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◆掴まれっぱなしでした
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「どれ、ふむ。海中遊覧となればこうなるか」
ガンツさんが俺から海中遊覧船の模型を手に取り、感想を漏らす。
「しかし、これだと浮いたとしても、すぐに横倒しになるんじゃないのか?」
「そう、そうなんだよ。さすがガンツさんだね」
「下手な世辞はいらん。それで、どうするんだ?」
「そこなんだよね~」
工作室に入り、大きめの水槽を作ると、そこに水魔法で水槽を満たし先に渡したクルーザータイプの模型船を浮かべる。
ただ模型船なので、これだけだと船底にエンジンなどの重い物もないため、少し斜めになった状態で浮いている。なので、土魔法で作った重石を船底に載せてから、水槽に浮かべると水平な状態で浮く。
対して、海中遊覧船の模型をまずは試しにと、水槽に浮かべる。
すると、水槽に浮かべた筈の模型船がコテンと横に倒れる。
「まあ、こうなるわな」
「だよね~」
「でも、さっきのクルーザーとやらと同じ様に船底に重石を載せると海中遊覧船としての役割が果たせない……か」
「そう、船底の空間を重石とかで塞いじゃうとお客さんが乗れなくなるからね」
「ふん、お前のことだ。もう、解決策はいくつか考えているんじゃないのか?」
「分かる?」
「分かるわ! いいから、その案とやらを話してみろ!」
ガンツさんが少しイラつきながらも俺が話すのを待つ。
「え~と、一つは船底全体を重くする方法。多分、これが一番簡単な方法だね」
「いいから、次を話せ。一つと言うことはまだあるんだろ?」
「分かってるね~さすが、ガンツさん。じゃあ、二つ目なんだけど、船室を密閉してから遊覧ポイントで船室自体を海中に沈める方法。でも、これだと港で乗船してから、ず~っと密閉されている船室で過ごさせることになるから、俺ならイヤだな。重心は問題ないんだけどね」
「ふむ。二つで終わりと思っていたが、もう一つくらいは残っているんだろ。ほら、話せ」
「まあまあ、そう焦らないでよ。これから話すのが俺の中ではベストだと言える案だから」
「ずいぶんと勿体付けるな」
「じゃあ、見てもらおうかな」
そう言って、ガンツさんの目の前に俺が考えた三つ目の案を具現化した海中遊覧船の模型をそっと水槽に浮かべる。
「ほう、とりあえずは浮いたな。横に倒れることもない。しかし、見た目は先に出した模型とたいして変わったようには見えないが?」
「ふふふ、分からない? ガンツさんでも降参かな」
「ああ、降参だ。いいから、答えを言え!」
揶揄いすぎたのかガンツさんの苛立ちが表に出る。
「答えなら、模型を水槽から取り出したら分かるよ」
「ん? 取りだしたら分かる? 本当だな」
ガンツさんが模型船を水槽から取り出すと、模型船から水が漏れ出す。
「うぉ。なんじゃこりゃ。ケイン!」
「それが答えだよ。ガンツさん」
「答えだと。この水が……そうか、そういうことか。なら、この客室は……やはりな。はぁ、やられたわ」
ガンツさんが何かを思いついた様に模型船の客室にあたる部分を軽く指で船底の方へとゆっくり押すと、模型船から水が出て、客室が模型船の船底に落ち着く。
「なるほどな、客室が上に出ている時には、船底に海水を入れることで重石の代わりとして、海中遊覧のポイントに辿り着いたら、客席を船底へ下ろし、海水を排出するのか。確かにこっちの方が仕掛けとしても、客としても楽しめるか」
「そう、一つ目の案だと階段で船底に誘導しないとだし、階段って地味にイヤだよね」
「そうだな。ワシもそれはイヤだ。じゃあ、これしかないな」
「うん。いいでしょ」
ガンツさんが、また俺の腕を掴み、「行くぞ」と言う。
「え? どこに?」
『そうだぜ、ガンツ。俺、さっきから自分の腹の虫がずっと鳴いているんだけど』
「そんなのどうにでもなる! ほっとけ!」
『ケイン、ガンツが非道い!』
マサオが涙目で俺に訴えてくる。正直、俺もお昼を食べ損ねていたので、マサオに便乗しガンツさんに空腹を訴える。
「なんとかならんのか?」
「『ならない!』」
「分かった。なら、ワシは先に造船所で待っているからな! 必ず来るんだぞ! いいな、絶対だからな! 来ないと泣いちゃうからな!」
ガンツさんが言いたいことだけ言うと、造船所に繋げと言うので、転移ゲートを造船所に繋ぐとガンツさんだけが潜っていく。
「いいな! 絶対だからな!」
「はいはい。じゃあね」
少し不機嫌なガンツさんを見送るとマサオと顔を見合わせ、何を食べようか、どこに行こうかと相談する。
『ケインは何か食べたいとかあるのか?』
「ん~今は特にないかな」
『じゃあさ、たまには違う物を食べてみたいな』
「違う物ね」
マサオの言葉に前に行った領都の食堂を思い出す。
「分かったよ。マサオ、ちょっと領都まで行ってみようか」
『領都? オヤジさんの所か』
「近いけど、遠いね。まあ、いいから行くよ」
『もう、なんでもいいよ。腹さえ膨れれば』
「それは間違いないよ」
転移ゲートを父さんの店の部屋の中に繋いで、マサオと潜る。
『なあなあ、その店って何が食えるんだ?』
部屋のドアを開ける前から、マサオが涎を垂らしそうになりがならも、何が食べられるのかを想像して、お腹の音が『グ~キュルル』とうるさいくらいだ。
「お、ケイン。店に来るなんてどうした?」
「ちょっとね。マーティンさんの食堂まで遅いお昼を食べにいくところなんだ」
「遅いね。あまり無理するなよ」
「うん、分かってる。ありがとうね」
父さんと話した後、店を出てマーティンさんの店まで歩いて行く。
ガンツさんが俺から海中遊覧船の模型を手に取り、感想を漏らす。
「しかし、これだと浮いたとしても、すぐに横倒しになるんじゃないのか?」
「そう、そうなんだよ。さすがガンツさんだね」
「下手な世辞はいらん。それで、どうするんだ?」
「そこなんだよね~」
工作室に入り、大きめの水槽を作ると、そこに水魔法で水槽を満たし先に渡したクルーザータイプの模型船を浮かべる。
ただ模型船なので、これだけだと船底にエンジンなどの重い物もないため、少し斜めになった状態で浮いている。なので、土魔法で作った重石を船底に載せてから、水槽に浮かべると水平な状態で浮く。
対して、海中遊覧船の模型をまずは試しにと、水槽に浮かべる。
すると、水槽に浮かべた筈の模型船がコテンと横に倒れる。
「まあ、こうなるわな」
「だよね~」
「でも、さっきのクルーザーとやらと同じ様に船底に重石を載せると海中遊覧船としての役割が果たせない……か」
「そう、船底の空間を重石とかで塞いじゃうとお客さんが乗れなくなるからね」
「ふん、お前のことだ。もう、解決策はいくつか考えているんじゃないのか?」
「分かる?」
「分かるわ! いいから、その案とやらを話してみろ!」
ガンツさんが少しイラつきながらも俺が話すのを待つ。
「え~と、一つは船底全体を重くする方法。多分、これが一番簡単な方法だね」
「いいから、次を話せ。一つと言うことはまだあるんだろ?」
「分かってるね~さすが、ガンツさん。じゃあ、二つ目なんだけど、船室を密閉してから遊覧ポイントで船室自体を海中に沈める方法。でも、これだと港で乗船してから、ず~っと密閉されている船室で過ごさせることになるから、俺ならイヤだな。重心は問題ないんだけどね」
「ふむ。二つで終わりと思っていたが、もう一つくらいは残っているんだろ。ほら、話せ」
「まあまあ、そう焦らないでよ。これから話すのが俺の中ではベストだと言える案だから」
「ずいぶんと勿体付けるな」
「じゃあ、見てもらおうかな」
そう言って、ガンツさんの目の前に俺が考えた三つ目の案を具現化した海中遊覧船の模型をそっと水槽に浮かべる。
「ほう、とりあえずは浮いたな。横に倒れることもない。しかし、見た目は先に出した模型とたいして変わったようには見えないが?」
「ふふふ、分からない? ガンツさんでも降参かな」
「ああ、降参だ。いいから、答えを言え!」
揶揄いすぎたのかガンツさんの苛立ちが表に出る。
「答えなら、模型を水槽から取り出したら分かるよ」
「ん? 取りだしたら分かる? 本当だな」
ガンツさんが模型船を水槽から取り出すと、模型船から水が漏れ出す。
「うぉ。なんじゃこりゃ。ケイン!」
「それが答えだよ。ガンツさん」
「答えだと。この水が……そうか、そういうことか。なら、この客室は……やはりな。はぁ、やられたわ」
ガンツさんが何かを思いついた様に模型船の客室にあたる部分を軽く指で船底の方へとゆっくり押すと、模型船から水が出て、客室が模型船の船底に落ち着く。
「なるほどな、客室が上に出ている時には、船底に海水を入れることで重石の代わりとして、海中遊覧のポイントに辿り着いたら、客席を船底へ下ろし、海水を排出するのか。確かにこっちの方が仕掛けとしても、客としても楽しめるか」
「そう、一つ目の案だと階段で船底に誘導しないとだし、階段って地味にイヤだよね」
「そうだな。ワシもそれはイヤだ。じゃあ、これしかないな」
「うん。いいでしょ」
ガンツさんが、また俺の腕を掴み、「行くぞ」と言う。
「え? どこに?」
『そうだぜ、ガンツ。俺、さっきから自分の腹の虫がずっと鳴いているんだけど』
「そんなのどうにでもなる! ほっとけ!」
『ケイン、ガンツが非道い!』
マサオが涙目で俺に訴えてくる。正直、俺もお昼を食べ損ねていたので、マサオに便乗しガンツさんに空腹を訴える。
「なんとかならんのか?」
「『ならない!』」
「分かった。なら、ワシは先に造船所で待っているからな! 必ず来るんだぞ! いいな、絶対だからな! 来ないと泣いちゃうからな!」
ガンツさんが言いたいことだけ言うと、造船所に繋げと言うので、転移ゲートを造船所に繋ぐとガンツさんだけが潜っていく。
「いいな! 絶対だからな!」
「はいはい。じゃあね」
少し不機嫌なガンツさんを見送るとマサオと顔を見合わせ、何を食べようか、どこに行こうかと相談する。
『ケインは何か食べたいとかあるのか?』
「ん~今は特にないかな」
『じゃあさ、たまには違う物を食べてみたいな』
「違う物ね」
マサオの言葉に前に行った領都の食堂を思い出す。
「分かったよ。マサオ、ちょっと領都まで行ってみようか」
『領都? オヤジさんの所か』
「近いけど、遠いね。まあ、いいから行くよ」
『もう、なんでもいいよ。腹さえ膨れれば』
「それは間違いないよ」
転移ゲートを父さんの店の部屋の中に繋いで、マサオと潜る。
『なあなあ、その店って何が食えるんだ?』
部屋のドアを開ける前から、マサオが涎を垂らしそうになりがならも、何が食べられるのかを想像して、お腹の音が『グ~キュルル』とうるさいくらいだ。
「お、ケイン。店に来るなんてどうした?」
「ちょっとね。マーティンさんの食堂まで遅いお昼を食べにいくところなんだ」
「遅いね。あまり無理するなよ」
「うん、分かってる。ありがとうね」
父さんと話した後、店を出てマーティンさんの店まで歩いて行く。
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