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◆寂しく感じました

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何か忘れているような気がさっきからしているが思い出さないのだから、それほど重要なことじゃないんだと思う。多分、そうなんだろうと思っていたところで携帯電話が鳴るので取り出してみると発信元はガンボさんだった。

「ガンボさんからなんて珍しいな。なんだろう? はい、もしもし」
『遅い!』
「え? いきなり、何? どうしたの?」
『どうしたのじゃないだろ!』
「だから、そう怒鳴られても分からないって」
『ハァ~まったくこいつは……お前、明日何があるのか分かってないのか?』
「明日……明日は何かあったかな?」
『ハァ~お前は……』

ガンボさんからの電話に出るといきなり遅いと怒鳴られるが俺にはなんのことだか分からない。俺は何を怒られているのだろうと思っていたら、ガンボさんは短く嘆息すると明日何があるのか分かっているのかと聞いてくる。そこで頭の中で明日、明日、明日は何があったかなと考えてみる。

「あ!」
『どうやら、思い出したようだな。ったく……』
「ゴメン。でも、俺っているの? 挨拶するのはガンツさんでしょ?」
『はぁ? 何を言っているんだ。お前は領主達の送迎があるだろうが!』
「あ~そうだったね~」
『だから、その領主達を迎えるに当たってだ。一応は失礼のないように式次第の確認をしておきたいんだがな』
「一応なんだ」
『ああ、一応だ。で、いつ頃来る?』
「ガンツさんはいいの?」
『アイツはいい。取り敢えずお前を抑えとかないとすぐにどこかに行ってしまうからな』
「分かったよ。それで、どこに行けばいいの?」
『学校で待っているから、いつでもいいぞ』
「分かったよ。じゃ、後で」
『ああ、絶対だぞ!』

ガンボさんに念を押されて会話を終えるとマサオと目が合う

『これからガンボに会うのか?』
「うん。でも、その前にすることを思い出した。領都の家を取り壊して新店舗を作らないとね」
『じゃあ、俺はいらないな』
「え~一緒に来ないの?」
『行かない! 俺には俺のやることがあるから!』
「え?」

背後に『キリッ』という吹き出しが浮かびそうな雰囲気でマサオがそんなことを言う。

『じゃ! そういうことだから』
「あ……」

マサオはそれだけ言うと、ササッとその場から走り去って行った。

「薄情だなぁ~まあ、いっか。こっちはこっちで先ずは家の方から済ませよう」

領都にある昔の家に転移ゲートを繋いで潜る。家の中は少しの間、いなかっただけなのに少しほこりっぽい気がする。先ずは家の回りを確認するかと玄関から外に出ると、家の回りは養生シートですっぽりと覆われていた。

先ずは家をどかすためにインベントリに収納してみると、一瞬で家が消える。

「よし! じゃあ、今度は新店舗だよね。一階はキックボードにママチャリにリヤカーにセニアカーと乗り物系を並べるでしょ。二階は魔導工具とか調理器具にエアコンとかでしょ。三階はスラレールとかの玩具系かな。四階にはシャツとかの下着関連に洋服に作業着を置いて……で、五階は倉庫と事務室と転移部屋だよね」

頭の中で纏めた図案を一フロア毎に区切って模型を作る。各階層にはエレベーターとエスカレーター、それと階段用に共通領域を用意する。

「忘れていることはないかな。あ! 更衣室と働いてくれる人用の休憩所と簡単な炊事が出来る施設に……トイレも忘れていたなぁ~でも、トイレは五階だけでいいか」

それぞれの模型を並べ、もう一度漏れがないかを確認すると頭の中で一つの建物として構築してから「えいっ!」と念じる。

すると一瞬で俺の目の前に五階建ての新店舗が現れる。新店舗の中に入り各階層を見て回ると、最上階の転移ゲート小屋とドワーフタウンの家に用意した転移ゲート小屋と接続する。

「これで、終わり……っと。じゃあ、父さんの店に行って報告かな。ね、マサオ……そうだったマサオはいなかったんだ。なんか寂しいな……うん、今は自分の用事を済ませてしまおう」

いつも横にいたマサオを思い、顔を上げると父さんの店まで魔導キックボードを走らせる。
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