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◆プランがありませんでした
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双子の妹の名付けは父さんだけでなく母さんも考えることで落ち着く。そして、母さんが名前を考えたら、皆の前で父さんと母さんがそれぞれ発表して俺達が選ぶことにした。
名前もそうだけどプレゼン力では父さんが負けそうだな。でも、中々発表しないからこんなややこしいことになるんだからね。
そんなことを話しているとリーサさん達姉弟が「ただいま~」と帰って来る。
「おかえり~」
「ただいまって、ケイン。なぜいる?」
リーサさんを出迎えるとリーサさんに開口一番にそんなことを言われる。とりあえず、買い物袋を受け取り台所へと一緒に行く。メアリー達はマサオと双子の妹達に駆け寄る。
「リーサさん、それはちょっとヒドくない?」
「そ、そうか。そうだな。すまない。でも、いつもより随分早いぞ。マサオも疲れた様子はないし」
「もう、マサオが疲れてないのは海に入ってないから。俺が早いのはここの商業ギルドに連れて行かれたから。どう? 納得出来た?」
「いや、でもいつもならガンツと一緒に何か作っているんじゃないのか? もしかして、ガンツとケンカでもしたのか?」
「ケンカって……もう、そんなことしないって」
「そうか、ならいいが」
「なんか信用ないんだな。あ、そうだ。リーサさん、コレ使ってよ。これを作ったから商業ギルドに行ってきたんだ。はい」
「なんだこれは?」
リーサさんに皮むきを渡すと、リーサさんは不思議そうに皮むきを見て使い方を聞いてくる。
「これはね、こうするんだ」
側にあったジャガイモに皮むきを当てるとスッと動かしジャガイモの皮を剥いてみせる。
「どう? 野菜の皮むきが凄く楽に出来ると思うんだけど」
「皮むきか。見せてもらったが確かに楽そうだ。じゃあ、頼んだ」
「え?」
リーサさんに良い物をあげたつもりがリーサさんに手伝ってと言われ聞き返してしまった。
「『え?』ってなんだ? 手伝ってくれるんじゃないのか? じゃあ、そこの袋一杯分頼むな」
「ちぇ、分かったよ」
「なんだ不満タップリだな」
「だって、久々にリーサさんとゆっくりお話出来ると思っていたのにさ」
少しはリーサさんと話す時間があると思っていたと零す。
「ふふふ、話なら作りながらでも出来るぞ」
「そうだけど……もういいよ。あ、そう言えば、そろそろ里に行ってスカウトしたいんだけど、一緒に行って貰えないかな?」
「急だな。でも、そろそろ学校も始まると聞くしそうでもないか。分かった。で、いつ行くんだ?」
「明日」
「明日。そうか、明日か……」
エルフの里に明日一緒に行って欲しいとリーサさんに話すとリーサさんの顔が一瞬曇るので、別日にしようかと提案する。
「ダメなら別日でもいいんだけど?」
「いや、いい。こういうことは早い方がいいからな。それにちゃんと説明すれば、あの子も分かってくれるだろう」
「あの子って、アイツ?」
「そうだ。ふふふ、ケインにとっては『アイツ』なんだな」
「そりゃそうだよ。俺の前でリーサさんに甘えてさ。リーサさんは俺の……なのに」
「なんだケイン、聞こえないぞ?」
リーサさんがそう言って俺に向かってニヤリと笑う。これは聞こえていたに違いないと思うと急に恥ずかしくなり、皮を剥き終わったジャガイモを袋ごとリーサさんに渡す。
「いいから、はい。剥けたよ」
「さすがに早いな。ありがとう」
「いいよ。他に手伝うことは?」
「今はないな。向こうでゆっくりしてくれていいぞ」
「分かった。じゃあ、待ってるね」
「ふふふ、今日は特段に美味しいものが作れそうだ。期待していいぞ」
「うん、楽しみにしてるね」
リビングに戻ると双子の相手をしていたメアリーが母さんと一緒にニヤニヤして俺を見ているので「なんなの?」と聞いてみる。
「ねえ、ケイン。ライバルの誕生をどう思う?」
「な、なんのことかな?」
「ふふふ、惚けないでよ。聞いてるわよ。リーサ姉さんを取り合っているって」
「へえ、ケイン。大変だね。大丈夫? もう母さんの中ではリーサちゃんは娘扱いなんだけど? 今更、婚約解消なんてダメよ」
メアリーから『例の男の子』のことを言われ一瞬慌てる。誰がそんなことをと考えてみるが、リーサさんから言うことはないだろう。もしかしてデイヴか? と疑ってみるが、デイヴ自体そう言うことに興味があるはずもないので除外される。なら、アンジェさんかと思ったがメアリーとの接点が特にあるわけではない。ならばとマサオを見るとサッと目を伏せる。
「マサオ、一週間シュークリームはお預けな」
『な、なんでだ! そんなの横暴だ!』
「水上バイクも禁止!」
『な……』
まだ何か言おうとしていたマサオを少し睨み付けると、メアリーが可愛そうにといい、デイヴがマサオを優しく撫でる。
それを見てから心を少し落ち着け、母さんを見ながら話す。
「母さんまで、何言ってるの! 大丈夫だから、そんなことにはならないから!」
「なら、いいけど。もし、危ないと思ったら、ちゃんと相談してよ。分かった?」
「分かったから! そうならないようにするから!」
「例えば?」
「へ?」
「だから、『するから』って言うには何かプランがあるんでしょ? 言ってみなさい。採点してあげるから!」
「止めてよ! いくら母さんでもそこまで入ってこないでよ」
「え~いいじゃない。そのくらいね~」
そう言って、あやしていた妹に声を掛ける。
大体、そういうプランなんてどうすりゃいいのさ。
名前もそうだけどプレゼン力では父さんが負けそうだな。でも、中々発表しないからこんなややこしいことになるんだからね。
そんなことを話しているとリーサさん達姉弟が「ただいま~」と帰って来る。
「おかえり~」
「ただいまって、ケイン。なぜいる?」
リーサさんを出迎えるとリーサさんに開口一番にそんなことを言われる。とりあえず、買い物袋を受け取り台所へと一緒に行く。メアリー達はマサオと双子の妹達に駆け寄る。
「リーサさん、それはちょっとヒドくない?」
「そ、そうか。そうだな。すまない。でも、いつもより随分早いぞ。マサオも疲れた様子はないし」
「もう、マサオが疲れてないのは海に入ってないから。俺が早いのはここの商業ギルドに連れて行かれたから。どう? 納得出来た?」
「いや、でもいつもならガンツと一緒に何か作っているんじゃないのか? もしかして、ガンツとケンカでもしたのか?」
「ケンカって……もう、そんなことしないって」
「そうか、ならいいが」
「なんか信用ないんだな。あ、そうだ。リーサさん、コレ使ってよ。これを作ったから商業ギルドに行ってきたんだ。はい」
「なんだこれは?」
リーサさんに皮むきを渡すと、リーサさんは不思議そうに皮むきを見て使い方を聞いてくる。
「これはね、こうするんだ」
側にあったジャガイモに皮むきを当てるとスッと動かしジャガイモの皮を剥いてみせる。
「どう? 野菜の皮むきが凄く楽に出来ると思うんだけど」
「皮むきか。見せてもらったが確かに楽そうだ。じゃあ、頼んだ」
「え?」
リーサさんに良い物をあげたつもりがリーサさんに手伝ってと言われ聞き返してしまった。
「『え?』ってなんだ? 手伝ってくれるんじゃないのか? じゃあ、そこの袋一杯分頼むな」
「ちぇ、分かったよ」
「なんだ不満タップリだな」
「だって、久々にリーサさんとゆっくりお話出来ると思っていたのにさ」
少しはリーサさんと話す時間があると思っていたと零す。
「ふふふ、話なら作りながらでも出来るぞ」
「そうだけど……もういいよ。あ、そう言えば、そろそろ里に行ってスカウトしたいんだけど、一緒に行って貰えないかな?」
「急だな。でも、そろそろ学校も始まると聞くしそうでもないか。分かった。で、いつ行くんだ?」
「明日」
「明日。そうか、明日か……」
エルフの里に明日一緒に行って欲しいとリーサさんに話すとリーサさんの顔が一瞬曇るので、別日にしようかと提案する。
「ダメなら別日でもいいんだけど?」
「いや、いい。こういうことは早い方がいいからな。それにちゃんと説明すれば、あの子も分かってくれるだろう」
「あの子って、アイツ?」
「そうだ。ふふふ、ケインにとっては『アイツ』なんだな」
「そりゃそうだよ。俺の前でリーサさんに甘えてさ。リーサさんは俺の……なのに」
「なんだケイン、聞こえないぞ?」
リーサさんがそう言って俺に向かってニヤリと笑う。これは聞こえていたに違いないと思うと急に恥ずかしくなり、皮を剥き終わったジャガイモを袋ごとリーサさんに渡す。
「いいから、はい。剥けたよ」
「さすがに早いな。ありがとう」
「いいよ。他に手伝うことは?」
「今はないな。向こうでゆっくりしてくれていいぞ」
「分かった。じゃあ、待ってるね」
「ふふふ、今日は特段に美味しいものが作れそうだ。期待していいぞ」
「うん、楽しみにしてるね」
リビングに戻ると双子の相手をしていたメアリーが母さんと一緒にニヤニヤして俺を見ているので「なんなの?」と聞いてみる。
「ねえ、ケイン。ライバルの誕生をどう思う?」
「な、なんのことかな?」
「ふふふ、惚けないでよ。聞いてるわよ。リーサ姉さんを取り合っているって」
「へえ、ケイン。大変だね。大丈夫? もう母さんの中ではリーサちゃんは娘扱いなんだけど? 今更、婚約解消なんてダメよ」
メアリーから『例の男の子』のことを言われ一瞬慌てる。誰がそんなことをと考えてみるが、リーサさんから言うことはないだろう。もしかしてデイヴか? と疑ってみるが、デイヴ自体そう言うことに興味があるはずもないので除外される。なら、アンジェさんかと思ったがメアリーとの接点が特にあるわけではない。ならばとマサオを見るとサッと目を伏せる。
「マサオ、一週間シュークリームはお預けな」
『な、なんでだ! そんなの横暴だ!』
「水上バイクも禁止!」
『な……』
まだ何か言おうとしていたマサオを少し睨み付けると、メアリーが可愛そうにといい、デイヴがマサオを優しく撫でる。
それを見てから心を少し落ち着け、母さんを見ながら話す。
「母さんまで、何言ってるの! 大丈夫だから、そんなことにはならないから!」
「なら、いいけど。もし、危ないと思ったら、ちゃんと相談してよ。分かった?」
「分かったから! そうならないようにするから!」
「例えば?」
「へ?」
「だから、『するから』って言うには何かプランがあるんでしょ? 言ってみなさい。採点してあげるから!」
「止めてよ! いくら母さんでもそこまで入ってこないでよ」
「え~いいじゃない。そのくらいね~」
そう言って、あやしていた妹に声を掛ける。
大体、そういうプランなんてどうすりゃいいのさ。
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