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◆驚かれました

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昼食を終え、家から工房へと転移ゲートを繋ごうとしたら、マサオから『ケイン……』と呼ばれ母さんからも「ケイン、ちょっと待ちなさい」と呼び止められたので「何? 母さん」と振り向くと母さんは座っているマサオにもたれかかり、そのふわふわの手触りを楽しんでいる様だったが、俺が立ち止まったのに気付くと一瞬だけスッとした目付きになる。そして、ちょっと低めの声で「コレ……私の分もあるのよね?」と、確認してきた。

「え? コレって……どれのこと?」
「もう、ケイン。コレよ。コレ!」
『ケイン……助け……グェ……』

俺が少し惚けて母さんに何を言っているのかと確認すると母さんはマサオに回している腕に少しだけ力を込めたのか、マサオが苦しそうな声を出していた。

「えっと……その……」
「あるの? ないの? どっちなの?」
「……いや……あるんだけど……」
「あら、あるのならいいじゃない。それ、母さんが使ってもいいのよね?」
「それなんだけど、マサオ用に作ったものだから、人……女性が使ってもいいものかどうかまだ検証していないんだ。だから……」
『え?』
「いいわよ」
「え?」

母さんの問い掛けに対して、まだ人に使っていい物なのかどうか不安だと言ったのに母さんは『いい』と言うので驚く。

「母さん、それってどういうこと?」
「だから、その検証を私とヘレンさんでするってことよ」
「「へ?」」

どうやら、母さんは自分を実験台モルモットにしてでもマサオの様なサラサラな毛髪を手に入れたいらしい。そして、ガンツさんは「ほら見ろ」とでも言いたげにドヤ顔だ。そして、一緒に実験台モルモットに志願させられたヘレンさんも驚いている。

「ちょっと、待ってくれ。なぜワシまで付き合わねばならんのだ!」
「ヘレンさん、そう言わずにほら、ヘレンさんもマサオを触ってみなさいよ。ほら!」
「触ってみろって、マサオがちょっとふわふわしているからって……ほんとだ! なんじゃこの手触りは!」
「そうでしょ。じゃあ、ケイン。よろしくね」
「よろしくじゃ」
「え~」
「「よろしく!」」
「分かったよ。じゃあ、お風呂に入るときに使えるようにしておくから」
「ありがとうケイン」
「それでこそ、ワシの旦那になる男じゃ!」
「ならないから!」

母さんとヘレンさんをマサオから引き離し転移ゲートを工房へと繋いでから潜った先でガンツさんに「ワシが言った通りだったろ」とまたドヤ顔で言われる。

「もう、分かっていたのならちゃんと言っといてよ」
「ま、何事も経験だ。特に女性の美に対する追求心を甘く見ないことだな」
「え? それってどういうこと?」
「マサオもそうだが、今後はマギーやヘレンも衆目にさらされることになるんだぞ。そうなると、他の者も黙っていられないだろうな。まあ、そこはトミーの旦那とよく相談するんだな」
「……分かったよ」

ガンツさんの話を聞き終わったタイミングで携帯電話が鳴った。表示されている番号はセバス様からだったので、すぐに受話ボタンを押す。

「もしもしセバス様」
『ケイン様、こちらは準備が出来ましたので、お迎えを御願い致します』
「分かりました。では、しばらくお待ち下さい」
『はい。お待ちしております。では』

セバス様との通話を終えると、ガンツさんに学校に行くことを告げ、転移ゲートを校長室へと繋げる。

「こんにちは、ガンボさん」
「ケイン……来る時は「ちょっと待って!」……ん、なんじゃ」
「今日、俺が来ることは予定に入っていたでしょ」
「む……確かにそうだが、それでもここへ来る前には一言入れるのが礼儀だろ。なあ、ガンツ」
「そうか? まあ、細かえこたぁ気にするな。ハゲるぞ」
「な! ハゲるか! そもそもワシの……」
「ワシの……なんだ? もしかしてもう来たのか?」
「違うわ!」
「まあ、そう言うことにしておこう。それよりも領主達を迎えるんだろ。ガンボ、準備はいいのか?」
「ちっ……ああ、準備はいいぞ。ケイン、頼むな」
「うん、分かった。じゃあ、繋ぐね」

ガンボさんに了解を得たので転移ゲートを王都のデューク様の執務室へと繋ぐ。

「ケイン、ウッ「ケイン、親友のショーンが来たぞ。ぐっ」」
「けいんおにいさまぁ~あいたかったですぅ~」
「ケイン君。お久しぶり」
「ケイン君。今日は頼みますね。うん?」

先ずはデューク様が転移ゲートから出て来ようとしている所にショーン様が割って入り、そしてそのショーン様を押しのけ、マリー様、エリー様、アリー様と次々と出て来るが、アリー様はふわふわ仕様のマサオに視線が釘付けになる。

マリー様に抱き着かれながら、セバス様と視線を交わすとそのセバス様の奧にニコニコとしている人に気が付く。

「ケイン君、お久しぶりだね。今日は私も少しだけ見させてもらうよ」
「え?」

王太子殿下のその言葉にデューク様の方を見ると少しだけ済まなさそうにしていた。そして、まさかの王太子の登場にガンボさんや周りにいた人達も直立不動のまま驚くしかなかった。
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