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◆限界でした
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乗降位置に車両が戻ってくると先頭に乗っていたギーツさんとウーガンさんは何故かぐったりとしている。
「どうですか? 魔道具の利便性は分かってもらえましたか?」
「「……」」
「そうですか。まだ、分かってもらえないみたいですね。それでは、念の為にもう一回どうぞ。マサオ!」
『はいよっと』
俺のお願いにマサオが素早く制御盤のスイッチを肉球でポンと押すとカウントダウンの音に続き発車のブザーが鳴る。
『ピッピッピップ~』
「えっ! ちょっと待って……」
「おい! どういうことだよ!」
「「あ~」」
二人を乗せた車両がゆっくりと動き出し、ギーツさんとウーガンさんが恨めしそうにこちらを振り返るのが目に入る。
『ちょっと、悪ふざけが過ぎるんじゃないのか?』
「いいの! あの二人には良い薬なんだから」
『まあ、お前がそう言うならそうなんだろうな』
「それでマサオは何か得ることは出来たの? さっきはもう少しとか言っていたような気がするけど……」
『あ~それな。俺的にはもう少しだと思うんだけど……どうも、その足りない何かが分からないんだよ』
「何かって?」
『だから、その何かが分からないんだって!』
「なら、もうここじゃ無理ってことじゃないの?」
『やっぱり、そうなるのか……』
マサオも薄々と、ここでの限界を感じていたのかすんなりと受け入れた。でも、マサオが得たい物、目指しているのはなんなんだろうか。単なるスピードの向こう側に行きたいのであれば、単純にジェットコースターより速い乗り物は他にもある。だが、マサオはそれを使ってまでソレを求めることはしていない。
「なあ、マサオ」
『なんだ?』
「そのマサオが求めるソレは俺に教えてくれないのか?」
『別に教えない訳じゃないが、俺もどうやって伝えればいいか分からないんだ……すまんな』
「まあ、別にいいけどね。でも、これ以上ってなるとなぁ~」
『無理か~』
「そんなにしょげるなって。その内、また新しい何かを用意するからさ」
『そうか、分かった。何か勿体無い気もするけど、今日はこれで終わりにするか……』
マサオは項垂れてしょげているが、今の段階ではまだ何も用意出来ていない。でも、まだ俺の全てを出し切った訳でもない。
「マサオ、確かに今は無い。でも、ちゃんと用意する。これは約束するからさ」
『おう、分かった。期待してるぞ』
「任せてよ!」
『まあ、それはいいが……アレは止めなくていいのか?』
「ん? アレって?」
『アレだよ……可哀想に……』
「え? あ!」
マサオが鼻先で俺の視線を誘導すると、そこにはぐったりとしているギーツさんとウーガンさんがいた。
「もう、戻っていたんだ。で、どうしますか?」
「「ひっ……」」
ジェットコースターの先頭車両に近付くとぐったりしていたギーツさんとウーガンさんは俺に気付くと何故だか怯えた表情になる。そんなに怖かったのかな?
「とりあえず、降りますか」
俺は二人の安全バーを解除すると二人は競うように車両から降りるが、腰が抜けてしまったのか這いずっている。俺はそんな二人にゆっくり近付き腰を下ろし目線を合わせる。
「それで魔道具の利便性は理解出来たと思っていいでしょうか?」
「「……」」
二人は黙ってコクコクと頷く。
「じゃあ、また部屋に戻りますね」
「「ああ……」」
ギーツさんとウーガンさん、それにマサオもついでにと転移ゲートで自室へと戻る。
「で、分かってもらえたと思いますけど、さっきみたいな車両に乗って坑道の移動と採掘した鉱石を運搬します。いいですか?」
「ああ、それはいいが……」
「まだ、何か?」
「まさか、あの速さで移動するのか?」
「え?」
「いや、だってアレを坑道に持ち込むんだろ?」
「まあ、そうですが。何もまんま持ち込むわけないでしょ。多少は調整しますよ。それにさっきみたいな速さで坑道の中を移動するなんてどんなアトラクションですか。常識を疑いますよ。ったく」
「「え~」」
まだ何か不信感で一杯のようだけど、とりあえずここはゴリ押しでやり通す。そして、二人には走る速度くらいに抑えたトロッコ列車で坑道を移動することを話す。
「「よかった~」」
「ご希望なら「「いいから、それでいいから!」」……分かりました。で、次に掘削の道具ですけど……」
「ああ、それだ! それが気になっていたんだ。今はツルハシとかシャベルを使っているが、それはどうなるんだ?」
「だから、それを今から説明するんです!」
「……ああ、悪かった。続けてくれ」
「えっと、まずは岩盤を掘る道具ですね。それはこんなのを考えています」
ギーツさん達の前で土魔法を使い掘削機の模型を作る。掘削機の操縦席となる箇所と、その前方には円錐形で回りには幾つもの突起物が着けられている。そして、手に持てる掘削用の道具として削岩機も模型で作る。
「えっと、それじゃこの掘削機なる物を使用して大まかに削り、細かい所をこの削岩機で削る……と、そういうことか」
「はい、そうです」
「それで削り出した鉱石をトロッコ列車で運び出すと……」
「ええ、トロッコ列車で上に運び出しますよ」
「そうか。ふむ、確かにこれなら今までよりも多くの鉱石を掘り出し、運ぶことが出来るな。よし、ならこれ「ちょっと待って!」……なんだ? もう、話しは終わりじゃないのか?」
「そんな訳ないでしょ。いいですか……」
俺はトロッコ列車のレールの敷設にトロッコ列車の操縦、それに掘削機を運転するためのライセンスの取得が必要であることを説明する。
「「え~聞いてないヨ!」」
「どうですか? 魔道具の利便性は分かってもらえましたか?」
「「……」」
「そうですか。まだ、分かってもらえないみたいですね。それでは、念の為にもう一回どうぞ。マサオ!」
『はいよっと』
俺のお願いにマサオが素早く制御盤のスイッチを肉球でポンと押すとカウントダウンの音に続き発車のブザーが鳴る。
『ピッピッピップ~』
「えっ! ちょっと待って……」
「おい! どういうことだよ!」
「「あ~」」
二人を乗せた車両がゆっくりと動き出し、ギーツさんとウーガンさんが恨めしそうにこちらを振り返るのが目に入る。
『ちょっと、悪ふざけが過ぎるんじゃないのか?』
「いいの! あの二人には良い薬なんだから」
『まあ、お前がそう言うならそうなんだろうな』
「それでマサオは何か得ることは出来たの? さっきはもう少しとか言っていたような気がするけど……」
『あ~それな。俺的にはもう少しだと思うんだけど……どうも、その足りない何かが分からないんだよ』
「何かって?」
『だから、その何かが分からないんだって!』
「なら、もうここじゃ無理ってことじゃないの?」
『やっぱり、そうなるのか……』
マサオも薄々と、ここでの限界を感じていたのかすんなりと受け入れた。でも、マサオが得たい物、目指しているのはなんなんだろうか。単なるスピードの向こう側に行きたいのであれば、単純にジェットコースターより速い乗り物は他にもある。だが、マサオはそれを使ってまでソレを求めることはしていない。
「なあ、マサオ」
『なんだ?』
「そのマサオが求めるソレは俺に教えてくれないのか?」
『別に教えない訳じゃないが、俺もどうやって伝えればいいか分からないんだ……すまんな』
「まあ、別にいいけどね。でも、これ以上ってなるとなぁ~」
『無理か~』
「そんなにしょげるなって。その内、また新しい何かを用意するからさ」
『そうか、分かった。何か勿体無い気もするけど、今日はこれで終わりにするか……』
マサオは項垂れてしょげているが、今の段階ではまだ何も用意出来ていない。でも、まだ俺の全てを出し切った訳でもない。
「マサオ、確かに今は無い。でも、ちゃんと用意する。これは約束するからさ」
『おう、分かった。期待してるぞ』
「任せてよ!」
『まあ、それはいいが……アレは止めなくていいのか?』
「ん? アレって?」
『アレだよ……可哀想に……』
「え? あ!」
マサオが鼻先で俺の視線を誘導すると、そこにはぐったりとしているギーツさんとウーガンさんがいた。
「もう、戻っていたんだ。で、どうしますか?」
「「ひっ……」」
ジェットコースターの先頭車両に近付くとぐったりしていたギーツさんとウーガンさんは俺に気付くと何故だか怯えた表情になる。そんなに怖かったのかな?
「とりあえず、降りますか」
俺は二人の安全バーを解除すると二人は競うように車両から降りるが、腰が抜けてしまったのか這いずっている。俺はそんな二人にゆっくり近付き腰を下ろし目線を合わせる。
「それで魔道具の利便性は理解出来たと思っていいでしょうか?」
「「……」」
二人は黙ってコクコクと頷く。
「じゃあ、また部屋に戻りますね」
「「ああ……」」
ギーツさんとウーガンさん、それにマサオもついでにと転移ゲートで自室へと戻る。
「で、分かってもらえたと思いますけど、さっきみたいな車両に乗って坑道の移動と採掘した鉱石を運搬します。いいですか?」
「ああ、それはいいが……」
「まだ、何か?」
「まさか、あの速さで移動するのか?」
「え?」
「いや、だってアレを坑道に持ち込むんだろ?」
「まあ、そうですが。何もまんま持ち込むわけないでしょ。多少は調整しますよ。それにさっきみたいな速さで坑道の中を移動するなんてどんなアトラクションですか。常識を疑いますよ。ったく」
「「え~」」
まだ何か不信感で一杯のようだけど、とりあえずここはゴリ押しでやり通す。そして、二人には走る速度くらいに抑えたトロッコ列車で坑道を移動することを話す。
「「よかった~」」
「ご希望なら「「いいから、それでいいから!」」……分かりました。で、次に掘削の道具ですけど……」
「ああ、それだ! それが気になっていたんだ。今はツルハシとかシャベルを使っているが、それはどうなるんだ?」
「だから、それを今から説明するんです!」
「……ああ、悪かった。続けてくれ」
「えっと、まずは岩盤を掘る道具ですね。それはこんなのを考えています」
ギーツさん達の前で土魔法を使い掘削機の模型を作る。掘削機の操縦席となる箇所と、その前方には円錐形で回りには幾つもの突起物が着けられている。そして、手に持てる掘削用の道具として削岩機も模型で作る。
「えっと、それじゃこの掘削機なる物を使用して大まかに削り、細かい所をこの削岩機で削る……と、そういうことか」
「はい、そうです」
「それで削り出した鉱石をトロッコ列車で運び出すと……」
「ええ、トロッコ列車で上に運び出しますよ」
「そうか。ふむ、確かにこれなら今までよりも多くの鉱石を掘り出し、運ぶことが出来るな。よし、ならこれ「ちょっと待って!」……なんだ? もう、話しは終わりじゃないのか?」
「そんな訳ないでしょ。いいですか……」
俺はトロッコ列車のレールの敷設にトロッコ列車の操縦、それに掘削機を運転するためのライセンスの取得が必要であることを説明する。
「「え~聞いてないヨ!」」
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