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◆私、思いつきました

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キャシーさんに断ってから、王都の港湾施設へと転移ゲートを繋いでから潜る。
『また、ここか』
「そう言わないでよ。ほら、自由に走り回っていいから」
『飽きた……なあ、それより乗せてくれないか?』
「乗せるって?」
『ほら、ボートだよ。頼むよ、もう少しだと思うんだ』
「はぁ。何がもう少しなんだか……分かったよ。ここが終わったら、水上バイクで帰るから。それでいいか?」
『おう、それでいい!』

マサオの機嫌が直ったところで、今日の建設予定地の港へと向かう。
「やっぱり、あった方がいいよね。えい!」
一瞬で波止場の突端に高さ十メートルほどの灯台が建つ。
「ドワーフタウンの港にも建てないとね」

それから、船着き場に待合施設も兼ねた建物を用意する。
「今日はこんなもんかな。後はショッピングモールに倉庫だね」

『プルル……』
携帯電話がなったので、取り出して発信元の番号を確認する。
「ん? セバス様から……はい、ケインです。え? 今からですか。分かりました」
携帯電話を切るとマサオに、これからデューク様の屋敷に行くと話す。
『え~俺との約束は?』
「それは、また今度ね」
転移ゲートをデューク様のお屋敷へと潜る。

「ケイン様、急にお呼びして申し訳ありません」
「セバス様、どうしたんですか?」
「実は……」
「ショーン、自分で言うんだ」
セバス様が俺を急に呼び出した理由を話そうとしたところで、デューク様が口を挟む。どうやら、ショーン様が関係しているらしい。
「ショーン様?」
「ああ。ほら、今回ケインを呼び出したのはお前だ」
「わ、私をデートに連れて行って欲しい!」
「「「『は?』」」」
いきなりの告白に俺を含め皆が呆気にとられる。
「ショーン、お前……」
「あ、違うんだ。そうじゃないんだ。私とデートして欲しいんだ!」
「「「『え?』」」」
二度目の告白にマジかと身構えるがショーン様が話し出す。
「違う! そうじゃない。私にデートをさせて欲しいんだ」
「お好きにすればいいのでは?」
「……」
「えっと、王都散策でも十分じゃないんですか?」
「ダメなんだ。それじゃダメなんだ」
「何がダメなんですか?」
「だって……二人乗り出来ないだろ」
「はぁ? またですか。ミアさんはもう脈なしで諦めたんじゃ?」
「違う!」
「違う?」
ショーン様に二人乗りがしたいと言われ、またかと思ったが相手はミアさんではないらしい。
「どう言うことですか?」

するとショーン様の様子から何かを察したデューク様が言う。
「ああ、アイツの娘か。アレは止めとけ。苦労するだけだぞ」
「ですが、この前のパーティで『出来る』と言った手前、引き下がることも出来ず……」
ショーン様のことだから、ママチャリで二人乗りが出来ることを自慢したんだろうと思うけど、そこからどうやってデートに繋がるんだろうかと、そんなことを思っているとセバス様から助けが入る。
「ショーン様のことですから、二人乗りが出来るなら見せてみろとでも言われ、それを承諾すると相手からはそれを『ママチャリで二人乗りのデート』とでも言われたのでしょう。ついでにデューク様が管轄している港湾施設の中を指定された。そういうところでしょうか」
「な、なんで分かった?」
セバス様の解説が終わった後にショーン様がセバス様を不思議そうに見つめるが、正解なのかよ……

「え~と、どうなんですか。デューク様」
「二人乗りだけなら、そううるさくは言わないがな。問題はだ。見学を楽しみにしている王族よりも先に見学したとなると、俺達だけじゃなく相手の家も問題になるだろうな」
「ってことみたいですけど、ショーン様」
「なら、王族の見学の後でなんとかならないかな?」
「その辺のタイミングはデューク様の方で調整してもらった方がいいと思いますが」
そう言ってデューク様を見ると、少し渋い顔をした後にセバス様に頼むと投げる。
「はぁ、分かりました。では、ショーン様には後ほど大まかな予定をお知らせします」
「うん、分かった。頼むね」
ショーン様の返事で話が終わったかなとチラリとデューク様を見ると、デューク様がショーン様に話す。
「ショーンの話はこれで終わりでいいのか?」
「は、はい。私からの話は終わりました」
「そうか。なら、スマンが退室してくれるか」
「はい。では、失礼します。ケイン、悪かったね」
「いえ、準備が出来ましたらセバス様にお伝えするので」
「ああ、ありがとう。では、父上失礼します」
デューク様が頷きショーン様が退室すると、デューク様がセバス様に確認する。
「相手の調査は済んでいるんだよな」
「ええ、その辺りはぬかりなく」
「そうか。また、何かあるかも知れんから引き続き頼むな」
「はい。お任せを」
「でだ」
セバス様への頼み事が終わったデューク様が俺に言う。
「私の方へも他の貴族から色々言われているんだが、何か説明出来るような資料のような物はないのか」
「ないですよ」
「何もか?」
「ええ、全く」
「はぁ」
俺が答えた内容にデューク様がため息をつく。
「ある程度、出来たら作る予定ではいますけど」
「それはいつだ?」
「まあ、遅くても二週間後とかですね」
「もっと早くすることは出来ないのか?」
「無理です。まだ人材集めの段階と言うのもありますし」
「そうか。分かった。無理を言って済まなかった」
デューク様になんとか納得してもらうとセバス様が何かウズウズしているのに気付いたので話しかける。
「セバス様は何か俺に言いたいことでも?」
「あ、失礼しました。旦那様、旦那様のお話は終わりでよろしいでしょうか?」
「ああ、俺からの話は終わった。それがどうした?」
「いえ。では、ケイン様」
セバス様が態度を改めて俺と相対する。
「本当にありがとうございました」
そう言ってセバス様が綺麗なお辞儀を見せる。
「俺にも見せたことがないな」
デューク様が呟くが、セバス様の急なお辞儀に俺は驚いてしまい、止めるのが遅れた。
「セバス様、止めて下さい! どうしたんですか? いきなり」
「いえ、これだけはちゃんと言わないとダメだと思っていましたが、あの日は久々のレース場や久々にビリー君達と会えた喜びで、ケイン様へお礼を言い忘れてしまいました。本当に申し訳ありませんでした」
「そんな、セバス様。頼みますから、お顔を上げて下さい。俺が困ります」
「それはいけませんね」
そう言って、セバス様がやっと顔を上げるが、その顔は何かを思いついたという顔をしていた。
「旦那様! 旦那様は私を手放す気はないと仰いましたよね?」
「ああ、言ったぞ。なんだ? また『お暇病』か?」
「『お暇病』?」
「ああ、そうだ。セバスは何かと『お暇をいただきます』と言って、お前のところへ行こうとするんでな」
デューク様の話を聞いてセバス様を見ると恥ずかしそうにしている。
「それで、どうした?」
デューク様がセバス様に話を促すと堰を切ったようにセバス様が話し始める。
「では。旦那様が私を手放さないのは、領主というお立場からだと考えました。ならば、領主ではなくなれば私も晴れて自由の身となり、ケイン様の元へと行けるのではと。では、どうすればそうなるのかと考えた結果、一番早いのがショーン様がお世継ぎとなり、領主を拝命しショーン様の側に私の息子を就ければ全てが解決する筈だと!」
少し長いセバス様の演説めいた話を聞きデューク様がこめかみを押さえる。

セバス様は少し自分の演説に酔っていたようなので、この隙にと転移ゲートで港湾施設に戻る。

『セバスを雇うのか?』
「出来ればそうしたいけど、そうなったらなったでデューク様が面倒だから出来ないよね」
『それもそうか。じゃあ、約束通りにボートで帰るぞ! あと少しで掴めるんだ! きっと掴んでみせるぞ! この手で!』
「マサオ、その分厚い肉球の前足じゃ掴めないよ?」
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