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◆海上教習をしました
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~操舵室にて~
「ガンツさん、ケインに言われて来たけど……」
「おう、ティーダか。ジョシュアのことでは苦労掛けたな。礼を言う。ありがとうな」
「いえ、それはいいんですけどね」
ティーダがどこか不服そうな顔をしていることにガンツが気付き、アルフに話しかける。
「なんかあった様子だが、察するにケインにやり込められたか?」
「ええ、その通りです。ですが、ガンツさんも関わってますよね?」
ティーダの様子をアルフに確認したガンツに対し、アルフも知っているんでしょとガンツに確認する。
「まあ、少しはな。だが、人が足りないのも事実だ。すまんが今しばらく協力してくれると助かる」
「私達もそちらの事情は分かりますし、海の上で好き勝手されるのはイヤなので吝かではないですよ。ただ、なんというかやり方というか、お願いの仕方もあるのではと思いませんか」
「それについてはワシも同罪の様なものだからな。一応は謝っておこう。この通りだ、スマン」
ガンツが頭を下げる姿を見て、ティーダもアルフも慌ててしまう。
「ガンツさん、分かりましたよ。分かりましたから、頭を上げて。ほら、前を見ないと」
「事情はよく分かりました。なので、こちらの条件としては『この大きさまでの船の操船方法を指導する指導教官を五人育成するまで』とさせて下さい。いいですね?」
「ふむ、まあ妥当だな。ケインにはワシから言っておこう」
「頼みましたよ。では、教官殿。指導をお願いします」
「「お願いします!」」
「おう、任せろ!」
アルフがガンツお願いしますと頭を下げると、その後ろでティーダとジョシュアも頭を下げる。
「それで、ガンツさん。ジョシュアは俺達が育てる指導員の一人に数えてもいいんでしょうか?」
「アルフ、本気でいいと思っているのか?」
「いいえ。残念ですが、ジョシュアが人に教えるのは無理だと思います」
「なら、あと五人か……」
「そんな、ガンツさん! ひどいです!」
「何がひどいか! あんな船外機のライセンスなら、早い奴なら半日は掛からんぞ。それも一日どころか、一週間も掛かりよって」
「でも、それは教える方に問題が……」
「「あぁ~!」」
「……いえ、なんでもないです」
ガンツにポンコツ扱いされたジョシュアがお教え方が悪いからだと、暗にティーダ達二人に責任を負わせようとするが、その二人に思いっ切り睨まれては大人しく引き下がるしかなかった。
「もうちょっと、船外機で実習させた方がよかったかもしれんな」
「「「それは勘弁です!」」」
ガンツの言葉にティーダ、アルフ、ジョシュアが反応する。
「まあ、それはいいとして、ほれ。王都の新しい港が見えて来たぞ!」
「あれがそうですか。随分と建物が増えましたね」
「建物に関してはケイン任せだからな。面白いようにぽんぽん建てるぞ」
「ケインらしいっちゃ、ケインらしいですね」
ガンツが王都の港に向けて舵を切り、岸壁のフェリー用の接岸位置に舳先を向ける。
「ここからが肝心だぞ。船外機とは違って、この船は数十倍の大きさだからな。まず重さが違う。そして、今は人しか乗せていないから、ほぼ空荷と同等だ。しかし、この船は車を運ぶことが主目的だ。その意味は分かるよな」
「ええ、重くなればなるほど、停まりにくくなるんですよね」
「そういうことだ。まあ、この船は後進することも出来るから、それがブレーキ代わりにはなる。しかしだ、いきなりブレーキを掛ければ、積み荷である車が反動で動いてしまうから、ここはこんな風に徐々に後進を掛けるんだ」
そう言って、ガンツがニュートラル状態にしていた推進器のレバーをを『後進』の方へ、徐々に倒す。
すると、岸壁に向かって進んでいたフェリーの速度が少しずつ緩やかになる。
「ここからだと前が見づらいと言うか、距離感がよく分かりませんね」
「まあな。小舟とはいろんな意味で違いすぎるからな。最初からフェリーじゃ辛いかもしれんな」
「ですが、ガンツさんもこれでぶっつけ本番だったんでしょ?」
「まあな。ワシの場合はケインもいたし。何かあれば、アイツがなんとかしてくれるっていう安心感もあるから、あまり緊張せずに操船することが出来たな」
「確かに。そういう妙な安心感は、あのケインにはありますね」
「だろ?」
アルフの言葉にガンツもニヤリと笑って見せる。
「よし、そろそろ接岸だな。後進一杯!」
もうすぐ岸壁というところで、推進器のレバーを『後進』の方へ一杯に倒し、フェリーが停まったと感じたところで、ガンツが推進器のレバーをニュートラルの位置へ戻す。
「と、ここまでが接岸時の操船だ。分かってはいると思うが、車の様に簡単には停まらない、曲がらないからな。そこのところだけ注意して欲しい」
「「「はい!」」」
「じゃあ、係留作業をケインがしていると思うから、手伝ってやってくれ」
「「「分かりました」」」
操舵室からティーダ達を見送るとガンツも操舵室を見渡し、最終確認をしてから、操舵室を出ると、ケインの元へと向かう。
「ガンツさん、ケインに言われて来たけど……」
「おう、ティーダか。ジョシュアのことでは苦労掛けたな。礼を言う。ありがとうな」
「いえ、それはいいんですけどね」
ティーダがどこか不服そうな顔をしていることにガンツが気付き、アルフに話しかける。
「なんかあった様子だが、察するにケインにやり込められたか?」
「ええ、その通りです。ですが、ガンツさんも関わってますよね?」
ティーダの様子をアルフに確認したガンツに対し、アルフも知っているんでしょとガンツに確認する。
「まあ、少しはな。だが、人が足りないのも事実だ。すまんが今しばらく協力してくれると助かる」
「私達もそちらの事情は分かりますし、海の上で好き勝手されるのはイヤなので吝かではないですよ。ただ、なんというかやり方というか、お願いの仕方もあるのではと思いませんか」
「それについてはワシも同罪の様なものだからな。一応は謝っておこう。この通りだ、スマン」
ガンツが頭を下げる姿を見て、ティーダもアルフも慌ててしまう。
「ガンツさん、分かりましたよ。分かりましたから、頭を上げて。ほら、前を見ないと」
「事情はよく分かりました。なので、こちらの条件としては『この大きさまでの船の操船方法を指導する指導教官を五人育成するまで』とさせて下さい。いいですね?」
「ふむ、まあ妥当だな。ケインにはワシから言っておこう」
「頼みましたよ。では、教官殿。指導をお願いします」
「「お願いします!」」
「おう、任せろ!」
アルフがガンツお願いしますと頭を下げると、その後ろでティーダとジョシュアも頭を下げる。
「それで、ガンツさん。ジョシュアは俺達が育てる指導員の一人に数えてもいいんでしょうか?」
「アルフ、本気でいいと思っているのか?」
「いいえ。残念ですが、ジョシュアが人に教えるのは無理だと思います」
「なら、あと五人か……」
「そんな、ガンツさん! ひどいです!」
「何がひどいか! あんな船外機のライセンスなら、早い奴なら半日は掛からんぞ。それも一日どころか、一週間も掛かりよって」
「でも、それは教える方に問題が……」
「「あぁ~!」」
「……いえ、なんでもないです」
ガンツにポンコツ扱いされたジョシュアがお教え方が悪いからだと、暗にティーダ達二人に責任を負わせようとするが、その二人に思いっ切り睨まれては大人しく引き下がるしかなかった。
「もうちょっと、船外機で実習させた方がよかったかもしれんな」
「「「それは勘弁です!」」」
ガンツの言葉にティーダ、アルフ、ジョシュアが反応する。
「まあ、それはいいとして、ほれ。王都の新しい港が見えて来たぞ!」
「あれがそうですか。随分と建物が増えましたね」
「建物に関してはケイン任せだからな。面白いようにぽんぽん建てるぞ」
「ケインらしいっちゃ、ケインらしいですね」
ガンツが王都の港に向けて舵を切り、岸壁のフェリー用の接岸位置に舳先を向ける。
「ここからが肝心だぞ。船外機とは違って、この船は数十倍の大きさだからな。まず重さが違う。そして、今は人しか乗せていないから、ほぼ空荷と同等だ。しかし、この船は車を運ぶことが主目的だ。その意味は分かるよな」
「ええ、重くなればなるほど、停まりにくくなるんですよね」
「そういうことだ。まあ、この船は後進することも出来るから、それがブレーキ代わりにはなる。しかしだ、いきなりブレーキを掛ければ、積み荷である車が反動で動いてしまうから、ここはこんな風に徐々に後進を掛けるんだ」
そう言って、ガンツがニュートラル状態にしていた推進器のレバーをを『後進』の方へ、徐々に倒す。
すると、岸壁に向かって進んでいたフェリーの速度が少しずつ緩やかになる。
「ここからだと前が見づらいと言うか、距離感がよく分かりませんね」
「まあな。小舟とはいろんな意味で違いすぎるからな。最初からフェリーじゃ辛いかもしれんな」
「ですが、ガンツさんもこれでぶっつけ本番だったんでしょ?」
「まあな。ワシの場合はケインもいたし。何かあれば、アイツがなんとかしてくれるっていう安心感もあるから、あまり緊張せずに操船することが出来たな」
「確かに。そういう妙な安心感は、あのケインにはありますね」
「だろ?」
アルフの言葉にガンツもニヤリと笑って見せる。
「よし、そろそろ接岸だな。後進一杯!」
もうすぐ岸壁というところで、推進器のレバーを『後進』の方へ一杯に倒し、フェリーが停まったと感じたところで、ガンツが推進器のレバーをニュートラルの位置へ戻す。
「と、ここまでが接岸時の操船だ。分かってはいると思うが、車の様に簡単には停まらない、曲がらないからな。そこのところだけ注意して欲しい」
「「「はい!」」」
「じゃあ、係留作業をケインがしていると思うから、手伝ってやってくれ」
「「「分かりました」」」
操舵室からティーダ達を見送るとガンツも操舵室を見渡し、最終確認をしてから、操舵室を出ると、ケインの元へと向かう。
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