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◆感謝されました

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「ただいま!」
「あら、お帰りケイン」
「おう、帰ったか! ケイン。待ってたぞ」
「ただいま、父さん。待っていたって何かあった?」
「ああ、あったとも」

家に帰るなり父さんが俺を待っていたと言い、向かいのソファへと座るように促す。

「あ~なんだ……まずは礼を言わせてくれ。ありがとうなケイン」

そう言って、父さんが俺に頭を下げる。

「ちょっと待ってよ。父さん、頭を上げてよ!」
「いや、これだけは言わせてもらう。本当にありがとうなケイン」
「いいから、分かったから頭を上げてよ!」
「そうか。だが、感謝しているのは本当だぞ」
「うん、それは分かっているから、ね」

父さんがやっと頭を上げてくれたので話を続ける。

「ケイン、本当にありがとうな」
「もう、それはいいから」
「そうだな、それもそうか」

父さんが俺に対し感謝したりないというのは十分に分かったが、ここまで喜んでもらえるとは思ってなかったので、ちょっとビックリした。

「父さんが、そこまで感謝してくれたってことはもう中は確認してくれたの?」
「ああ、したぞ。したともさ!」

父さんは新店舗の内装を思い出しながら、どれだけ凄いかを事細かに説明するが、作った当人である俺に力説されてもちょっと困るんだけどね。

「それでな「ストップ!」……なんだよ、ここからがいいところだろ」
「父さん、作った当人の俺に言ってもしょうがないでしょ」
「あ! そうか、それもそうだな。ま、それだけ感謝しているってことだ。本当にありがとうなケイン!」
「もう、いいから。あ! そうだ、父さんに上げる」
「ん?」
「はい、これ」

俺はインベントリから、ブランデーが入った酒樽とチョコレートにチーズをテーブルの上に並べる。

「ケイン、これは?」
「酒樽はブランデーだよ。蒸留酒だから、酒精が強いから飲み過ぎには気を付けてね。それとブランデーに合うおつまみとして、チーズとチョコレート」
「待て待て! チーズは分かるが、この黒っぽいちょこれーと……だったか? これはなんだ?」
「これはね「くんくん、なにか甘い匂いがする。あ! これね! ケイン、これは何?」……母さん」

父さんに説明する前にチョコレートの甘い匂いに惹かれてやって来た母さんがチョコレートについて好奇心一杯だ。

「母さん、落ち着いて! いい? 俺が言うことをよく聞いてね」
「うんうん、分かったからコレはなんなの?」
「そうだな、私も知りたい」
「私も!」
「僕も!」
「俺もだ!」
「僕も気になる」

少し興奮気味の母さんの後ろから、リーサさんにメアリー、デイヴ、サム兄さんにクリス兄さんまでが興味津々といった感じで俺の説明を待っている。

「じゃあ、説明するけど……まずは食べてみて」
「「「いいの?」」」
「だって、待てないでしょ。だから、ま「「「いただきま~す!」」」……てないよね」
「「「ナニコレ!」」」
「甘~い!」
「でも少し苦みもあるような……」
「お口の中ですぐ溶けるぅ~」
「甘い……」
「甘いな」
「うん、これは女の子が好きそうな味だね」
「……」

母さんの後に続いて、皆が口々にチョコレートを味わった感想を言い出すが、父さんだけは何も言わずに味わっていた。

皆がチョコレートを味わい、もう一つと手を伸ばそうとしたところで「ストップ!」とその手を止める。

「ケイン、なんで止めるの!」
「そうだぞ、ケイン」
「「「そうだ、そうだ!」」」
「待って! 止めたのにはちゃんと理由があるから、まずは聞いて欲しいんだ」
「「「どんな理由なの?」」」」
「えっとね……」

皆の視線が皿の上のチョコレートに釘付けになりながらも俺はチョコレートのメリット、デメリットについて説明する。

「ふ~ん、そうなのね。じゃあ、子供はある程度の制限があって、大人は自己責任ってところからしら」
「「「……」」」

子供には制限が必要と言われ、兄ズとメアリー達も少し不機嫌そうな顔になる。

「いや、母さん。ちゃんと聞いてた?」
「聞いてたわよ。食べ過ぎると太りやすいって言うんでしょ」
「いや、だからそれだけじゃなくって……」
「お義母様、肌荒れの原因にもなるということですから」
「え! そうなの? そんなの聞いてないわよ」

聞いてないってちゃんと説明したんだけどな、と思っていたが父さんを見ると、俺は関係ないとばかりにブランデーを飲みながら、チョコレートを摘まんでいる。

「母さん、大人も子供も食べ過ぎはよくないから。それにただでさえ母さんは「私が何?」……なんでもありません」
「そうよね。私は産後で少し体型が崩れているだけなんだから。もう少ししたら、私もリーサさんみたいに……」
「「「え?」」」

とりあえず、摂取量に気を付けさえすれば問題ないと皆を落ち着かせ、夕食の準備を済ませる。

「「「ごちそうさま!」」」

夕食を終えた後、話題は明日の開校式、入学式へと移る。

「それでケインは何をするんだ?」
「え? 何って特に何もしないけど?」
「ん? そうなのか?」
「そうだよ、だって俺は学校を作っただけだし」
「そうなのか? 父さんはガンボさんに招待状をもらったぞ。だから、ケインも何かするものと思っていたんだけどな」
「そうなんだ。でも、俺は特に何も聞いてないけどね」
「そうか。ところで、マサオはどうしたんだ?」
「あ!」

遊戯施設の片隅で「俺はまだ何も掴めていない……」とどこか悔しそうなマサオがいたとかいないとか。
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