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◆纏めることにしました

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ガンツさんに言われマサオのことを思い出し、少しだけ気にはなるが……放っておいてもいいかな。

「それよりさ、バーツさんはお酒を造りたいんでしょ?」
「まあな」
「でも、今はこの街に住みたいと思っている……でしょ?」
「あ、ああ、そうだ。ダメなのか?」
「ダメとかはないけど、でもそれだと里でのお酒造りはどうなるの?」
「そりゃ、スーガンがなんとかするだろうよ」
「え? 僕?」

バーツさんにいきなり名指しされたスーガンさんが自分の顔を指差し驚く。

「何をそんなに驚くことがある? もう、酒造りに関しては充分に教えただろうが」
「でも、それでもいきなり一人で造れって言われても……」
「いや、別に一人じゃないだろ。周りにもいるんだし」
「……」
「バーツ兄さん、ちょっといいかな?」

そんなバーツさんとスーガンさんのやり取りを見ていたガンツさんが口を挟む。

「なんだガンツ?」
「バーツ兄さん、いきなり一人でやれと言われてもスーガンも気後れするだろうから、最初の酒造りくらいは手解きしてやってもらえないか。頼む!」
「ガンツ……」
「父さん……」
「親父……」

そう言って、ガンツさんがバーツさんに頭を下げる。そして、その様子にイーガンさん達子供も驚く。言われたバーツさんもガンツさんの様子に驚いているようだ。

「ガンツ、まさかお前がそこまでするとわな」
「バーツ兄さん、バーツ兄さんがいなくなって酒の味が変わったらどうするんだよ!」
「「「え? そこ……」」」
「なんだ?」

ガンツさんが言うことに皆が驚き、その様子にガンツさんは何がおかしいのか分からないといった様子だ。まあ、ガンツさんらしいとも言えるが、スーガンさん達子供は微妙だろうな。

「ハァ~そうだよなぁやっぱ、親父ならそうだよなぁ」
「そうだよね。僕も一瞬喜んだけど……でも、父さんの言うことも一理はあるかな」
「だよな。そこは俺もそう思う」

イーガンさん、スーガンさん、ウーガンさんもそれぞれにガンツさんの言うことに感想を言うがガッカリした様子は見受けられない。これは喜んでいいことなのかは分からないが、多分ガンツさんらしいということでいいのかな。

「なんだよ。酒の味は大事なことだろうが」
「まあ、お前の言うことも分かるが……」

バーツさんはチラリと俺の方を見る。俺に何かを期待している様な目だ。さすがにガンツさんと兄弟だけあって似ている。で、ガンツさんも同じ様に俺の方を見ているが、俺に何をしろというのだろう。

「ハァ~もう、分からないけど分かったよ」
「「お! 分かってくれたか!」」

バーツさんとガンツさんの二人が喜び俺に抱き着いてくる。

「もう、いいから離れてよ!」
「なんだよ、そんなに邪険にするなよ」
「そうだぞ。折角の抱擁なのによ」
「あのね、ガンツさんに抱き着かれてもプラスはないんだよ? 分かってる?」
「ぐっ……」
「ガハハ、ガンツよ。言われたな! ガハハ」
「バーツさん、なにを笑っているんですか。あなたも同じですよ」
「え?」
「ダァハッハ、バーツ兄さんよ。バーツ兄さんも俺のことを笑っていながら同じだな。ハハハ」
「何が同じだ! 俺はこんな……」
「こんな?」
「クソッ……違うと言いたいのに……何から何までそっくりじゃないか! クソッ!」
「あ……」

バーツさんの言葉にガンツさんも気付いた様で、二人で項垂れる。そんな二人を見て呆れているとイーガンさんが俺の方に寄ってくる。

「で、どうなの?」
「え? 何が?」
「いや、どうにかなるのかなって思ってさ」
「どうにかするには誰かが折れないとダメなんだけどね。どうしたものかな」
「もう、どうにもならないのならさ。いっそ一纏めにしちゃえばいいんじゃないか? こう纏めてギュッて」

そう言って、イーガンさんは自分の両手を組んでギュッと固める様子を見せる。

「纏めて……そうだよ、纏めればいいんだよ。ありがとう、イーガンさん!」
「おお、役に立てたか?」
「うん、バッチリだよ!」
「そうか。で、どうするんだ?」
「纏めちゃおう!」
「纏める?」
「そう、イーガンさんが言ったようにさ。ギュッとしちゃおう」
「ギュッと……でも、どうやって?」
「それはね……」

イーガンさんに聞かれたので、俺が考えていることを話してみる。すると、横で聞いていたバーツさんとガンツさんも俺の話を聞いて頷いている。

「なるほどな。酒に関しては水が変われば味も変わるだろうから、ここに醸造所を持って来ることは出来ても味を保証することは出来ない……か」
「だけど、水を今の里から持って来ることが出来れば、それを防ぐことも出来る……と。だが、どうやって水を引っ張って来るんだ?」
「ふん! 分からないのか?」
「……分からん」

ガンツさんは俺がどうやって水を引っ張ってくるのか、ある程度の予測は付いている様だが、バーツさんはまだ分からないようだ。

「ケイン、教えてやれ」
「え~そこはやってくれないの?」
「なんでワシが」
「なんだ、ガンツも分からないんじゃないか」
「んなことはない!」
「なら、説明してもらおうか? なあ、ガンツよ?」
「ぐぬぬ……」

どこか悔しそうな目で俺を見るガンツさん。

「分かりました。説明しますよ。いいですか? じゃあ、これを見て下さい」
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