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◆体験してもらいました

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エレベーターでの上下移動をすっかり堪能した様子のギーツさんとウーガンさんがやっとエレベーターから降りてきたので自室へと戻り、話の続きを始める。

「魔道具の便利さは実感してもらえたと思うので話を続けたいのですが、いいですか?」
「話? 話ってなんだ?」
「叔父さん。ほら、人手が足らなくなるのなら、魔道具を使えばいいじゃない……って」
「ああ、そうだった。確かにそんな風なことを言っていたな」
「思い出した?」
「ああ。でもな~」
「なんですか?」
「いやな。確かに魔道具は便利だとは思うけど……」
「思うけど……なんです?」
「小さい」
「「小さい?」」
「ああ、だってよ。あの魔導工具を使っても小さすぎて却って手間になるんじゃないのか?」
「あ~そのことですか。なら、問題ないですよ。それよりも先ずは坑道の話を聞きたいんですけど、いいですか?」
「ああ、そのくらいならいいぞ」

ソファに座り落ち着いたところで、ギーツさん達に坑道とか採掘の仕方について質問して分かったことがある。

ギーツさん達は縦坑ではなく坑道を掘り進み採掘場所まで歩いて行き、そこで採掘した鉱石を背中に担いで帰るというやり方らしい。

「じゃあ、まずは採掘場所までの移動ですがトロッコ列車で移動すれば、採掘場所まで疲れることなく移動出来ますよね」
「……その前に、そのトロッコ列車ってのはなんだ?」
「そうだな。魔導列車ってのは見たけど……まさか、あれじゃないよな?」
「まさか。あんな大きな物を入れる訳ないでしょ。俺が言っているのは……ああ、もういいです。実際に物を見てもらった方が早いですし。じゃあ、行きましょう!」
「「へ?」」
「行きましょうって……どこへ?」
「そうだぞ。何をいきなり言い出すんだ?」
「だから、トロッコ列車が何か分からないんですよね?」
「ああ、そうだ」
「そうだな」
「だから、それを見に行こうって言ってるんですよ。ほら、行きますよ!」
「「……」」

転移ゲートをトロッコ列車……もといジェットコースターの場所まで転移ゲートを繋ぐとギーツさん達二人と一緒に潜る。

「ここは?」
「何か走っているみたいだけど……それに何か白いのが乗っているな……」
「え? ああ、まだ乗っていたんだ……しょうがないなぁ~」

少ししてマサオを乗せた車両が開始位置まで戻ってくると俺達の前で止まる。そして止まった瞬間にマサオが車両から飛び降りて運転を再開させようと制御盤に手を掛けようとするので、それを止める。

「待て!」
『え? なんだケインか。邪魔するなよ。俺は今、後一歩のところまで来ているんだからよ!』
「いいから、少し休みなよ。ずっと乗りっぱなしなんだろ」
『そういえば、そうだな。なんか思い出したら腹が減ってきた……』
「はいはい、じゃあ何か食べ物用意するから。その間、ソレ! 使わせてもらうよ」
『おお、いいぞ。それより、何を食べさせてくれるんだ?』
「ああ、ちょっと待って……確か、この辺に……ああ、コレだコレ!」
『なんだこれ?』

マサオの前にインベントリから取り出したサンドウィッチを並べる。

「どうした? 食べないの?」
『いや、食べるけど……なんかな』
「なんだよ。俺が作ったのがそんなに気に入らないのか?」
『あ~そういうことか。見た目が悪いのはそのせいか。まあ、いい。有り難くいただくよ』
「……なんかへこむな。ま、いっか」

マサオに食べ物を用意して、ギーツさん達の方に振り返るとなんだか顔が青ざめている様な気がした。

「どうしました?」
「どうしたって……今、あの犬と話していた?」
「そうだよ! なんで話せるんだよ!」
「あ! 言ってませんでしたっけ?」
「「聞いてないヨ!」」

ギーツさん達二人から叫びとも言える音量でそんなことを言われて思い出す。そう言えば、他に話せる犬なんていないんだっていうことを。

「あ~え~と、あの犬は『マサオ』と言って俺が面倒見ています。そして、話せます。以上!」
「「以上! じゃねえよ! 異常だよ!」」
「え~でも、実際喋れるんだし意思疎通が出来るんだからいいじゃないですか」
「そりゃそうだけどよ……」
「ハァ~親父はなんでこんなヤツと……」
「はい、こんなヤツですみません。で、説明したいのがトロッコ列車なんですけどね。これがまあまんまなんで、まずは乗って見て下さい」
「コレにか?」
「俺達が?」
「ええ、そうですよ。まさか、また怖いとか言い出すんですか?」

さっきの意趣返しではないが、少しだけ意地悪してみたくなり、ちょっとだけ挑発してみると、ギーツさん達はエレベーター前で見せたやり取りをすることなくすんなりと乗ってくれたので、安全バーを下ろすと緊張しないようにと話す。

「じゃあ、動かしますね。行きますよ!」

『ポン』とジェットコースターの起動スイッチを押すと、『プップップッピー』と音が鳴り車両がゆっくりと進み出す。

「お! 動いたな」
「動いたけど、叔父さん前を見てよ! 前!」
「前……え? まさか、登るのか」
「どうもそうみたいだけど……登ったら……降りるよね?」
「普通はそうだよな」
「そうだよね……」

車両は登坂が終わり頂上に辿り着くと、今度はゆっくりと下方に向かう。

「「ウオォォォ~」」

男二人の遠吠えとも思える叫び声が木霊する。
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