上 下
403 / 468
連載

◆寂しく感じました

しおりを挟む
何か忘れているような気がさっきからしているが思い出さないのだから、それほど重要なことじゃないんだと思う。多分、そうなんだろうと思っていたところで携帯電話が鳴るので取り出してみると発信元はガンボさんだった。

「ガンボさんからなんて珍しいな。なんだろう? はい、もしもし」
『遅い!』
「え? いきなり、何? どうしたの?」
『どうしたのじゃないだろ!』
「だから、そう怒鳴られても分からないって」
『ハァ~まったくこいつは……お前、明日何があるのか分かってないのか?』
「明日……明日は何かあったかな?」
『ハァ~お前は……』

ガンボさんからの電話に出るといきなり遅いと怒鳴られるが俺にはなんのことだか分からない。俺は何を怒られているのだろうと思っていたら、ガンボさんは短く嘆息すると明日何があるのか分かっているのかと聞いてくる。そこで頭の中で明日、明日、明日は何があったかなと考えてみる。

「あ!」
『どうやら、思い出したようだな。ったく……』
「ゴメン。でも、俺っているの? 挨拶するのはガンツさんでしょ?」
『はぁ? 何を言っているんだ。お前は領主達の送迎があるだろうが!』
「あ~そうだったね~」
『だから、その領主達を迎えるに当たってだ。一応は失礼のないように式次第の確認をしておきたいんだがな』
「一応なんだ」
『ああ、一応だ。で、いつ頃来る?』
「ガンツさんはいいの?」
『アイツはいい。取り敢えずお前を抑えとかないとすぐにどこかに行ってしまうからな』
「分かったよ。それで、どこに行けばいいの?」
『学校で待っているから、いつでもいいぞ』
「分かったよ。じゃ、後で」
『ああ、絶対だぞ!』

ガンボさんに念を押されて会話を終えるとマサオと目が合う

『これからガンボに会うのか?』
「うん。でも、その前にすることを思い出した。領都の家を取り壊して新店舗を作らないとね」
『じゃあ、俺はいらないな』
「え~一緒に来ないの?」
『行かない! 俺には俺のやることがあるから!』
「え?」

背後に『キリッ』という吹き出しが浮かびそうな雰囲気でマサオがそんなことを言う。

『じゃ! そういうことだから』
「あ……」

マサオはそれだけ言うと、ササッとその場から走り去って行った。

「薄情だなぁ~まあ、いっか。こっちはこっちで先ずは家の方から済ませよう」

領都にある昔の家に転移ゲートを繋いで潜る。家の中は少しの間、いなかっただけなのに少しほこりっぽい気がする。先ずは家の回りを確認するかと玄関から外に出ると、家の回りは養生シートですっぽりと覆われていた。

先ずは家をどかすためにインベントリに収納してみると、一瞬で家が消える。

「よし! じゃあ、今度は新店舗だよね。一階はキックボードにママチャリにリヤカーにセニアカーと乗り物系を並べるでしょ。二階は魔導工具とか調理器具にエアコンとかでしょ。三階はスラレールとかの玩具系かな。四階にはシャツとかの下着関連に洋服に作業着を置いて……で、五階は倉庫と事務室と転移部屋だよね」

頭の中で纏めた図案を一フロア毎に区切って模型を作る。各階層にはエレベーターとエスカレーター、それと階段用に共通領域を用意する。

「忘れていることはないかな。あ! 更衣室と働いてくれる人用の休憩所と簡単な炊事が出来る施設に……トイレも忘れていたなぁ~でも、トイレは五階だけでいいか」

それぞれの模型を並べ、もう一度漏れがないかを確認すると頭の中で一つの建物として構築してから「えいっ!」と念じる。

すると一瞬で俺の目の前に五階建ての新店舗が現れる。新店舗の中に入り各階層を見て回ると、最上階の転移ゲート小屋とドワーフタウンの家に用意した転移ゲート小屋と接続する。

「これで、終わり……っと。じゃあ、父さんの店に行って報告かな。ね、マサオ……そうだったマサオはいなかったんだ。なんか寂しいな……うん、今は自分の用事を済ませてしまおう」

いつも横にいたマサオを思い、顔を上げると父さんの店まで魔導キックボードを走らせる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

下級兵士は断罪された追放令嬢を護送する。

やすぴこ
ファンタジー
「ジョセフィーヌ!! 貴様を断罪する!!」  王立学園で行われたプロムナード開催式の場で、公爵令嬢ジョセフィーヌは婚約者から婚約破棄と共に数々の罪を断罪される。  愛していた者からの慈悲無き宣告、親しかった者からの嫌悪、信じていた者からの侮蔑。  弁解の機会も与えられず、その場で悪名高い国外れの修道院送りが決定した。  このお話はそんな事情で王都を追放された悪役令嬢の素性を知らぬまま、修道院まで護送する下級兵士の恋物語である。 この度なろう、アルファ、カクヨムで同時完結しました。 (なろう版だけ諸事情で18話と19話が一本となっておりますが、内容は同じです) 2/7 最終章 外伝『旅する母のラプソディ』を投稿する為、完結解除しました。 2/9 『旅する母のラプソディ』完結しました。アルファポリスオンリーの外伝を近日中にアップします。

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。