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◆帰りました
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商業ギルドの奧の部屋へガンツさんと一緒に連れて行かれると、そこには既に商業ギルドのギルドマスターと事務員らしきおじさんが座って待っていたが、俺達が入るとソファから立ち上がり俺達に向かって会釈するとギルドマスターが言う。
「わざわざお越し頂きありがとうございます」
「ワシらは契約に来たんだが?」
「はい、それは了承しております。ですが、私達も切迫しておりまして……どうしてもガンツ様とケイン様になんとかして頂かないと片付かない問題がありまして」
「ワシとケインが? 何かしたかケイン?」
「俺が? まさか、するとしたらガンツさんでしょ」
「ワシか? ワシには思い当たることがないぞ」
俺とガンツさんが不毛な言い合いをしていると事務員のおじさんが申し訳なさそうに俺達の会話に入ってくる。
「申し訳ありませんが、お二人にお話というか、お願いがあります」
「ワシらにお願いだと?」
「はい。まずはこちらを見て頂けないでしょうか」
そう言って、おじさんが俺達の前に何やら金額が書かれた紙を差し出す。
「うわぁ凄い金額だね」
「そうだな。それでこれがどうした?」
ガンツさんにそう言われ、おじさんがはぁ~と深くため息を吐き、ギルドマスターもつられるように嘆息すると「私から話す」とおじさんが話し出そうとするのを遮る。
「そこに書かれてある金額はお二人の口座の残高です。ここまで言えば、ケイン様ならお分かりでしょう」
「あ~そういうことですか。でも、前にほぼ全額使い切ったと思うんですけど。だから、この金額になるのは考えられないですよ」
するとギルドマスターがまた深いため息を吐き、俺に向かってかみ砕いて説明するように話す。
「私にも信じられないですが、これは現実です。どうか口座の残高を減らしてもらえないですか」
「え~どうするガンツさん?」
「急に使えと言われてもな。使い途がある訳でもないし……う~ん」
「なら、引き出しやすいようにドワーフタウンに商業ギルドの支店を出しませんか?」
「支店ですか」
「そうです支店です。俺達は基本、ドワーフタウンにいるので、この領都の商業ギルドに来るのは正直、億劫です。なので、ドワーフタウンに支店です。どうですか?」
「確かに言われてることには一理ありますね。ですが、使って欲しいのは我々ではなくケイン様達なんですが」
おじさんにそう言われるが正直使い途がない。なので、少しでも使い易いようにとドワーフタウンへの支店の出店を頼んだのだが、あまり反応はよろしくない。
「分かりました。支店のことはこちらでも考えましょう。ですが、ケイン様達も使い途を御検討願います。頼みましたからね」
「分かりました。善処します」
「ガンツ様もお願いしますね」
「ワシには分からん。だが、ボビーに言っておこう」
「頼みましたよ。本当にこの通り」
ギルドマスターが禿頭を下げ、しつこいくらいに俺達に頼み込む。
「分かりましたから、そちらもお願いしますよ」
「はい。お任せ下さい。今日は本当にありがとうございました」
ギルドマスター達からお礼を言われ、商業ギルドから解放される。
人目を避けるように路地に入り込むと転移ゲートを開きガンツさんを造船所へ戻すと俺は家に戻る。
「ただいま~」
「おかえり! ってケインじゃない。どうしたの? 今日はいつもより早いじゃない」
「ちょっとね。商業ギルドに呼ばれて、こっちに来てたから。それより、父さんは?」
「まだ、帰ってないわよ。何か用事?」
「うん、ちょっとね」
双子をあやしながら、母さんが俺を出迎えてくれる。父さんが帰ってきたのかを聞いたけどまだらしい。
しばらく双子の様子を見ていたが気になったことを聞いてみる。
「母さん、双子の名前は決まったんでしょ? なんで父さんは言わないの?」
「さあ、母さんには分からないわ。父さんも何かを考えてのことなんでしょうけど」
「じゃあ、母さんは双子の名前は知っているんだね?」
「そりゃあね。一応は母親なんだもの。それがどうしたの?」
「どうしたのって、俺にとっては妹だよ。なのにまだ名前も教えてもらえないなんてヒドいよ」
「まあ、確かにね……」
ここでもう一押しと母さんに上目遣いで訴えてみる。
「ねえ、教えてよ。いいでしょ?」
「ん~どうしようかな……ね、あなた。おかえりなさい」
「ただいま」
「げっ父さん、帰ったの?」
「ああ、帰ったぞ。何か言うことがあるだろ?」
「お帰りなさい」
「ああ、ただいまって、そうじゃないだろ」
「なら、今日のこと?」
「うっ……あれは……その、なんだ……すまなかった。商業ギルドのギルドマスターに泣きつかれてな。俺も最初は断ったんだぞ。でも、お前がドワーフタウンに行ったきりだから、なかなか所在が掴めないからと言われてな。本当にすまなかった」
「それはもういいよ。ほとんど解決出来たと思うからさ。それより、なんで妹たちの名前を教えてくれないの?」
「まあ、待て。まだ確証が持てないんだ」
「えっ? それってどういうことなの?」
「私にも分からないし、教えてくれないの。この子達だけじゃなく、ケインの時もそうだったのよ。ケインの時には私にも言わないで、急にお告げでも受けたかの様に『この子はケインだ!』って言うんだもの」
「いいじゃないか。名前は私達からの最初の贈り物なんだからじっくりと考えさせてくれよ」
「ふ~ん。それなら私も一緒に考えるのが筋なんじゃないの?」
「あ、そ、それは……」
「もういい。あなたは男の子三人の名前を付けたんだから、この子達の名前は私が付けるからね!」
「あ、そんな……」
「わざわざお越し頂きありがとうございます」
「ワシらは契約に来たんだが?」
「はい、それは了承しております。ですが、私達も切迫しておりまして……どうしてもガンツ様とケイン様になんとかして頂かないと片付かない問題がありまして」
「ワシとケインが? 何かしたかケイン?」
「俺が? まさか、するとしたらガンツさんでしょ」
「ワシか? ワシには思い当たることがないぞ」
俺とガンツさんが不毛な言い合いをしていると事務員のおじさんが申し訳なさそうに俺達の会話に入ってくる。
「申し訳ありませんが、お二人にお話というか、お願いがあります」
「ワシらにお願いだと?」
「はい。まずはこちらを見て頂けないでしょうか」
そう言って、おじさんが俺達の前に何やら金額が書かれた紙を差し出す。
「うわぁ凄い金額だね」
「そうだな。それでこれがどうした?」
ガンツさんにそう言われ、おじさんがはぁ~と深くため息を吐き、ギルドマスターもつられるように嘆息すると「私から話す」とおじさんが話し出そうとするのを遮る。
「そこに書かれてある金額はお二人の口座の残高です。ここまで言えば、ケイン様ならお分かりでしょう」
「あ~そういうことですか。でも、前にほぼ全額使い切ったと思うんですけど。だから、この金額になるのは考えられないですよ」
するとギルドマスターがまた深いため息を吐き、俺に向かってかみ砕いて説明するように話す。
「私にも信じられないですが、これは現実です。どうか口座の残高を減らしてもらえないですか」
「え~どうするガンツさん?」
「急に使えと言われてもな。使い途がある訳でもないし……う~ん」
「なら、引き出しやすいようにドワーフタウンに商業ギルドの支店を出しませんか?」
「支店ですか」
「そうです支店です。俺達は基本、ドワーフタウンにいるので、この領都の商業ギルドに来るのは正直、億劫です。なので、ドワーフタウンに支店です。どうですか?」
「確かに言われてることには一理ありますね。ですが、使って欲しいのは我々ではなくケイン様達なんですが」
おじさんにそう言われるが正直使い途がない。なので、少しでも使い易いようにとドワーフタウンへの支店の出店を頼んだのだが、あまり反応はよろしくない。
「分かりました。支店のことはこちらでも考えましょう。ですが、ケイン様達も使い途を御検討願います。頼みましたからね」
「分かりました。善処します」
「ガンツ様もお願いしますね」
「ワシには分からん。だが、ボビーに言っておこう」
「頼みましたよ。本当にこの通り」
ギルドマスターが禿頭を下げ、しつこいくらいに俺達に頼み込む。
「分かりましたから、そちらもお願いしますよ」
「はい。お任せ下さい。今日は本当にありがとうございました」
ギルドマスター達からお礼を言われ、商業ギルドから解放される。
人目を避けるように路地に入り込むと転移ゲートを開きガンツさんを造船所へ戻すと俺は家に戻る。
「ただいま~」
「おかえり! ってケインじゃない。どうしたの? 今日はいつもより早いじゃない」
「ちょっとね。商業ギルドに呼ばれて、こっちに来てたから。それより、父さんは?」
「まだ、帰ってないわよ。何か用事?」
「うん、ちょっとね」
双子をあやしながら、母さんが俺を出迎えてくれる。父さんが帰ってきたのかを聞いたけどまだらしい。
しばらく双子の様子を見ていたが気になったことを聞いてみる。
「母さん、双子の名前は決まったんでしょ? なんで父さんは言わないの?」
「さあ、母さんには分からないわ。父さんも何かを考えてのことなんでしょうけど」
「じゃあ、母さんは双子の名前は知っているんだね?」
「そりゃあね。一応は母親なんだもの。それがどうしたの?」
「どうしたのって、俺にとっては妹だよ。なのにまだ名前も教えてもらえないなんてヒドいよ」
「まあ、確かにね……」
ここでもう一押しと母さんに上目遣いで訴えてみる。
「ねえ、教えてよ。いいでしょ?」
「ん~どうしようかな……ね、あなた。おかえりなさい」
「ただいま」
「げっ父さん、帰ったの?」
「ああ、帰ったぞ。何か言うことがあるだろ?」
「お帰りなさい」
「ああ、ただいまって、そうじゃないだろ」
「なら、今日のこと?」
「うっ……あれは……その、なんだ……すまなかった。商業ギルドのギルドマスターに泣きつかれてな。俺も最初は断ったんだぞ。でも、お前がドワーフタウンに行ったきりだから、なかなか所在が掴めないからと言われてな。本当にすまなかった」
「それはもういいよ。ほとんど解決出来たと思うからさ。それより、なんで妹たちの名前を教えてくれないの?」
「まあ、待て。まだ確証が持てないんだ」
「えっ? それってどういうことなの?」
「私にも分からないし、教えてくれないの。この子達だけじゃなく、ケインの時もそうだったのよ。ケインの時には私にも言わないで、急にお告げでも受けたかの様に『この子はケインだ!』って言うんだもの」
「いいじゃないか。名前は私達からの最初の贈り物なんだからじっくりと考えさせてくれよ」
「ふ~ん。それなら私も一緒に考えるのが筋なんじゃないの?」
「あ、そ、それは……」
「もういい。あなたは男の子三人の名前を付けたんだから、この子達の名前は私が付けるからね!」
「あ、そんな……」
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