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◆鳴っちゃいました

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「じゃあ、ガンツさん達も手伝ってね」
「ああ、いいぞ。で、何をすればいいんだ?」
「ちょっと待ってね」

獣人達の集団から百メートルほど離れると俺は空港にある金属探知ゲートの様な高さ二メートル、幅一メートルほどの金属製の枠組みだけを仕上げると、それを地面に突き立てる。

「ケイン、聞いて分かるとは思えないが、一応聞いておく。コレはなんなんだ?」
「コレ? コレはねぇ……まだ、教えない」
「はぁ? なんでだ?」
「いいから。ほら、ちょっとこっちに来て。ガンツさんが潜ってみてよ」
「なんだよ。教えてくれないのに人を実験台にするつもりか?」
「いいから、まずは試してみないとさ」
「潜ったら教えろよ」
「はいはい、じゃあ潜ってね」
「ちっ……分かったよ」

ガンツさんが頭を掻きながら、俺が設置したゲートを潜ると『ピンポ~ン』と音が鳴った。

「よし、これで成功かな」
「ケイン、どういうことだ?」
「あのね……」

ガンツさんにこのゲートの機能を説明すると、ガンツさんは一言「面白い!」と言って顔のニヤつきが止まらなくなる。このままじゃ、すぐに誰かに言いそうだと思いガンツさんに強く口止めする。

「ガンツさん、分かっていると思うけどまだ誰にも言っちゃダメだからね」
「……」
「ガンツさん?」
「なんでだよ! 言うくらいいいだろ?」
「ダメだって! まだ精度もちゃんと確かめてないのにガンツさんがバラしたら、どういう結果になるか分からないでしょ」
「……ちょっとだけでも……ダメ?」
「ダメ!」
「ケチ!」
「ケチで結構! なんならガンツさんにだけず~っとケチで通してもいいんだけどね」
「それは困る!」
「じゃあ、分かってくれた?」
「……分かったよ」

ガンツさん達に手伝ってもらい準備を進める。俺が考えたのはゲートを潜った後に『ピンポ~ン』と鳴った人にはロープで二つに分けた場所の向かって右側に。『ブー』と鳴った人は向かって左側に集まってもらうようにした。

準備が出来たので、確認の為にイーガンさん達にもゲートを潜ってもらったが誰一人としてブザーが鳴ることはなく無事に潜ることが出来た。

「チッ!」
「チッってガンツさん……誰にも言わないって約束でしょ」
「分かっている。分かっているが、面白くないじゃないか!」
「もう、ここは喜ぶところじゃないの」
「そうだろうけど、それじゃ面白くないだろ」
「ハァ~もういいから、これから獣人達にゲートを潜ってもらうから、頼むよ」
「分かったよ。なら、さっさと済ませてしまおう」

ガンツさん達と獣人達の元に戻ると、これからドワーフタウンまで案内するが、その前に向こうに見えるゲートを潜って、後はイーガンさん達の案内に従ってもらうようにお願いする。

少し不安げな獣人達とぞろぞろと歩き出しゲートの前まで案内すると一人ずつゲートを潜ってもらう。最初の一人がなかなか潜らなかったので、手本として俺が通ると『ピンポ~ン』と音が鳴ったので獣人達は驚くが、何も障害がないと分かると一人二人とゲートを潜りだす。

「ここまでは順調と……」
「アイツらがそうなのか?」
「そう。やっぱり見ただけで分かるの?」
「まあな。ワシくらいの歳になれば、そのくらいは分かるさ。お! そろそろ通るぞ。どれ、ワシも手伝いに行って来るかな」

ガンツさんがゲートに近付くと、ちょうど俺がマークしていた連中のリーダー格と思われるヤツがゲートを通ると盛大に『ブー』と音が鳴る。

「ん? なんで俺だけ音が違うんだ?」
「お、その音はこっちだ。ほれ、こっちに来い」
「なんだよ爺……なんで俺はこっちなんだ?」
「心配せんでもいい。お前だけじゃないさ。『ブー』ほら、後が支えているから、ほれ」
「チッ……分かったよ」

ガンツさんに促されるようにリーダー格の男と、その後に潜った男もガンツさんに案内された先で左腕に黒色のブレスレットを着けられる。

「なんだこれ?」
「あ~気にはなるだろうが外すなよ。この後で必要になるからな」
「ちっ……面倒くせえな」
「兄貴……」
「我慢しろ。とりあえず今だけは言うこと聞いているフリだけでもしていろ」
「……分かりました」

やがて、全ての獣人達がゲートを潜り、残りはまだ腕組みをしたまま考え込んでいるパティさんだけだったので、パティさんをツンツンと突き、こっちの世界に戻ってきてもらったのを確認してから、パティさんにもゲートを潜ってもらう。

「アレを潜ればいいのか?」
「うん。大丈夫だとは思うけど念の為にね」
「ああ」

パティさんは難なくゲートを潜ったのを確認したので、俺はゲートをインベントリに収納する。

「で、これはどういうことなんだ?」
「そうだぞ! ちゃんと説明してもらおうじゃないか!」
「そうだ! そうだ!」
「ちょっと待ってね。アーロンさん呼んで来るから」
「あ、おい!」

後ろでまだ何か叫んでいるが、先ずはアーロンさんをこっちの世界に引き戻しパティさん達の元へと連れて来る。

「じゃあ、アーロンさんはパティさん達とドワーフタウンに行って説明よろしく!」
「え? ちょっと待ってケイン君……」
「待たないし、待てない。ほら、早くしないと日が暮れちゃうよ。今日の内に寝るところだけでも決めないとでしょ。ドワーフタウンで入りきらない場合は王都に連れて行くから、ドワーフタウンに残す人はドワーフタウンで働きたい人達を優先させてね」
「あ、ああ……分かったよ。じゃあ、パティ手伝ってくれ」
「おう、いいぞ。でも、どうすんだ?」
「それはね、こうするの。はい!」

俺はドワーフタウンの独身寮の近くに転移ゲートを繋ぐ。

「はい。アーロンさん、案内よろしく」
「ああ、ほらパティ。ぼさっとしてないで先導してくれよ」
「あ、ああ。皆、アーロンに着いてこの穴を潜ってくれ」

パティさんが獣人達に対し転移ゲートを潜るようにと促すが、やはり腰が引けるのか誰も一歩が出ない。

「しょうがないな。マサオ!」
『おう、任せな。ほら、何も怖くないからさっさと潜ろうぜ』
「でも……」
『何を怖がる。向こうに行けばなんでもあるんだぜ。肉もあるしお菓子だって「「「お菓子!」」」……あ、ああ。あるぞ』
「お父さん、お菓子だって!」
「お母さん!」
「「「……」」」

マサオのお菓子という単語に子供達が反応し、怖がる親の腕を引っ張り転移ゲートの向こうへと進んでいく。
マサオは俺の方に向かってドヤ顔でフフンという感じで鼻高々だ。でも、どこかムカつくので。

「お菓子はマサオの分から出すからな」
『なんでだよ!』
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