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◆何も掴めませんでした

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「戻って来たはいいけど、港湾施設に行かないとだね」
『なんだ? また王都か?』
「つい、癖でここに戻っちゃうよね。じゃ、行こうか」
マサオと一緒にまた転移ゲートを潜ると港湾施設に戻る。
まだ日は高いけど、いいよね。

魔導キックボードを取りだし、港湾施設の中を走って確かめる。
「暗視ゴーグルを着けてはいたけど、やっぱりよく見えなかったからね。でも、ちゃんと出来ているみたいでよかった」
港湾施設の壁の内側を見て回り、特に問題もないようで一安心する。
『なんだ? 何か心配でもあったのか?』
「まあね。暗い中での作業だったからね。ちょっと心配だったんだよ」
『ふ~ん、お前が心配ね……』
「なんだよ。俺だって不安に思うことくらいあるさ」

『それにしても何もないから、本当に広いな』
「まあね。それも今の内だから。えい!」
港湾施設のほぼ中央の位置でマサオがそんなことを呟く。そしてそれに応えてから、魔法を行使すると港湾施設の中央の位置に円柱の塔が出現し、その塔から四方の港湾施設を囲む壁へと橋が向かい接続する。

「うまく接続出来たね」
外壁と中央の塔の接続を確認すると、満足する。
「じゃあ、まずは道路だね。えい!」
中心に出来た塔をぐるりと回る道路を作ると、塔から四方に伸びる橋の下にも同じ様に道路を作る。そして、外壁の内側に沿うように道路を作る。

「後は必要に応じてでいいか。じゃ、次は住む場所だよね。最初だから三つくらいでいいかな。えい!」
一瞬で十階建てのマンションが三棟出現する。

「内装はガンツさん達に任せるとして、エレベーターだけ用意したけどいいよね」
『相変わらずの出鱈目さだな』
「もう慣れただろ。でも、今日はこんなもんかな。あ、でも港も整備しとかないとね」
『じゃあ、もう終わりか?』
「まあ、そうだね。何? マサオは何かあるの?」
『あるある! ほら、前の続きだよ!』
「続き?」
『ほら、アレだよ! アレ!』
「あれ?」
『もう、焦れったいな~昨日、もう少しで掴めそうだって言っただろ。アレだよアレ!』
マサオが言っているのは分かるが、またアレをやるのか。

「分かったから、終わるまで待て」
マサオのリクエストに応える為にもと、港の波止場へと向かいピットを等間隔に設置していく。

「今の所はこんなもんかな。お待たせ、マサオ」
『お、終わりか。じゃあ、頼むな』
「分かったよ」

波止場から海面に水上バイクとボートを出すと、マサオがボートに飛び乗る。
『早く!』
「はいはい」
水上バイクに乗るとボートを紐で繋ぎ、ゆっくりと動かす。
「じゃあ、行くよ」
『おう! 今度こそ、掴んでやる!』
「だから、何をだよ!」

『もう少しだと思うんだけどな~やっぱり、まだ掴めないか』
マサオが満足するまで、付き合いドワーフタウンの港へと入る。
「おや、ケイン君」
ジョシュアさんの指導をお願いしていたティーダさんと会う。
「ティーダさん。ジョシュアさんはどんな様子?」
「ああ、彼ね。今はアルフが教えているけどね。最初は俺も今日一日で終わると思ったんだけどね……彼の場合はもう、二、三日は必要かな」
「そんなに……」
「俺も思ったよ。人に教えるのがこんなに難しいとはね」
ジョシュアさんは相変わらずらしいので、ティーダさんに教習所での様子を教える。

「そうか、分かった。彼は少々不器用なんだね」
「多少と言うか……」
「気長にやらせて貰うよ」

ティーダさんにジョシュアさんのことを改めてお願いして、ガンツさんの元に向かう。

「ガンツさん、どう?」
造船所に入り、ガンツさんに声を掛ける。
「おう、ケインか。どうと言われても見ての通りだ」
ガンツさんが工房から連れて来た数人と一緒にフェリーを作っているが、進み具合はまだ三分の一というところだろうか。
「まあ、ケインがいないからってのを考えると十分な出来だと思うぞ」
「そうなんだ。あ、でね。あっちにマンションを建てたから、後で内装の仕上げをお願いしたいんだけど、いいかな?」
そう俺が言うとガンツさんが不思議がる。
「なんだ、いつもみたいに中身も作ったんじゃないのか?」
「ううん、エレベーターを着けただけ。後は専門職に任せようかと思ってさ」
「ほう、ちょっとは考えるようになったみたいだな」
「まあね……って言いたいけど、在庫がなかったってのが本音だよ」
「ははは。そういうことか。分かった。後でフェリーの操船練習のついでに確認しとくわ」
「お願いね。じゃ」
「じゃって、お前はどこに行くんだ?」
「えっと、リクルート……かな」
「また、訳の分からんことを。まあ頑張るんだな」
「ありがとう。じゃあ、行くね」

造船所から出ると、まずはどこに行こうかと考える。
「いいか。近くからにするかな」

アズマ村に転移ゲートを繋ぎ潜る。

「え~と、ダルクさんは……」
「おや? これはまた珍しい」
「アレックスさん」
「覚えててくれたんだね。で、今日は何?」
相変わらずの怪しい雰囲気に早く場を離れたいが、どうも許してくれそうにはない。
はぁ~とため息を吐くとダルクさんの場所を訪ねる。

「父さんなら、家にいると思うけど」
「分かりました。ありがとうございます」
アレックスさんに礼を言い、ダルクさんの家に向かうと後ろからアレックスさんが着いてくる。
アレックスさんが気になり後ろを振り返ると、「気にしないで」と言われる。
ダルクさんの家ってことはアレックスさんの家でもあるしな。しょうがないか。
はぁ~とため息が出る。

なんだかため息が多くなってないか……

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