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◆掴まれました
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「食事の用意が出来ました」
セバス様がメイドの一人から連絡を受けた後に俺達に告げる。
「そうか、わかった。では、殿下、食堂の方へお願いします」
「ああ、分かった」
「ケイン様もどうぞ」
「分かりました」
「帰りたい……」
王太子殿下を先頭に食堂へと向かう。
主席にデューク様と王太子殿下、横にアリー様、エリー様、ショーン様、マリー様とデューク様のご家族が並んで座り、エリー様とマリー様が俺に気付き小さく手を振ってくるので俺も手を振って返す。
「ケイン、余計なことしとらんで早く座ってくれ」
「ガンツさん」
デューク様も俺を見ながら小さく咳払いをする。そして、エリー様とマリー様は小さく舌を出していた。
ショーン様は……まあ、いいか。
俺達の前に食事が配膳されるのを見て、ガンツさんが驚き俺にコソッと聞いてくる。
「ケイン、これ王太子殿下に食べさせてもいいのか?」
「デューク様とセバス様の判断だしいいんじゃないの」
「でもよぉ」
「いいから。早く食べて帰ろうよ」
「それもそうだな」
俺達の前に配膳されたそれは、ハンバーグに唐揚げ、そしてコロッケだった。
確かにこのメニューなら不敬と言われてもしょうがないと思うけど、ここは日本じゃないし、あの王太子殿下の嬉しそうな顔を見る限り、リクエストしたのはこの人で間違いないだろう。
「これが最近、城下で流行りだした料理か。無理を言って済まなかったな。シャルディーア伯よ」
「いえ、それほどでも」
「しかし、美味しそうだな。それにこれを作り出したのもそこのケインの母だと聞いている」
「ぶっ!」
「うわっケイン、汚いな」
「ごめん、ガンツさん」
「どうした? ケイン」
王太子殿下が『してやったり』とした顔で俺を見る。
どこまで情報が漏れているのか分からないけど、多分詳細は掴めてないけど外郭はなんとなく捕らえられているんだろうな。とりあえず、直接話すのはダメだったよなと思い無言になる。
「……」
「どうした、ケイン?」
「ケイン、殿下が聞いているんだ。答えてくれ」
「デューク様、俺平民ですよ。そんな俺が王太子殿下と直接話してもいいんでしょうか?」
「あ……ああ、そうだったな」
「ぷっ……ふふふ、あははは。ケイン、君は不敬罪とかを気にしながらもシャルディーア伯とは普通に話しているのに私を仲間外れにするのかい?」
「……デューク様」
「ケイン、ここはシャルディーア伯の屋敷だ。それに公の場でもない。だから、私は君を不敬罪に問うことはない。なあ、頼むから私と話をしてくれないか」
「あとで、ナシとか言わないですか?」
「お! やっと話してくれたね。もちろん、そんなことはしない。ここにいる皆が証人だ。ほら、これでいいだろう」
王太子殿下はそう言って、俺に対し普通に話すように要求してくるので、俺も折れることにした。
「分かりました」
「ふふふ、これでやっと直接聞けるな」
王太子殿下がニヤリと笑って俺を見る。
「で、先程の話だが、これらの料理はケインの母が作り出した物で間違いはないか?」
「はい……そうです」
「うむ。そうかそうか」
聞きたかったことが聞けたようで満足そうに頷くと王太子殿下は残りの料理を口に頬張る。
そんな王太子殿下を一瞥し、デューク様をチラ見すると俺に向かって口パクで『すまん』と言うだけだった。
隣のガンツさんはこんなところに一秒でもいたくないようで勢いよく食事を掻き込んでいる。
「ガンツさん、ズルいよ」
「何がズルいだ。ワシはこんな所から早く出たいんだ!」
「でも、たしかこういう時って位が高い人より早く出るのは不敬扱いされたと思うよ」
「ぐっ……」
俺の言葉にガンツさんが食事を喉に詰まらせ、慌ててコップの水を飲む。
「そういうことは早く言え。ワシの努力が水の泡だ……」
「知らなかったの?」
「ふん! 自慢じゃないが、お前と一緒に仕出かすまでは平民以外と直接会ったこともないからな」
「確かに自慢にはならないね」
ガンツさんとそんなやり取りをしていると「ふふっ」と笑い声が聞こえる。
声のした方を見ると、王太子殿下がナプキンで口を拭きながら俺達を見て笑っていた。
「シャルディーア伯よ。本当にこの二人が我が国を騒がしている張本人なのか」
「はい。間違いなく」
ちょっとまって『騒がしている』ってどういうこと?
俺は小さく手を上げると、王太子殿下が俺に気付き声を掛けてくれる。
「どうした、ケイン」
「あの、先程『国を騒がしている』と仰ってましたが、それはどういう意味でしょう?」
「……それは本気で分からないと聞いているのかい?」
「はい。俺……私自身はそういう風にならないようにデューク様に色々とお願いしていたので」
「うん、そうだね。お陰で君達に会うまでシャルディーア伯を説得するのに時間が掛かってしまったよ。シャルディーア伯にも無理を言ってしまったね」
「いえ……」
「それで、ケイン。君が言うように確かにシャルディーア伯は父である王に警告はした。したが、父はそれを断った。それからあとは、ケインも知っていると思うがいろんな貴族や商人に他国の貴族までひどい目に合ったからね」
「はぁ」
「それにシャルディーア伯に話を聞いたところ騒動の原因になった魔道具は君が作ったそうだね」
俺の心臓が『ギュッ』と誰かに掴まれる。
セバス様がメイドの一人から連絡を受けた後に俺達に告げる。
「そうか、わかった。では、殿下、食堂の方へお願いします」
「ああ、分かった」
「ケイン様もどうぞ」
「分かりました」
「帰りたい……」
王太子殿下を先頭に食堂へと向かう。
主席にデューク様と王太子殿下、横にアリー様、エリー様、ショーン様、マリー様とデューク様のご家族が並んで座り、エリー様とマリー様が俺に気付き小さく手を振ってくるので俺も手を振って返す。
「ケイン、余計なことしとらんで早く座ってくれ」
「ガンツさん」
デューク様も俺を見ながら小さく咳払いをする。そして、エリー様とマリー様は小さく舌を出していた。
ショーン様は……まあ、いいか。
俺達の前に食事が配膳されるのを見て、ガンツさんが驚き俺にコソッと聞いてくる。
「ケイン、これ王太子殿下に食べさせてもいいのか?」
「デューク様とセバス様の判断だしいいんじゃないの」
「でもよぉ」
「いいから。早く食べて帰ろうよ」
「それもそうだな」
俺達の前に配膳されたそれは、ハンバーグに唐揚げ、そしてコロッケだった。
確かにこのメニューなら不敬と言われてもしょうがないと思うけど、ここは日本じゃないし、あの王太子殿下の嬉しそうな顔を見る限り、リクエストしたのはこの人で間違いないだろう。
「これが最近、城下で流行りだした料理か。無理を言って済まなかったな。シャルディーア伯よ」
「いえ、それほどでも」
「しかし、美味しそうだな。それにこれを作り出したのもそこのケインの母だと聞いている」
「ぶっ!」
「うわっケイン、汚いな」
「ごめん、ガンツさん」
「どうした? ケイン」
王太子殿下が『してやったり』とした顔で俺を見る。
どこまで情報が漏れているのか分からないけど、多分詳細は掴めてないけど外郭はなんとなく捕らえられているんだろうな。とりあえず、直接話すのはダメだったよなと思い無言になる。
「……」
「どうした、ケイン?」
「ケイン、殿下が聞いているんだ。答えてくれ」
「デューク様、俺平民ですよ。そんな俺が王太子殿下と直接話してもいいんでしょうか?」
「あ……ああ、そうだったな」
「ぷっ……ふふふ、あははは。ケイン、君は不敬罪とかを気にしながらもシャルディーア伯とは普通に話しているのに私を仲間外れにするのかい?」
「……デューク様」
「ケイン、ここはシャルディーア伯の屋敷だ。それに公の場でもない。だから、私は君を不敬罪に問うことはない。なあ、頼むから私と話をしてくれないか」
「あとで、ナシとか言わないですか?」
「お! やっと話してくれたね。もちろん、そんなことはしない。ここにいる皆が証人だ。ほら、これでいいだろう」
王太子殿下はそう言って、俺に対し普通に話すように要求してくるので、俺も折れることにした。
「分かりました」
「ふふふ、これでやっと直接聞けるな」
王太子殿下がニヤリと笑って俺を見る。
「で、先程の話だが、これらの料理はケインの母が作り出した物で間違いはないか?」
「はい……そうです」
「うむ。そうかそうか」
聞きたかったことが聞けたようで満足そうに頷くと王太子殿下は残りの料理を口に頬張る。
そんな王太子殿下を一瞥し、デューク様をチラ見すると俺に向かって口パクで『すまん』と言うだけだった。
隣のガンツさんはこんなところに一秒でもいたくないようで勢いよく食事を掻き込んでいる。
「ガンツさん、ズルいよ」
「何がズルいだ。ワシはこんな所から早く出たいんだ!」
「でも、たしかこういう時って位が高い人より早く出るのは不敬扱いされたと思うよ」
「ぐっ……」
俺の言葉にガンツさんが食事を喉に詰まらせ、慌ててコップの水を飲む。
「そういうことは早く言え。ワシの努力が水の泡だ……」
「知らなかったの?」
「ふん! 自慢じゃないが、お前と一緒に仕出かすまでは平民以外と直接会ったこともないからな」
「確かに自慢にはならないね」
ガンツさんとそんなやり取りをしていると「ふふっ」と笑い声が聞こえる。
声のした方を見ると、王太子殿下がナプキンで口を拭きながら俺達を見て笑っていた。
「シャルディーア伯よ。本当にこの二人が我が国を騒がしている張本人なのか」
「はい。間違いなく」
ちょっとまって『騒がしている』ってどういうこと?
俺は小さく手を上げると、王太子殿下が俺に気付き声を掛けてくれる。
「どうした、ケイン」
「あの、先程『国を騒がしている』と仰ってましたが、それはどういう意味でしょう?」
「……それは本気で分からないと聞いているのかい?」
「はい。俺……私自身はそういう風にならないようにデューク様に色々とお願いしていたので」
「うん、そうだね。お陰で君達に会うまでシャルディーア伯を説得するのに時間が掛かってしまったよ。シャルディーア伯にも無理を言ってしまったね」
「いえ……」
「それで、ケイン。君が言うように確かにシャルディーア伯は父である王に警告はした。したが、父はそれを断った。それからあとは、ケインも知っていると思うがいろんな貴族や商人に他国の貴族までひどい目に合ったからね」
「はぁ」
「それにシャルディーア伯に話を聞いたところ騒動の原因になった魔道具は君が作ったそうだね」
俺の心臓が『ギュッ』と誰かに掴まれる。
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