。どうだ? いい考えだろう」
「……呆れた。ガンツさんは仕事を忘れて文字通り飛んで回りたいだけじゃないの」
「……」
そう俺が指摘するとガンツさんは頭の後ろで腕を組み吹けもしない口笛を吹いてみせる。まあ、人手を増やすならガンツさんの提案が一番だよな。
「そういう訳でワシは息子達を連れて、ちょっくら人攫いに行って来る」
「ガンツさん、言い方……」
「ん? まあ、気にするな。アイツらに取ってみれば似たようなもんだろ。じゃあ、ワシは息子達を拾ってから出掛けるわ」
「うん、分かった。気を付けてね」
「おう!」
ガンツさんはそう言うと自分の太腿をパンと叩いて立ち上がり、部屋を出て行く。
「ふう、ガンツさんは行っちゃったけど、俺は何をすればいいんだろう。学校は始まったけど今のところ作業はないし、これといって作りたい物もないし……ねえ、マサオなんかないかな」
『俺に聞くなよ』
「そんなこと言わないで一緒に考えようよ」
『イヤだ! 面倒くさい!』
「え~それはちょっと冷たくないか」
『冷たくないし。それを言うなら、昨夜リーサから庇ってくれなかったケインの方が冷たいだろ!』
「え~ちゃんと庇ったから晩飯抜きから一品減らすだけになったんでしょ。そんなこと言うならもう庇わないよ」
『それは困る!』
「イヤだ。面倒だし」
『ケイン!』
「なら、一緒に考えてよ」
『……分かったよ。で、何を考えればいいんだ?』
「そうだね。マサオでも誰でもいいから何か欲しい物とか、こんなのがあったらいいなとかそういう風な感じで何かないかな」
『ん~ちょっと待ってな。考えてみるから』
マサオはそういうと床に寝そべる。
「マサオ、考えてくれるんじゃないの?」
『この姿勢が考えるのに一番いいんだよ。邪魔するなよ』
「そんなこと言って、そのまま寝るつもりなんでしょ」
『そんなことはない……スゥ……』
「言ってるそばから、もう」
まあ、昨日の疲れもあるんだろうと特にマサオを責めたり起こすようなことはしないで何を作ろうかなと考えてみる。
とりあえず今の俺の頭の中に浮かんできたのはチョコレートを使った派生食品だった。
アイスクリーム、クッキー、ケーキ……他に何があったかなと記憶を辿ってみる。ああ、そう言えばパフをチョコレートでコーティングしたのもあったな。それならナッツ系が簡単に出来そうだな。パフもいいけどポン菓子も食べたくなった。でも、そのためには機械が必要になるけど、アレってどういう仕組みだったかな。確か高圧力を掛けて……。
『ふぁ~ケイン腹減ったな』
「え? ああ、マサオ起きたんだね。でも、お腹減ったって早過ぎない?」
『そうでもないだろ。時計を見て見ろよ』
「時計……あ!」
マサオに言われ時計を見ると既に十三時を回っていた。いつの間にか数時間が経っていたようだ。
「あ~いつの間にか考え事に集中していたみたいだね。ごめんね、遅くなったけどお昼を食べに行こうか」
『おう! 俺も考えすぎて腹減ったんだよ』
「マサオは寝てただけじゃない」
『何言ってんだよ! ちゃんと考えていたぞ。もう頭の中ではあれやこれやと、もう……』
「はいはい、もういいから。何が食べたいかちゃんと考えといてね」
『そうだな。肉もいいけど、たまには魚もいいし。かと言って、それだけじゃもの足りない気もするし……』
「おはよう、ガンツさん」
「おう、昨日はご苦労だったな」
既に居たガンツさんに挨拶を済ませるとガンツさんが昨日の王太子達の接待を労ってくれた。だけど、俺自体はそれほど相手はしていないのでそんなに労われるほどではない。まあ、強いて言うのならとマサオをチラリと見る。
「なんだマサオが相手をしたのか?」
「したと言うよりは……無駄に張り合った……ってのが正しいのかもね。ね、マサオ」
『言うなよケイン。これでも少しは反省しているんだぞ』
マサオが反省しているのは昨日のマリー様との対決のことなんだろう。それにしてもマサオを負かすなんて、ちょっと考えたくないかも。
「そんなことより、これからの予定を決めるぞ。兄さん達を連れて来たから、ある程度の人手不足は解消出来たが……まだまだ足りないな」
「まだ足りないの?」
「ああ、そうだな。少なくとも今の倍は欲しいところだな」
「倍ってそんなに?」
「ああ、そうなるとまた攫ってくるしかないか」
「ちょっと、ガンツさん」
「ああ、攫うは違うな。まずは人手が必要なことを話してから、頭を下げてお願いして来てくれるように頼むんだったな」
「ガンツさんに出来るの?」
「ワシをバカにしているのか?」
「いや、そういう訳じゃないけどさ。どれもガンツさんには出来ないでしょ」
「まあな。確かにワシには出来ないさ」
「じゃあ、どうするの?」
「ふふふ……」
俺の問い掛けにガンツさんは無理だと答えるがニヤリとすると、ガンツさんは「ワシがするんじゃない」と言う。
「なら、細かい交渉は誰かに任せるってことなの?」
「まあ、簡単に言えばワシが現地に飛び、交渉してもらい、ケインにここと繋いでもらうってのをあちこちで繰り返すだけだ。どうだ? いい考えだろう」
「……呆れた。ガンツさんは仕事を忘れて文字通り飛んで回りたいだけじゃないの」
「……」
そう俺が指摘するとガンツさんは頭の後ろで腕を組み吹けもしない口笛を吹いてみせる。まあ、人手を増やすならガンツさんの提案が一番だよな。
「そういう訳でワシは息子達を連れて、ちょっくら人攫いに行って来る」
「ガンツさん、言い方……」
「ん? まあ、気にするな。アイツらに取ってみれば似たようなもんだろ。じゃあ、ワシは息子達を拾ってから出掛けるわ」
「うん、分かった。気を付けてね」
「おう!」
ガンツさんはそう言うと自分の太腿をパンと叩いて立ち上がり、部屋を出て行く。
「ふう、ガンツさんは行っちゃったけど、俺は何をすればいいんだろう。学校は始まったけど今のところ作業はないし、これといって作りたい物もないし……ねえ、マサオなんかないかな」
『俺に聞くなよ』
「そんなこと言わないで一緒に考えようよ」
『イヤだ! 面倒くさい!』
「え~それはちょっと冷たくないか」
『冷たくないし。それを言うなら、昨夜リーサから庇ってくれなかったケインの方が冷たいだろ!』
「え~ちゃんと庇ったから晩飯抜きから一品減らすだけになったんでしょ。そんなこと言うならもう庇わないよ」
『それは困る!』
「イヤだ。面倒だし」
『ケイン!』
「なら、一緒に考えてよ」
『……分かったよ。で、何を考えればいいんだ?』
「そうだね。マサオでも誰でもいいから何か欲しい物とか、こんなのがあったらいいなとかそういう風な感じで何かないかな」
『ん~ちょっと待ってな。考えてみるから』
マサオはそういうと床に寝そべる。
「マサオ、考えてくれるんじゃないの?」
『この姿勢が考えるのに一番いいんだよ。邪魔するなよ』
「そんなこと言って、そのまま寝るつもりなんでしょ」
『そんなことはない……スゥ……』
「言ってるそばから、もう」
まあ、昨日の疲れもあるんだろうと特にマサオを責めたり起こすようなことはしないで何を作ろうかなと考えてみる。
とりあえず今の俺の頭の中に浮かんできたのはチョコレートを使った派生食品だった。
アイスクリーム、クッキー、ケーキ……他に何があったかなと記憶を辿ってみる。ああ、そう言えばパフをチョコレートでコーティングしたのもあったな。それならナッツ系が簡単に出来そうだな。パフもいいけどポン菓子も食べたくなった。でも、そのためには機械が必要になるけど、アレってどういう仕組みだったかな。確か高圧力を掛けて……。
『ふぁ~ケイン腹減ったな』
「え? ああ、マサオ起きたんだね。でも、お腹減ったって早過ぎない?」
『そうでもないだろ。時計を見て見ろよ』
「時計……あ!」
マサオに言われ時計を見ると既に十三時を回っていた。いつの間にか数時間が経っていたようだ。
「あ~いつの間にか考え事に集中していたみたいだね。ごめんね、遅くなったけどお昼を食べに行こうか」
『おう! 俺も考えすぎて腹減ったんだよ』
「マサオは寝てただけじゃない」
『何言ってんだよ! ちゃんと考えていたぞ。もう頭の中ではあれやこれやと、もう……』
「はいはい、もういいから。何が食べたいかちゃんと考えといてね」
『そうだな。肉もいいけど、たまには魚もいいし。かと言って、それだけじゃもの足りない気もするし……』
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