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◆疲れました

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「ふふふ、悪かったね。別に意地悪するつもりはないんだ。でも、君がこの屋敷に突然現れたことも秘密の一つなんだろう?」
「……」
王太子殿下にジッと見られ、どうしていいか分からなくなり、今話すと色んなことを話してしまいそうな気がしたので黙っていると王太子殿下に言われる。
「沈黙は肯定と受け取るよ」
「殿下、その辺りでご勘弁願えないでしょうか。これ以上の追求をされると、ケインはこの国から出て行くことになるでしょう」
王太子殿下からの追求をどうやって交わそうかと考えて黙り込んでいたのが却って裏目に出たようで、王太子殿下の好奇心をかき立ててしまったようだ。
デューク様が割って入り、王太子殿下にこれ以上追求をすると俺が国外へでるかもしれないと危惧していることも話すが、それも逆効果になったようだ。
「それは困ったね。私は俄然、君に興味を惹かれる。この好奇心をどうやって抑えたらいいと思う?」
王太子殿下が俺を面白そうに一挙手一投足を見逃さないようにジッと見詰める。
「殿下、お願いですから。その辺りでご勘弁願えないでしょうか」
「なぜだ? 私はケインのことをもっと知りたいのだ」
「ですから、その気持ちは分かりますが、今は抑えて下さい」
「旦那様、ではマイクロバスを確認して頂くのはどうでしょうか」
「セバス、ああそうだな。では殿下。こちらへ」
「分かった。ケイン、残念だが今日はここまでのようだ。すまなかったな」
「……いえ、こちらこそご注文ありがとうございました」
「ああ、よろしく頼むな。そうだ! ケイン、君の携帯電話の番号を教えてくれ」
「殿下!」
「シャルディーア伯、固いな。携帯電話で話すぐらいはいいだろ。ちゃんと回りに人がいない時にするからさ」
「本当に頼みますよ、殿下」
「ああ、分かった分かった。では、ケインよ。教えてくれるか」
「分かりました。俺の番号は……」
俺の携帯電話の番号を書いたメモを王太子殿下に渡すと、王太子殿下はデューク様達とマイクロバスの見学へと向かう。

「ふぅ~ケインよ。色々と危うかったな」
「ガンツさん。やっぱり国を背負っている人は違うね。もう、何を言っても裏取りがされているようで下手に誤魔化せないから言葉に詰まっちゃった」
緊張から解放されたからか急に喉の渇きを感じて、目の前に置かれていたグラスの中の水を飲み干す。
「ワシも冷えたエールでも飲みたいところだがな。これで我慢するか」
ガンツさんも同じだったようでテーブルの上のグラスを掴むと、その中の水を飲み干す。
「ケイン君、大変だったわね。私も見ていてドキドキしちゃったわよ。このままケイン君がどっか行っちゃうのかと思ったわ」
「ケイン君はどこにも行かないわよね?」
「ケインおにいさまは外国にいかれるんですか?」
「ケインよ。何故、お前ばかりがモテる?」
アリー様、エリー様とマリー様に、この国から出て行くのかと心配され、ショーン様からは妙な敵意を向けられてしまう。
「ショーン、あなたがモテないのは全く別のことよ。ケイン君には関係ないわ」
「ショーン、殿下のご令嬢の前に片付けないといけないことがあるんじゃないの?」
「おにいさまはモテないんですか?」
「うっ……これもケイン、お前のせいだ!」
「ショーン、いい加減になさい! ごめんね。ケイン君」
「いえ、別に気にしていませんから」
ケインの言葉にショーンの顔が少しだけ引き攣る。
「ケイン、そろそろお暇しよう」
「うん、そうだね。ではアリー様、俺達はこれで失礼しますね」
「そう、デュークには私から言っておくわ。今日はだまし討ちみたいなことをしてごめんなさいね。でも、あの人も随分悩んだのよ。許してあげてね」
アリー様が俺とガンツさんに頭を下げる。
「アリー様、顔を上げて下さい。俺も多少は大人の事情については分かるつもりです。でも、今後はないと願いたいです」
「本当にごめんなさい」
「アリー様、お腹に障りますから……」
「大丈夫よ。でも、ありがとう」
「では、失礼しますね」
転移ゲートをドワーフタウンの工房へと繋ぐとアリー様達に挨拶をしてから転移ゲートを潜る。

工房に戻り、自室のソファにドカッと座る。ガンツさんも同じ様に俺の向かいのソファにドスッと座る。
「「疲れた~」」
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