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◆呼ばれました3

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現時点に於いて、この国では車両を動かす場合にはライセンスを取得する必要があることをギーツさん達に説明する。ギーツさん達はそんな話は知らないとばかりに反論するが、掘削機を作る俺としてはライセンスがないのを知っている状態で掘削機を作成しても引き渡すことは出来ないということを説明して聞かせると、ギーツさんは憤慨する。

「ちょっと待て! すると何か。俺達はあんな山奥で人に迷惑を掛けることがないというのにライセンスなるものを取得しろ……と、そう言うのか?」
「ええ、そうです」
「なんでだよ! 俺達が使うのは誰もいない坑道の中だろ。それなのにライセンスを取れと言うのか?」
「はい」
「「え~」」

ライセンスの取得に対してギーツさんもウーガンさんも難色を示す。なので、ライセンスを取得するまでは魔道具を提供しないつもりでいることを話す。

「それは、ちょっと横暴じゃないのか?」
「そうだぞ。それに親父が作った物なら息子の俺には、そんなもの必要ないだろう!」
「え~そんなこと……言います?」
「「当たり前だ!」」
「じゃあ、この話は無かったこと「「待て!」」……にって、まだ何か?」
「そうじゃないだろ!」
「え?」
「そこは互いの妥協点を見付けてお互いに良い形で納得するべきところだろう」
「え?」
「「『え?』って言わない!」」
「でも、そもそもガンツさんは『うん』と言わないと思うよ」
「「なんでだ!」」
「なんでって、ライセンス取得の為の教習所の所長だから……とか?」
「「所長?」」
「兄さんが?」
「親父が?」

ガンツさんが教習所の所長だと伝えたところ、ギーツさんもウーガンさんも不思議そうにしている。

「それは本当なのか?」
「ええ、本当ですよ。なので諦めて教習を受けて下さい」
「教習さえ受ければ好き放題出来るのか?」
「そんな訳ないでしょ。ちゃんと規則に従ってもらいますよ」
「なら、やっぱりいらない」
「そんなこと言って、実は取得出来ないからなんでしょ?」
「「……」」

どうやら、図星だったようでギーツさん達が黙り込む。それに教わるのがガンツさんとなれば下手なことは出来ないと思っているようだ。

「別に全部が全部をガンツさんが教える訳じゃないんだから、その辺は心配しなくても大丈夫ですよ。それにそこまでガンツさんを敬遠しようとすると、逆に面白がってガンツさんが名乗りを上げるかも知れませんよ」
「……そうだな。兄さんなら有り得る」
「……親父ならそうするかもな」
「で、どうします? 今なら、俺から口添えしてガンツさんを遠ざけてもらうことも出来なくはないですけど?」
「「……」」

二人はしばらく考えた後に『お願いします』と俺に頭を下げた。まあ、頼むだけで後はどうなるかは分からないけど、これでなんとか教習所には行ってくれるだろう。

「後は、坑道に入る時に着ける防塵マスクが必要だよね」
「「防塵マスク?」」
「そう。鉱石を掘削する時に粉塵が出るでしょ。それが肺に入ると呼吸器官に支障を来すからね」
「どういうことだ?」
「俺にはサッパリ……ケイン君、もっと詳しく」
「分かりました。えっとですね……」

掘削時に発生する粉塵を吸い込むと呼吸器官である肺が冒され、咳が出やすくなったり呼吸困難になったりする場合があると説明すると、そう言えばとギーツさんが思い出した様に言うことには長年掘削している作業員には咳き込む人が多いと話す。そして、それをギーツさん達は単なる老化の影響だろうと思っていたと。

「なら、今まで単なる老化だと思っていたのは、その粉塵の影響があったと言うことか?」
「詳しい症状は分かりませんが、もし肺を患っているのなら掘削作業が原因なんでしょうね」
「なら、その『防塵マスク』があれば防げるのか?」
「全部とは言えませんが、ほぼ防げると思います」
「そうか……じゃあ、それが出来るまでは掘削作業を中断しておいた方がいいな」
「でも、それだと出荷が……」
「心配ないって。ケイン君が用意してくれる魔道具があればそんなの直ぐに取り返せるさ。なあ、ケイン君」
「そうか。なら、その間に何も気にすることなく教習所に通えるってことだ。そうなんだろケイン」
「……まあ、そうですね」

ギーツさんがこちらをニヤリと笑って見せたのに対し、なぜだか俺の方が乗せられた感が強い。なんでかな、ガンツさんと似ているからなのかな。そんなことを考えていると携帯電話が鳴り出す。見るとガンツさんからだったので、取り敢えず電話に出る。

「もしもし、ガン『遅い!』……ツさん、落ち着いて。で、何?」
『何じゃないだろ! とっととこっちに来い!』
「こっちって、どこ?」
『こっちはこっちだ! いいから、早く!』
「あ、ちょっ……ガンツさん……」

ガンツさんは自分が言いたいことだけ言うと、電話を切ってしまった。とりあえずはガンツさんの所に行かないとダメだなと携帯電話をインベントリに収納するとギーツさん達にガンツさんの所に行くと話す。

「は? 何を言ってるんだ?」
「親父のところって、親父は兄さん達と一緒にどこかに行っただろ。どこに行ったか分かるのか?」
「分かるって言うか……まあ、取り敢えず行ってみますか」
「「はぁ?」」
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