上 下
377 / 468
連載

◆ポポンと建てました

しおりを挟む
バナナボートだけでなく、ミニコースターでも何かを掴みかけていたというマサオをなんとか宥めて家に戻ろうとしたところで、家を用意していなかったことに気付く。
新しい家は父さんが何か考えているけど、ハッキリしないし。
「って、ことで家に帰る前に新しい家を作っちゃおう」
『ん? 家には帰らないのか?』
「帰るけど、その前に家を作っちゃう」
『作っちゃうて……オヤジさんはいいのか?』
「もう、面倒だからいいや」
『お前、それオヤジさんに言うなよ』

転移ゲートで住宅街に出ると、まずはヘレンさんの家を作る。
「え~と……えい! これでいいかな」
『なんだか自信なさげだな』
「まあ、そんなに知っている家でもないしね。こんなもんじゃないかな」
『また、適当だな』
「ほら、そんなことより俺達の家を作るよ」
『はいはい……』

アーロンさんの家の隣に用意した建設予定地に立つ。
「あら、ケイン君。今日は一人なの?」
「あ、レティさん。お久しぶりです」
「はい。お久しぶりね。それで、今日はどうしたの?」
「今日は、やっと家を建てようと思って」
「え? 今から、家を建てるの?」
「はい。すぐに済ませますから。え「待って!」い……え?」

家を建てようと思ったらレティさんから待ったが掛かる。
「ケイン君。悪いけど、ちょっと待っててくれる?」
「はい? どうしました?」
「あのね、魔法で家を建てるなんて滅多に見られないでしょ。私達もケイン君に慣れたつもりでもまだ、慣れていないの。だから、この際だから……いいかな?」
「え~と、それは俺に慣れるために家を建てるところを見たいと……そういうことですか?」
「そう。あ、ちょっと待ってね。あの子達も呼んで来るから!」
レティさんはそれだけ言うと、家に戻りキール達を呼んで来る。

「なんだよ。お袋……夕飯作っている途中なのに……ケイン? 何をしに来たんだ?」
「「ケインお兄ちゃん!」」
「もう、キール! ケイン君はお隣さんになるのに何をしに来たはないでしょ。ほら、今からケイン君が家を建てるって言うから、見せてもらうのよ。いい? ちゃんと見ておくのよ」
「「ホントに!」」
「……」

レティさんの言葉にミールとマールは久々に見られると興味津々だが、キールはどこか不貞腐れている。まあ、そんなことを気にしてもしょうがないので手っ取り早く済ませてしまうことにする。

「じゃあ、いきますね。えい!」
「「「……」」」

俺の掛け声で見覚えのある家がそこに建つ。
「ハァ~分かってはいてもやっぱり凄いわね」
「「凄い!」」
「……」
「それで、あそこに見慣れない家があるけど、アレももしかして?」
「はい。さっき建てたヘレンさんの家です」
「そうね。ヘレンさんもご近所さんになるのね」
「ちゃんとした引越は明日以降になると思いますが、これから、よろしくお願いします」
「分かりました。じゃあ、また明日ね」
「「バイバイ!」」
「……」

レティさん達に挨拶をしてから、転移ゲートで家に戻る。
「ただいま~」
「「「おかえり~」」」
「……」

皆が俺を出迎えてくれたが父さんだけが不機嫌そうにしている。
こそっと母さんに近付くと、思い当たることはありまくりだが、一応何があったのかを聞いてみる。
「もう、思い当たることはあるんでしょ」
「まあ、一応は……」
「なら、正面から怒られるなりなんなりしてきなさい。もうご飯にするからね」
「助けてはくれないの?」
「自分でしたことは自分でね」
「……はい」

渋々ながら俺のことをジッと見ている父さんの元へと近付く。
兄ズも何かを察したのか、俺と父さんだけになるようにと場所を空ける。

「父さん、ただいま……」
「……」
「あの……父さん?」
「座りなさい」
「……はい」

父さんは冷えたエールが入ったグラスを一気に飲み干すと静かにテーブルに置く。
「今日は疲れたぞ」
「……」
「なんでああなった?」
「……」
「もう少し調整出来なかったのか?」
「……え~と、ごめんなさい。色んな人に声を掛けていたのが急に決まったから」
「それにしてもだ……何人と話をしたと思っているんだ。もう、喉がカラカラになったぞ」
「ごめんなさい。じゃあ、引越しはまだ先でいい?」
「ん? なんの話だ?」
「えっと、ドワーフタウンに家を作ってきたから、明日にでも引越しかなと思っていたんだけど?」
「それは、この家の話か?」
「うん。こことヘレンさんの家も」
「何! ワシの家もか!」
「そう。引越は明日でいい?」
「ああ、いいぞ。なんなら今からでも構わんがな」
「いやいやいや、それは急過ぎるから明日ね」
「まあ、ええわ。なら、明日は頼むぞ」
「分かったよ」

「ねえ、ケイン。私達も明日引っ越した方がいいの?」
「うん。もう、レティさんにも明日越してくるからって言っちゃったし」
「あら、そうなのね。じゃあ、明日は引越しね。お父さんもそれでいいわね?」
「あ、ああ。構わないぞ。だが……」
「じゃあ、話はお終いね。はい、ご飯にしましょう」
「いや、まだ……」
「はいはい、話は終わったの。リーサさん、お願いね」
「分かった!」

『なんだかオヤジさんが気の毒に思えてきた……』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

下級兵士は断罪された追放令嬢を護送する。

やすぴこ
ファンタジー
「ジョセフィーヌ!! 貴様を断罪する!!」  王立学園で行われたプロムナード開催式の場で、公爵令嬢ジョセフィーヌは婚約者から婚約破棄と共に数々の罪を断罪される。  愛していた者からの慈悲無き宣告、親しかった者からの嫌悪、信じていた者からの侮蔑。  弁解の機会も与えられず、その場で悪名高い国外れの修道院送りが決定した。  このお話はそんな事情で王都を追放された悪役令嬢の素性を知らぬまま、修道院まで護送する下級兵士の恋物語である。 この度なろう、アルファ、カクヨムで同時完結しました。 (なろう版だけ諸事情で18話と19話が一本となっておりますが、内容は同じです) 2/7 最終章 外伝『旅する母のラプソディ』を投稿する為、完結解除しました。 2/9 『旅する母のラプソディ』完結しました。アルファポリスオンリーの外伝を近日中にアップします。

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。