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◆決定しました!
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「お父さん、このままじゃ話も出来ないから。ほら、顔を上げて」
土下座する父さんに向かって母さんが優しく話しかける。
「ほら、もう土下座はいいから、ちゃんと座って」
「すまない……」
父さんは母さんに謝りながら、ソファに座り直す。
「それで?」
「それで……って?」
「だから、さっきのお父さんの土下座の意味はなんなの?」
「やっぱり、好きな人の名前を付けようとしたとか?」
「違う! あ、すまない。でも、信じてくれ。俺はマギー意外に好きになった女性はいないんだ。本当だ。信じてくれ!」
「もう、お父さんったら……」
「マギー……」
「トミー……」
『あ~そこまでにしてくれ。本当にこういうところは親子だな。なあ、ケイン』
「俺もああなんだ……」
『いや、アレ以上だな』
「そうだな。ケインは俺達以上だな。なあ、マギー」
「ええ、そうね。私達以上ね。トミー」
「マギー……」
「トミー……」
『だから、止めろって!』
「「ごめん(なさい)」」
「だから、父さんの理由はなんなの?」
マサオが父さん達の暴走をまた止めると、サム兄さんが父さんに理由を話すように言う。
「分かった。話す。あれは俺がマギー……母さんと付き合い出した頃だ。よくデートに使っていた食堂に可愛い姉妹がいてな。いつも、俺と母さんが席に着くとなんやかやと二人で世話をやいてくれたんだ。その姉妹の名前が『ユラ』と『ミラ』だった。だから、この子達にもその名前をつけてあげたかったんだ。いつかのあの姉妹の様に仲良くなって欲しくて……本当なら今頃はあの子達も……」
「「「も?」」」
「ねえ、その子達はもう生きていないの?」
「え?」
父さんが話した『あの子達も』という言葉に、『もう生きていない』ってことなのかと父さんに尋ねると、父さんは俺に対し『何言ってるの?』と言う風にキョトンとした顔になる。
「え? なんで死んだんだ?」
「え? だって、父さんが『本当なら』って言うから……てっきり、死んだって話かと思ったんだけど違うの?」
「違う! あの後、俺は母さんと王都から駆け落ちして来たから、その姉妹のことは聞いてないんだ。だけど、死んだとも聞いてないから、どこかで元気にしているハズだよ」
「そうなんだ。もう、色々と紛らわしいことしないでよ!」
「悪かった……」
「もう、お父さんたら。でも、奇遇ね。私もあの子達のことを思い出して、その名前にしようと考えていたのよ」
「マギー、お前……」
「本当よ。ふふふ、本当に気が合うわね。私達って……」
「マギー……」
「トミー……」
『だから、ここでは止めろ! って』
マサオに言われ、二人は顔を赤らめると皆に向かって一礼をする。
「じゃあ、改めて名前を発表します。この子の名前は『ユラ』」
「この子の名前は『ミラ』に決定しました!」
「「「……」」」
突然の発表に皆は一瞬静まりかえった後、気を取り戻し『パチパチパチ』と盛大に拍手をする。
「やっと、決まったね。よろしくユラ」
「ケイン、そっちはミラよ。間違えないで!」
「え? そうなの?」
「違うぞ、母さん。そっちはユラで合っているぞ」
「え~違うわよ。お父さんこそ、間違わないで!」
「合ってる!」
「違う!」
言い合う二人を余所に俺は双子の妹に話しかける。
「ミラ!」
「きゃう」
一人が俺に笑いかける。そして、もう一人にも同じ様に話しかける。
「ユラ!」
「ひゃう」
「はい! これで決まり! 忘れない内に……」
俺は双子の足首にそれぞれの名前が彫られたアンクレットを着ける。
「ね、これでもう間違わないでしょ」
「さすが、ケインだな」
「これなら、邪魔にならないし口に入れることもないね」
双子達も機嫌良さそうにキャッキャッと笑っているが、父さんと母さんはまだ言い合っている。
『もう決まったってのにな……』
土下座する父さんに向かって母さんが優しく話しかける。
「ほら、もう土下座はいいから、ちゃんと座って」
「すまない……」
父さんは母さんに謝りながら、ソファに座り直す。
「それで?」
「それで……って?」
「だから、さっきのお父さんの土下座の意味はなんなの?」
「やっぱり、好きな人の名前を付けようとしたとか?」
「違う! あ、すまない。でも、信じてくれ。俺はマギー意外に好きになった女性はいないんだ。本当だ。信じてくれ!」
「もう、お父さんったら……」
「マギー……」
「トミー……」
『あ~そこまでにしてくれ。本当にこういうところは親子だな。なあ、ケイン』
「俺もああなんだ……」
『いや、アレ以上だな』
「そうだな。ケインは俺達以上だな。なあ、マギー」
「ええ、そうね。私達以上ね。トミー」
「マギー……」
「トミー……」
『だから、止めろって!』
「「ごめん(なさい)」」
「だから、父さんの理由はなんなの?」
マサオが父さん達の暴走をまた止めると、サム兄さんが父さんに理由を話すように言う。
「分かった。話す。あれは俺がマギー……母さんと付き合い出した頃だ。よくデートに使っていた食堂に可愛い姉妹がいてな。いつも、俺と母さんが席に着くとなんやかやと二人で世話をやいてくれたんだ。その姉妹の名前が『ユラ』と『ミラ』だった。だから、この子達にもその名前をつけてあげたかったんだ。いつかのあの姉妹の様に仲良くなって欲しくて……本当なら今頃はあの子達も……」
「「「も?」」」
「ねえ、その子達はもう生きていないの?」
「え?」
父さんが話した『あの子達も』という言葉に、『もう生きていない』ってことなのかと父さんに尋ねると、父さんは俺に対し『何言ってるの?』と言う風にキョトンとした顔になる。
「え? なんで死んだんだ?」
「え? だって、父さんが『本当なら』って言うから……てっきり、死んだって話かと思ったんだけど違うの?」
「違う! あの後、俺は母さんと王都から駆け落ちして来たから、その姉妹のことは聞いてないんだ。だけど、死んだとも聞いてないから、どこかで元気にしているハズだよ」
「そうなんだ。もう、色々と紛らわしいことしないでよ!」
「悪かった……」
「もう、お父さんたら。でも、奇遇ね。私もあの子達のことを思い出して、その名前にしようと考えていたのよ」
「マギー、お前……」
「本当よ。ふふふ、本当に気が合うわね。私達って……」
「マギー……」
「トミー……」
『だから、ここでは止めろ! って』
マサオに言われ、二人は顔を赤らめると皆に向かって一礼をする。
「じゃあ、改めて名前を発表します。この子の名前は『ユラ』」
「この子の名前は『ミラ』に決定しました!」
「「「……」」」
突然の発表に皆は一瞬静まりかえった後、気を取り戻し『パチパチパチ』と盛大に拍手をする。
「やっと、決まったね。よろしくユラ」
「ケイン、そっちはミラよ。間違えないで!」
「え? そうなの?」
「違うぞ、母さん。そっちはユラで合っているぞ」
「え~違うわよ。お父さんこそ、間違わないで!」
「合ってる!」
「違う!」
言い合う二人を余所に俺は双子の妹に話しかける。
「ミラ!」
「きゃう」
一人が俺に笑いかける。そして、もう一人にも同じ様に話しかける。
「ユラ!」
「ひゃう」
「はい! これで決まり! 忘れない内に……」
俺は双子の足首にそれぞれの名前が彫られたアンクレットを着ける。
「ね、これでもう間違わないでしょ」
「さすが、ケインだな」
「これなら、邪魔にならないし口に入れることもないね」
双子達も機嫌良さそうにキャッキャッと笑っているが、父さんと母さんはまだ言い合っている。
『もう決まったってのにな……』
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