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◆目の前に広がるのは食材でした

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脂で胸焼けになり胸を抑える視察団の人達をなんとか連れだし、クレイグさんの為にと灯台の下へ連れて行く。
「これ、ドワーフタウンの港にもあったよね。なんの為に作ったの?」
「クレイグさん、これは『灯台』っていうの。海にはなんの目印もないでしょ。それに夜になれば、何も見えなくなるくらいに暗い」
「そうだね」
「でも、この灯台があれば夜になれば、これの灯りを目印に進むことが出来るんだよ」
「それはいいね。でも、夜に船を出す場合があるのかい?」
「今の所は、通勤の為にドワーフタウンとの間を運行する予定だからね。合った方がいいでしょ。それに早朝の暗い内にも運行するかもしれないしね」
「そうか。いや、すまない。なんで作ったのかを知りたかっただけなんだ」
「いいよ、クレイグさん。それよりさ、早く下に行こうよ」
「下?」
「そう、下だよ」
俺が何故、灯台の下へ行こうと言うのか不思議そうなクレイグさんは不思議そうにするけど、知っているリーサさんはイタズラを仕掛けている子供の様に笑いを堪えているような顔をしている。
「じゃあ、これに乗って」
「ああ」
まずは俺とリーサさん、それにクレイグさんにマサオ……は、視察団の人達の監視に残ってもらう。
『なんでだよ!』
「後から、視察団の人達と一緒に来てよ」
『チッ……分かったよ』
「ごめんね」
マサオを残し、エレベーターで最下層に下りエレベーターの扉が開く。
「着いたよ」
「結構、下りた気がするけど……」
「ふふふ、どうだい。兄よ」
「……」
リーサさんが声を掛けてもクレイグさんは目の前に広がる水中パノラマに言葉も出ないみたいだ。
「リーサさん、クレイグさんは気が済むまでこのままにしておこう」
「ケイン。まあ、気持ちは私も分かるからな。しかし、ここでこれだけ満足してもらえたのなら、ドワーフタウンの海中展望台に行ったら出てこなくなるな」
「うん、そうならないように注意するよ」
「すまんな。ケイン」
「いいよ。喜んでもらえるのなら俺も嬉しいし」
「ケイン……」
「リーサさん……」
『ゴホン!』
マサオの態とらしい咳払いでリーサさんから慌てて離れると、マサオにジト目で睨まれる。
『俺を働かせといて、いいご身分だな』
「ごめん! マサオ。それで、視察団の人達は?」
『……』
マサオが無言のまま顎で先を示すとクレイグさんと同じ様に水中パノラマに夢中になっているが、若干名口元から液体が垂れている。
「ねえ、リーサさん。あれって……」
「言うなケイン。分かっている。多分、兄から色々説明された際に味も説明されたんだろう。それにしても、これを見て感動する前に『食材』としか見えないってのはどうか思うがな」
「しょうがないよ。その辺の感性は人それぞれだし。それに俺だって、そういう気持ちで見ているのもあるからね」
「ケインまで……」
「だって、味を知っていればそうなるって」
「ふむ。それは木になっている果物を見て、キレイだとか思う前に美味しそうと思う気持ちと一緒ってことか」
「そう! それ! なんだよ、リーサさんも分かってるじゃない」
「まあな。だが、私はそれほど海の魚を食べたことがないからな」
「そうなんだよね。まだ、ティーダさん達の操業も始まってないしね」
そう言って目の前に広がる水中パノラマには鯵や鰯なんかの小魚の魚群が横切っていく。そしてそれを捕食目的で追い掛けるイルカっぽい動物や大きい魚も見られる。
ここから見える魚群は殆どが今まで見たことがある銀色系が中心で、青や黄色といった南国系のトロピカルな感じの配色をした魚はいないようだ。
この辺りで獲れる魚が食卓に上るようになれば、リーサさんも見方が変わるかもしれないと思うと、自然に笑みがこぼれる。
「どうしたケイン?」
「ううん。なんでもないよ」
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