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連載
◆着けちゃいました
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マサオに呆れていたら、携帯電話にガンツさんからの着信が鳴り響く。なぜ、ガンツさんからと分かったかと言えば、特定の人に対して着信音を変える方法を思いつき試した結果としか言えないけどね。
「もしもし」
『着いたぞ、転移ゲートよろしく』
それだけ言うと、ガンツさんは電話を切る。
「まあ、いいけどさ」
俺はインベントリから取り出した転移ゲートの扉を設置して、その扉を開くとガンツさんの設置した転移ゲートの扉から飛び出す。
「来たな」
「来ましたよ。えっと、ここは?」
転移ゲートの扉を開いた先にはガンツさんが腕組みをして待っていた。
「ワシの弟がいる里だ」
「それはいいけど、どの辺りなの?」
「ワシが説明するより、アレを飛ばした方が早いだろ」
「それもそうか。よっと……」
インベントリからドローンを取り出すとタブレットを操作して五百メートル上空まで飛ばす。
「さ~て、どの辺りかな……」
タブレットでドローンから送られて来た映像を見る。
「え~と、ここが多分王都だよな。それで、ここがガンツさんのいたドワーフの里で、ここがバーツさんのいた所でしょ」
表示された位置関係から見ると、ギリギリな所でザナディア王国内なのかなと思える位置だ。
「随分、遠くまで飛んだね」
場所はなんとなく分かったので、転移ゲートをスーガンさんのいる里へと繋ぎ、スーガンさんをこちらへ呼び寄せる。
「え~と、呼ばれたのはいいけどここはどこなの?」
転移ゲートから来るなり、スーガンさんがそんなことを言う。
俺はタブレットの地図を見せ、スーガンさんに説明する。
「え~もう、こんな所まで来たの? 凄いね。それで、なんでここなの?」
「ああ、ここに末っ子のウーガンがいるんだ。だろ? スーガンよ」
「うん。俺はそう聞いているけど……」
スーガンさんが言い淀む。まあ、しょうがないよね。スーガンさんの視線の先には顎が外れそうなくらいに口を開けっぱなしの里の人達がいるのだから。
今、ガンツさん達がいるのは里の入口の前だ。いつものようにホーク号を里の前に下ろしていると、その音を聞いた里の人達が何事かと出て来て、下りてくるホーク号を見て驚き何も言えなくなる。
そして、それを気にすることなくガンツさんがホーク号から転移ゲートの扉を取り出し、携帯電話で俺に話した後に、見かけは単なる扉にしか見えない転移ゲートの扉から俺が出て来たのを見れば顎が外れそうになるのもムリはないだろう。
ガンツさんはそんなことはお構いなしに転移ゲートの扉をホーク号の中に入れるとホーク号をブレスレットへと収納する。
そんなのを見せられた里の人達は更に唖然とする。すると、里の人達の中から声がする。
「親父に兄貴達、里の前で何してんだよ!」
「ん?」
「ウーガン、よかった。探す手間が省けた」
「久しぶりだね、ウーガン」
「うん、久しぶり……じゃねぇよ! だから、里の前で何やってんだよ!」
「イーガン、スーガン、こいつがウーガンなのか?」
「そうだよ親父。末っ子のウーガンだ」
「俺のことも分からなかったから、分からないよね」
「……自分の子供の顔も分からないって」
「まあ、それはスマン」
「ウーガン、それは後にして……とりあえず、話を聞いてくれないか」
「話?」
「ああ、そうだ。悪い話じゃないと思うぞ」
「それって、俺達ドワーフの理想郷に関連した話か?」
「もう、こんな所まで噂が広がっているのか」
「凄いね」
「ねえ、そんなことより早く入れてもらおうよ」
「ああ、そうだな。邪魔するぞ」
「待てよ、親父!」
里の人達で出来た人混みをかき分けガンツさんが里の中に入ろうとすると、ウーガンさんがガンツさんに待ったを掛ける。
「詳しいことはイーガンに聞いてくれ。行くぞケイン」
「えっと、いいのかな?」
「だから、待てって。大体、その子は誰なんだ? なんで親父達と一緒にいるんだ? その子は人間だよな?」
ガンツさん、イーガンさん、スーガンさんの視線が俺に集中する。
「聞きたいか?」
「聞いてもいいけど、一回聞いただけじゃ信じてくれないと思うよ」
「それもそうだな。ウーガン、スーガンの言う通り話だけじゃ信じられないと思う。まずは親父達のすることを黙って受け入れてくれ。その後に俺から話をさせてもらう」
「兄貴達がそこまで言うなんて……分かったよ。里長には俺から言っておく。親父……ん? 親父、何をやっているんだ?」
ウーガンさんがガンツさんの居たはずの場所を見ると、もうそこにはガンツさんと俺の姿はなく、すでに里の中へと入っていた。
そして、ガンツさんの前には転移ゲート小屋が既に設置されているのだ。
「ケイン、ありがとうな。じゃあ、あとはブレスレットか。ん? どうしたウーガン」
「どうしたじゃねぇ! なんだよ、これは!」
ウーガンさんが転移ゲート小屋を指差しガンツさんを問い詰める。
「なんだイーガン、まだ説明していないのか?」
「ああ、まだだよ。説明する前に親父達が暴走したからな」
「そうだよ、父さん。せめて、俺達に一言断ってからにしてよ」
「なんでだ? 結局作るんだから早いほうがいいだろ。それに現物を見た方が話が早いってもんだ。ケイン、出してくれ」
「はい、どうぞ」
インベントリから取り出したブレスレットをガンツさんに渡す。
「おう、ありがとうな。ウーガン、これを着けろ。イーガン、スーガン、一緒に行って来い」
ガンツさんがブレスレットをイーガンさんに渡すと、それをウーガンさんに差し出す。
「ああ、分かった。ウーガン、何も言わずにこれを着けてくれ」
「これを着ければいいのか?」
「そう、ウーガン。それを着けたら世界が変わるよ。ほら、早く!」
「スー兄まで……分かったよ」
ウーガンさんはイーガンさんから受け取ったブレスレットを左手に装着する。
「着けたな」
「着けちゃったね」
「え? だって兄貴達が着けろって……」
「もしもし」
『着いたぞ、転移ゲートよろしく』
それだけ言うと、ガンツさんは電話を切る。
「まあ、いいけどさ」
俺はインベントリから取り出した転移ゲートの扉を設置して、その扉を開くとガンツさんの設置した転移ゲートの扉から飛び出す。
「来たな」
「来ましたよ。えっと、ここは?」
転移ゲートの扉を開いた先にはガンツさんが腕組みをして待っていた。
「ワシの弟がいる里だ」
「それはいいけど、どの辺りなの?」
「ワシが説明するより、アレを飛ばした方が早いだろ」
「それもそうか。よっと……」
インベントリからドローンを取り出すとタブレットを操作して五百メートル上空まで飛ばす。
「さ~て、どの辺りかな……」
タブレットでドローンから送られて来た映像を見る。
「え~と、ここが多分王都だよな。それで、ここがガンツさんのいたドワーフの里で、ここがバーツさんのいた所でしょ」
表示された位置関係から見ると、ギリギリな所でザナディア王国内なのかなと思える位置だ。
「随分、遠くまで飛んだね」
場所はなんとなく分かったので、転移ゲートをスーガンさんのいる里へと繋ぎ、スーガンさんをこちらへ呼び寄せる。
「え~と、呼ばれたのはいいけどここはどこなの?」
転移ゲートから来るなり、スーガンさんがそんなことを言う。
俺はタブレットの地図を見せ、スーガンさんに説明する。
「え~もう、こんな所まで来たの? 凄いね。それで、なんでここなの?」
「ああ、ここに末っ子のウーガンがいるんだ。だろ? スーガンよ」
「うん。俺はそう聞いているけど……」
スーガンさんが言い淀む。まあ、しょうがないよね。スーガンさんの視線の先には顎が外れそうなくらいに口を開けっぱなしの里の人達がいるのだから。
今、ガンツさん達がいるのは里の入口の前だ。いつものようにホーク号を里の前に下ろしていると、その音を聞いた里の人達が何事かと出て来て、下りてくるホーク号を見て驚き何も言えなくなる。
そして、それを気にすることなくガンツさんがホーク号から転移ゲートの扉を取り出し、携帯電話で俺に話した後に、見かけは単なる扉にしか見えない転移ゲートの扉から俺が出て来たのを見れば顎が外れそうになるのもムリはないだろう。
ガンツさんはそんなことはお構いなしに転移ゲートの扉をホーク号の中に入れるとホーク号をブレスレットへと収納する。
そんなのを見せられた里の人達は更に唖然とする。すると、里の人達の中から声がする。
「親父に兄貴達、里の前で何してんだよ!」
「ん?」
「ウーガン、よかった。探す手間が省けた」
「久しぶりだね、ウーガン」
「うん、久しぶり……じゃねぇよ! だから、里の前で何やってんだよ!」
「イーガン、スーガン、こいつがウーガンなのか?」
「そうだよ親父。末っ子のウーガンだ」
「俺のことも分からなかったから、分からないよね」
「……自分の子供の顔も分からないって」
「まあ、それはスマン」
「ウーガン、それは後にして……とりあえず、話を聞いてくれないか」
「話?」
「ああ、そうだ。悪い話じゃないと思うぞ」
「それって、俺達ドワーフの理想郷に関連した話か?」
「もう、こんな所まで噂が広がっているのか」
「凄いね」
「ねえ、そんなことより早く入れてもらおうよ」
「ああ、そうだな。邪魔するぞ」
「待てよ、親父!」
里の人達で出来た人混みをかき分けガンツさんが里の中に入ろうとすると、ウーガンさんがガンツさんに待ったを掛ける。
「詳しいことはイーガンに聞いてくれ。行くぞケイン」
「えっと、いいのかな?」
「だから、待てって。大体、その子は誰なんだ? なんで親父達と一緒にいるんだ? その子は人間だよな?」
ガンツさん、イーガンさん、スーガンさんの視線が俺に集中する。
「聞きたいか?」
「聞いてもいいけど、一回聞いただけじゃ信じてくれないと思うよ」
「それもそうだな。ウーガン、スーガンの言う通り話だけじゃ信じられないと思う。まずは親父達のすることを黙って受け入れてくれ。その後に俺から話をさせてもらう」
「兄貴達がそこまで言うなんて……分かったよ。里長には俺から言っておく。親父……ん? 親父、何をやっているんだ?」
ウーガンさんがガンツさんの居たはずの場所を見ると、もうそこにはガンツさんと俺の姿はなく、すでに里の中へと入っていた。
そして、ガンツさんの前には転移ゲート小屋が既に設置されているのだ。
「ケイン、ありがとうな。じゃあ、あとはブレスレットか。ん? どうしたウーガン」
「どうしたじゃねぇ! なんだよ、これは!」
ウーガンさんが転移ゲート小屋を指差しガンツさんを問い詰める。
「なんだイーガン、まだ説明していないのか?」
「ああ、まだだよ。説明する前に親父達が暴走したからな」
「そうだよ、父さん。せめて、俺達に一言断ってからにしてよ」
「なんでだ? 結局作るんだから早いほうがいいだろ。それに現物を見た方が話が早いってもんだ。ケイン、出してくれ」
「はい、どうぞ」
インベントリから取り出したブレスレットをガンツさんに渡す。
「おう、ありがとうな。ウーガン、これを着けろ。イーガン、スーガン、一緒に行って来い」
ガンツさんがブレスレットをイーガンさんに渡すと、それをウーガンさんに差し出す。
「ああ、分かった。ウーガン、何も言わずにこれを着けてくれ」
「これを着ければいいのか?」
「そう、ウーガン。それを着けたら世界が変わるよ。ほら、早く!」
「スー兄まで……分かったよ」
ウーガンさんはイーガンさんから受け取ったブレスレットを左手に装着する。
「着けたな」
「着けちゃったね」
「え? だって兄貴達が着けろって……」
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